に4直線 が同一の部分平面の一般の位置にある. この4直線とそれから定まる6交点 からなる図形を完全四辺形という.この6点を頂点ともいう. ■
辺といってもユークリッド幾何の線分としての辺ではない. 射影幾何でいう辺は直線である.
直線上の6点 に対し, 完全四角形で, その6直線 , との交点がこの順に となるものが存在するとき, この6点を四角性六点,または六点図形という. おける双対概念を四辺性六辺,六辺図形という. ■
証明 直線上の異なる3点と,異なる2点を ととする. これが二つの四角形 と との交点であるとする.他の交点をとする.
と
について
点から直線を引き,との交点をとする.
とを結ぶ.
そのとの交点
をとる.
またととの交点をとする.
5直線
この結果 は 4点に関する四角性六点である. □
直線上の が四角性六点であるとする. 上にない点とこれらを結ぶ直線を とする. は四辺性六辺である.である.これを直線で切った6点は四角性六点である. これによって,点を中心とするからへの配景写像によって 対応する6点の四角性が保存されることが示された. よって射影写像もまた四角性を保存する. □
直線体はシュタウト(K.G.C.von Staudt,1798〜1867)が先鞭をつけた.複比を計量に依存しないで定義する,つまり複比を長さという概念から独立に定義することがその時代の一つの目標だった.シュタウトが抽象的に公理から定義された射影幾何において体が定義され,それによって一般射影座標が可能であることを示したのである.
もとより,指標となったのはユークリッド空間の直線で,ここに座標を導入すれば直線上の点の集合が実数体と同型になる,ということであった.これを公理から建設された射影幾何でも実現すること.これが当面の目標である.
これがなぜ和と積になるのか.
射影平面の一つのモデルは3次元ユークリッド空間の1点Oを通る直線の集合であった.
この直線の集合を,Oとを結ぶ直線と平行な平面で切ると,ユークリッド平面が得られる.ここに移せば確かにユークリッド平面上の線分の長さの和が得られることを確認しよう.赤線は射影平面の要素としての直線.緑線はそれをOとを結ぶ直線と平行で点を通る平面で切った図形である.
図からユークリッド平面上で対応する点を大文字で示す. 和について, 対応するユークリッド平面で
積についても同様である. 対応するユークリッド平面で
このように, 射影平面の直線上の点に関する和と積の定義は, ユークリッド平面で和と積を作図する方法を, 射影辺面に引き戻したものであり,自然である.
命題 44 上のを除く点は,上記演算に関して体となる. 加法の単位元は,乗法の単位元はである. この体を と表し,辺 上の直線体という. ■
証明 示すべきは
次の命題が成りたつ.
射影幾何によって,その直線上の直線体がすべて同型で, この同型を除いて体が一意に確定する. この体を射影幾何の係数体という. 直線体 は点の集合に体の構造を入れたものであり, 係数体は抽象的な体である.
証明 上にない点と,2直線, をとる. 2点を平面上にそれぞれ次のようにとって, それをもちいてそれぞれ次のように射影写像を定めればよい. ただしは点を中心とする直線から直線への配景写像を表すのであった.
これはまた,とを入れかえ,を動かさない射影写像を作り,それによってを移した先としてを定めてもよい.図の青線ではとを中心とする二つの配景写像で入れかえを行い,それでをうつしている. □
一方,命題46によって,あるいはという直線体から同じ直線体への写像が,直線の射影写像から得られる.
両命題とも,射影写像は同じで表されているが, が導く体の同型と,が直接に指定する体内部の対応は,別個のものである.
逆に枠 を動かさない射影写像 をとる. の導く体 の同型が内部自己同型であることを示す.
点を通ると異なる直線と平面上のやに含まれない点をとる.
射影写像
に定理5を適用すると,
2点と直線が存在して
これらの直線や点に対して
命題46の(2)で定めた点,
(3)で定めた点をとると,
第一は射影写像の単一性である.それは
2直線間の射影写像は3点の対応点を与えれば一意に定まる.という命題である.
第二はパップスの定理である.それは
同一平面上にある2直線上にそれぞれ相異なる3点 をとれば, 3点 は共線である.である.
相異なる2直線が点で交わっている. からへの射影写像が点を動かさないなら, はある点を中心とする配景写像である. ■
とする.なので は共線である.,とおく. の任意の点に対して , とおく.3点の組と に関してパップスの定理を用いることにより 3点 は共線である. よって である. □
(1)(2) (1)が成りたつとする. 直線の直線体 が可換であれば, 直線上の枠 を動かさない射影写像は恒等変換のみとなる. 直線から同一平面上の直線への射影写像 が いずれも直線上の枠 を 直線上の枠 に写すとすると, は 直線上の枠 を動かさない写像であり,恒等写像になる. よって である.
逆に(2)が成り立つとする. 枠 を動かさないからへの射影写像で恒等写像でないものがあれば, 直線から直線への射影写像に対し も 直線から直線への射影写像で異なる. これは単一性に反するので,直線体の内部自己同型の射影写像は 恒等写像のみである.よって直線体は可換である.
(2)(3)
(2)が成り立つとする.
同一平面上の2直線とその上の各3点,がある.
3交点を
,
,
とおく.
直線と
の交点を
とする.射影写像
を
逆に(3)が成り立つとする.
直線上の枠
を動かさない
任意の射影変換をとる.点を通ると異なる直線をとり,
点を中心とする配景写像を考える.
なので命題48によって
となる点が存在する.