集合を定義域という.写像 によっての要素に対応するの要素をと書き,これをによるの像,またはのにおける値という.また値の集合 を写像の値域という. と略記することもある. ■
同値関係があると,同値なものをひとつの部分集合にまとめることができる.つまりの要素と同値な要素からなるの部分集合が一意に確定し, のすべての要素はいずれかただひとつのに属する.いいかえると,任意のとについて か のいずれか一方が成立する.
の属する集合をの同値類という.このようにして得られる同値類の集合
から〜による商集合への写像をに対して
がふたたび加法と乗法をもつことも確認することができる.
同値関係であるから,集合の集合のこの同値関係によるによる類別を考え,その類を集合の濃度といい,と記す,と考えてよいのか.集合の集合という考えかたには矛盾が生じるので,この定義を用いることはできない.
有限集合の場合は,その個数が等しければ一対一対応が存在し,逆も成り立つので,集合の要素の個数を濃度とし,と記す.実はここにも問題はある.つまり未だわれわれは「個数」を定義していないのである.このように,厳密に考えると,様々の問題を浮かびあがらせることが出来ることを忘れず,しかし,素朴な理解を重視して,考えてゆきたい.
集合が集合のなかに埋め込める,つまりの部分集合との間に一対一対応が存在するとき,濃度の関係はであると書く.ではあるが,との間の一対一対応は存在しないときはと書く.
一般に,
証明
の要素に対して,から集合への写像を
集合との間に一対一対応が存在すると仮定する.
この一対一対応で集合の要素に対応するの部分集合をとする.
の部分集合を次のように定める.
いずれも矛盾となる.ゆえに集合との間に一対一対応は存在しない.つまり
上記背理法はいわゆる対角線論法である.
自然数とと一対一の対応が作れる無限集合の濃度を 可付番と言い,と書き表し「アレフ0」と読む.また可付番な無限を可算無限ともいう.
それに対して実数の集合の濃度をと書く. カントールが最初に発見した集合論の定理が,次の定理である. この定理は,実数の集合の濃度は自然数の濃度より大きい, つまり実数の集合は可付番ではないことを意味する. カントールは1874年にはこれを発見していたが, 1891年に次の証明のような対角線論法でこれを証明した. カントールは三角関数の級数の研究から集合論を創始し,また, 位相空間論の基礎を築いた.現代的な数学のはじまりとなったものだ.
これは,区間の実数を2進法で
よって上記定理から,区間の濃度は自然数よりも実際に大きいことがわかる.
つまり
無限集合に対して,
となる集合は存在しない.という命題がいわゆる一般連続体仮説である.次節で述べるようにこれは公理的集合論のなかで証明することも否定することもできない.集合論の公理系から独立している.