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解析の基礎において重要な問題は実は「一様連続」といわれる概念である. 高校の級数の収束や積分の定義などあらゆるところで現れている.しかし明示的には示されない.そこでこれを取り出して定義しておきたい.歴史的には,一様連続性の概念をつかむことによって,解析学の基礎が飛躍的に深まった.なお「一様連続性」とは「一様連続」が成立する関数のある性質,の意味である.
定義 15 (関数の一様連続性)
区間で定義された関数がある.任意の正の実数に対して,正の実数で
となるものが存在するとき,関数
は区間
で一様連続である,という.
■
一様連続でない例を考えるとよくわかる.区間が閉区間なら,で連続ならで一様連続になることが次に示される.したがって開区間を考えなければならない.
例 3.3
は区間
で一様連続ではない.
証明
とすると
であるが
である.したがって与えられたに対しどのようにをとってもを大きくとれば
であるが
となるとが存在し,一様連続の条件はみたさない.
□
これは,が1に近づくとが少し動いてもが大きく動くことになり,区間によらないがとれないのである.
閉区間ではこのようなことは起こらない.
定理 28
閉区間
で連続な関数
は
で一様連続である.
■
証明
背理法で示す.について一様連続の条件が成立しないとする.あるをとるとすべてのに対しあるが存在して,
となる.
とし,とをとする.数列は有界数列なので,定理19によって収束部分列
が存在する.その極限値をとする.
に対応する
からなる数列も,
であるから同じに収束する.は閉区間なのではで連続である.よって
これは,
と矛盾する.
ゆえに閉区間で連続な関数はで一様連続であることが示された.
□
関数列とは自然数を添え字とする関数の集合である.
関数と関数列がある.を固定したときは一つの数列である.が一定の区間にあるとき,動くのはとである.ここで,収束関数列の一様収束性の概念が生まれる.これについて基礎的事項を示していこう.
定義 16 (関数列の一様収束)
区間
で定義された関数
と同じ区間で定義された関数の列
がある.任意の正数
が与えられたとき,
に属する任意の
に対して,
によらない自然数
で,
ならば
となるものが存在するとき,関数列
は関数
に一様収束するという.
■
定理 29
区間
で定義された関数
と同じ区間で定義された関数の列
がある.関数列
は関数
に一様収束し,すべての自然数
に対して
が
で連続なら,
も
で連続である.
■
証明
任意の正数が与えられたとき,に属するに対して,によらない自然数で,ならば
となるものが存在する.または連続なので,区間の任意のに対し,正数で,
ならば
となるものが存在する.このとき
ゆえにはで連続である.
□
数列の基本数列,あるいはコーシー数列といわれる収束数列の概念と同様に,関数列に対してもコーシー列が定義される.
定義 17 (コーシー関数列)
区間
で定義された関数の列
がある.任意の正数
が与えられたとき,
に属する任意の
に対して,
によらない自然数
で,
ならば
となるものが存在するとき,関数列
は
コーシー関数列であるという.
■
定理 30
区間
で定義された関数列
がコーシー関数列であれば,関数列
は
を定義域とするある関数
に一様収束する.
が連続なら
も連続である.
■
証明
を固定すると関数値の数列はコーシー数列である.実数の完備性によってある実数値に収束する.その値をとする.によって関数が定まりを固定するごとに収束する.ところがならば
となるが存在するので,この両辺をの数列と見てとすると,
が得られ,はによらないので,関数列は関数に一様収束する.連続性に関する命題は定理30より従う.
■
関数を項とする級数
についても,実数を項とする級数と同様に,部分和
によって定まる関数列の極限として定義される.関数列がに一様収束するとき,級数
はに一様収束するという.をその和といい,
と表す.
定理 31
で定義された関数列
からできる級数
が一様収束するための必要十分条件は,任意の正数
が与えられたとき,
によらない番号
で,
ならば
となるものが存在することである.
■
証明
これは定理21からただちに従う.
□
系 31.1
正項級数
が収束し,区間
で定義された関数
を項とする級数
について
が成立すれば,
,
は一様収束し,和について
が成り立つ.
■
証明
のについて
が成り立つ.
定理31から従う.
□
これらの定理は後に関数の級数展開,微分方程式の解の存在定理を論じる基礎になる.
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2014-05-23