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数学者の責任

これでいいのか

2018年に高等学校の新たな指導要領の変更が提示された.数学および情報の教科に関していえば, 今回の大きな変更点は次の5つである.

しかしこれは,これはまったく殺伐とした改編ではないか.確率論の問題で提起した「現実を分析する体系やその構造を教えるのではなく,ただ経験主義的に資料の整理を教えるのみ」がいっそう進むのではないか.

日本の産業界は,教育に対して,創造性がますます減衰していることや,枠組を提示する力がないことなどの問題を提起している.それに対して,日本の文教政策は,産業界の要請を名目にして,このような情報教育の強化を行おうとしている.

これでは,問題に向きあうどころか,ますます考える力を育てず,言われたとおりに数を操作する能力のみをつける方向に,これがこれまでの方向であったのだが,すすんでゆこうとしている.つまり,考える力を養うことよりも,考えずに技能のみをつける方向に,進んでいる.

私は,考える力をつけるという点からいえば,15歳〜18歳の時期に学ぶべき数学は,この100年,そんなには変わらないと考えている.1960年代の高校数学の内容を,そのまま今日にもってきたほうがよほどよい.

ところが日本の文教政策に携わる官僚は,変えようとする.変えることが役割だと考えている.これに対して無意味な改変に歯止めをかける役割を担うのが,数学者でなければならない.

高校数学の教科書には,多くの数学者が著作者や監修者として名を連ねている.しかし,彼らはほんとうに,自分の名が出ている教科書を書いているのか,読んでいるのか.

数学者は自らの理念をもって高校教科書を書き読むべきである.そして,文教政策で出てきた基本的な問題に対してこれを正面から指摘すべきである.しかし,それはなされているとは言い難い.





Aozora 2018-08-09