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恒等式を根拠とする証明

ポンスレの閉形定理11自体を,フルビッツによる対応原理で証明しよう.

複素数体$K$上の$P^2$におかれた二次曲線$Q$は適当な射影変換によって

\begin{displaymath}
x_0^2+x_1^2+x_2^2=0
\end{displaymath}

という標準形になり,それらは二次式による媒介変数表示

\begin{displaymath}
x_0=t_0^2-t_1^2,\ x_1=2t_0t_1,\ x_2=it_0^2+it_1^2
\end{displaymath}

をもつ. つまり二次曲線$Q$上の点$p$ $(t)=(t_0,\ t_1)$という$P^1$に値をもつ媒介変数を用いて

\begin{displaymath}
(u_0(t),\ u_1(t),\ u_2(t))
\end{displaymath}

と表される.

補題 19        二つの二次曲線$Q_0$$Q_1$がある.$Q_0$上の2点$p,\ q$が それぞれ媒介変数$(t),\ (s)$を用いて表されているとする. 直線$p\vee q$$Q_1$に接するための必要十分条件は, $(t),\ (s)$のそれぞれに関する二次の等式で表される.

証明      $Q_1$を定める対称行列を$T$とする. $Q_0$上の動点$p,\ q$が それぞれ二次式 $u_i\ (i=0,\ 1,\ 2)$によって $(u_0(t),\ u_1(t),\ u_2(t))$ $(u_0(s),\ u_1(s),\ u_2(s))$と表されるとする. よって直線$p\vee q$

\begin{displaymath}
\left\vert
\begin{array}{ccc}
x_0&x_1&x_2\\
u_0(t)&u...
...u_2(t)\\
u_0(s)&u_1(s)&u_2(s)
\end{array}
\right\vert=0
\end{displaymath}

となる.これは

\begin{displaymath}
\left(
\left\vert
\begin{array}{cc}
u_1(t)&u_2(t)\\
...
...
u_0(s)&u_1(s)\\
\end{array}
\right\vert
\right)(x)=0
\end{displaymath}

とも書ける. 一方$Q_1$上の点$m$での接線は$m$の座標も$(m)$とすれば

\begin{displaymath}
{}^t(m)T(x)=0
\end{displaymath}

と表される.これが直線$p\vee q$と一致するので, ただし定数倍の同値類で考えることにより

\begin{displaymath}
T(m)=
{}^t\left(
\left\vert
\begin{array}{cc}
u_1(t)&...
...(t)\\
u_0(s)&u_1(s)\\
\end{array}
\right\vert
\right)
\end{displaymath}

である.つまり

\begin{displaymath}
(m)=
T^{-1}{}^t\left(
\left\vert
\begin{array}{cc}
u_...
...(t)\\
u_0(s)&u_1(s)\\
\end{array}
\right\vert
\right)
\end{displaymath}

この$(m)$$(t)$$(s)$のそれぞれについて一次式である. この$(m)$$Q_1$上に存在することが,$p\vee q$$Q_1$に接することを意味する.

この$(m)$$Q_1$の方程式${}^t(x)T(x)=0$に代入すると, 確かに$(t),\ (s)$のそれぞれに関する二次の等式になっている. □

この双二次式を$T((t),\ (s))$と表す. またこの式を$T(p,\ q)$とも表す.

補題 20        平面上に二つの二次曲線$Q_0$$Q_1$がある. $Q_0$上の点$p_1$から$Q_1$にひとつの接線をひき, その延長が再び$Q_0$と交わる点を$p_2$とする. $p_2$から$Q_1$$p_2\vee p_1$とは異なる接線をひき, その延長が再び$Q_0$と交わる点を$p_3$とする. このようにして点$p_n$を定める.

$p_1$が媒介変数$(t)$で表され, 点$p_n$が媒介変数$(s)$で表されるとすると $(t)$$(s)$の間には,それぞれについて二次の関係式

\begin{displaymath}
T_n((t),\ (s))=0
\end{displaymath}

が成立する.
証明      数学的帰納法で示す.

$n=1$のとき. $T_n((t),\ (s))=T((t),\ (s))$ なので成立する.

$n=2$のとき. $p_2(u)$として,連立方程式

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
T((t),\ (u))=0\\
T((s),\ (u))=0
\end{array}
\right.
\end{displaymath}

から$(u)$を消去する.補題16によって,$(t)$$(s)$ のそれぞれに関して4次の関係式が得られる.

$p_2$は2個とれて,その各々から$Q_1$には$p_2\vee p_1$ともう一つの接線が引ける. よってこの関係式は$(s)=(t)$を重根にもつ. その部分はは$(t)$$(s)$のそれぞれに関する二次式である. この関係式をこの二次式で約分して,商を $T_3((t),\ (s))$とすれば. $T_3((t),\ (s))$$(t)$$(s)$のそれぞれに関して二次式で, $T_3((t),\ (s))=0$の2根が$p_3$を与える.

$n\ge 2$に対して $T_n((t),\ (s))$が定まったとする. 連立方程式

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
T_n((t),\ (u))=0\\
T((s),\ (u))=0
\end{array}
\right.
\end{displaymath}

$(u)$を消去する.補題16によって,$(t)$$(s)$ のそれぞれに関して四次の関係式が得られる. この4次式は $T_{n-1}((t),\ (s))$を因数にもつ. それで約した式を $T_{n+1}((t),\ (s))$とすれば $T_{n+1}((t),\ (s))=0$がなりたつ. 数学的帰納法によって証明が終わった. □


これを用いてポンスレの閉形定理を単純な形で証明しよう.

定理11の証明

     $i=1,\ 2,\ \cdots,\ n$に対し 点$p_i$が媒介変数$t_i$で表されるとする.

一般に$t_1$$t_n$の間には,それぞれについて2次の関係式

\begin{displaymath}
T_n(t_1,\ t_n)=0
\end{displaymath}

が成立する. 点$p_1$$p_n=p_1$を満たすことは,$t_1$

\begin{displaymath}
T_n(t_1,\ t_1)=0
\end{displaymath}

を満たすことと同値である.これが他の$t_i$についても成立する.

さらに, $i$を1から$n$のいずれかとして$u=t_i$とする.

\begin{displaymath}
T(t,\ t_i)=0
\end{displaymath}

$t$の2次方程式で$t=t_i$は重根である.

$n(\ge 3)$に対して4次方程式$T(t,\ t)=0$は重複度も含めて$2n(\ge 6)$個の 根をもつ.よって等式$T(t,\ t)=0$は恒等式であり, 任意の$t$に対して成立する. つまり$p_1$を任意にとり,順次$p_i$を定めるとき, $p_n=p_1$となる.  □


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2014-01-03