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線型代数による証明

『数学対話』の中の「ポンスレの定理」では,楕円$Q_0$と円$Q_1$,放物線$Q_0$と円$Q_1$,円$Q_0$と円$Q_1$に関して,$Q_0$に内接し$Q_1$に外接する三角形が存在するための条件を具体的に求めた. 驚くべきことに,このような条件を一般の二次曲線に対して書くことができる. さらに,この方法を用いて前小節の命題98を証明する. ポンスレの定理はこの系から示されるので,これはポンスレの定理の別証明となっている. また同様に四角形でも条件を導くことが出来る.それも続いて行う.

ポンスレは射影幾何をあくまで実数体上で考え,そのうえで複素数を巧みに用いた. それに対して,われわれははじめから複素数体上の射影幾何を考える. 実数体上の射影幾何はそのまま複素数体の射影幾何のなかに埋め込まれる. 実数体上の射影幾何の諸命題は,それを複素数体の射影幾何に埋め込むことで, 複素数体上で証明すれば,実数体上の射影幾何の命題としての成立も示される.

二次曲線の行列表示

複素数体$\mathbb{C}$上の2次元射影平面$P^2$をとり, その座標系を $(x)=(x_0,\ x_1,\ x_2)$で表す, 3次対称行列の定数倍に関する同値類を考える. ある同値類の3次対称行列 $T=(a_{ij})\ (0\le i,\ j \le 2)$をとる. $a_{ij}=a_{ji}$である. 二次曲線$Q$が2次同次方程式
\begin{displaymath}
{}^t(x)T(x)=0
\end{displaymath}

で定まっているとする. また左辺の2次同次式を$f_Q(x)$とする.
\begin{displaymath}
f_Q(x)=
a_{00}{x_0}^2+
a_{11}{x_1}^2+
a_{22}{x_2}^2+
2a_{01}x_0x_1+
2a_{12}x_1x_2+
2a_{20}x_2x_0
\end{displaymath}

となる.

$P^2$の射影変換$\varphi$がある. それに対応する3次行列が $A=(\alpha_{ij})$であるとする. 射影変換$\varphi$で二次曲線$Q$$Q'$に変換されるとする. $Q'$上の点$(x')$$Q$上の点$(x)$に対応するとすれば, $(x')=A(x)$,つまり $(x)=A^{-1}(x')$.この$(x)$がもとの関係式を満たすので, ${}^t(x'){}^tA^{-1}TA^{-1}(x')=0$である. この$(x')$を改めて$(x)$ととり直すことにより, $Q'$の方程式は $T'={}^tA^{-1}TA^{-1}$を用いて

\begin{displaymath}
{}^t(x)T'(x)=0
\end{displaymath}

と表される. したがって, $Q$を定めるある対称行列$T$の行列式 $\left\vert T \right\vert$と, それから定まる$Q'$の対称行列$T'$の行列式 $\left\vert T' \right\vert$の間には
\begin{displaymath}
\left\vert T' \right\vert=\left\vert A \right\vert^{-2}\left\vert T \right\vert
\end{displaymath}

なる関係がある.

曲線束不変量

二つの二次曲線$Q_0$$Q_1$がある. それぞれを定める対称行列を$C=(a_{ij})$$D=(b_{ij})$とする. $f_{Q_0}(x),\ f_{Q_1}(x)$を簡単のために$f_0,\ f_1$とおく.

二つの二次曲線$Q_0$$Q_1$で定まる曲線束とは, 二次曲線の集合

\begin{displaymath}
\{\ Q\ \vert\ f_Q=sf_0+tf_1,\ (s,\ t)\in P^1\ \}
\end{displaymath}

である.

係数体が代数的閉体の場合, これはまた$Q_0$$Q_1$の4つの交点を通る二次曲線の集合でもある. $sf_0+tf_1=0$で定まる二次曲線の行列は行列$sC+tD$の属する類である.

また,その行列式 $\left\vert sC+tD \right\vert$$s$$t$の3次同次式である. これによって3次曲線 $u^2t=\left\vert sC+tD \right\vert$が定まる.

命題 99        3次曲線 $u^2t=\left\vert sC+tD \right\vert$に射影変換を施すなら, $\left\vert sC+tD \right\vert$は定数倍しか変わらない. その結果,座標$u$を定数倍とりなおすことで3次曲線は不変である. ■
証明    
\begin{eqnarray*}
\left\vert sC+tD \right\vert&=&
\left\vert
\begin{array}{c...
...ert+
s^2t\Theta_1+
st^2\Theta_2+
t^3\left\vert D \right\vert
\end{eqnarray*}

となる.ここで
\begin{eqnarray*}
\Theta_1&=&b_{00}C_{00}+b_{11}C_{11}+b_{22}C_{22}
+2b_{01}C_...
...D_{11}+a_{22}D_{22}
+2a_{01}D_{01}+2a_{12}D_{12}+2a_{20}D_{20}
\end{eqnarray*}

ただし,$C_{ij}$は行列$C$$a_{ij}$に対する余因子, $D_{ij}$についても同様であるとする.

ここで上記のように行列$A$で定まる射影変換を施す. このとき$sC+tD$ ${}^tA^{-1}\left(sC+tD \right)A^{-1}$に, $C$$D$ ${}^tA^{-1}CA^{-1}$ ${}^tA^{-1}DA^{-1}$になる. また $\Theta_1,\ \Theta_2$はそれぞれ $\Theta_1',\ \Theta_2'$になるとする.

\begin{eqnarray*}
&&s^3\left\vert{}^tA^{-1}CA^{-1} \right\vert+
s^2t\Theta_1'+...
...^2t\Theta_1+
st^2\Theta_2+
t^3\left\vert D \right\vert\right)
\end{eqnarray*}

これが任意の$s$$t$で成り立つ.よって
\begin{displaymath}
\Theta_1'=\left\vert A \right\vert^{-2}\Theta_1,\
\Theta_2'=\left\vert A \right\vert^{-2}\Theta_2
\end{displaymath}

である.これは曲線束を定める二つの3次行列に対し, その成分 $a_{ij},\ b_{ij}$からなる3次同次式
\begin{displaymath}
\left\vert C \right\vert,\ \Theta_1,\ \Theta_2,\ \left\vert D \right\vert
\end{displaymath}

が,行列$A$で表される射影変換によっていずれも $\left\vert A \right\vert^{-2}$だけ変化することを意味している. したがって$C,\ D$を固定すれば,比
\begin{displaymath}
\left\vert C \right\vert\ :\ \Theta_1\ :\ \Theta_2\ :\ \left\vert D \right\vert
\end{displaymath}

は射影変換で不変である. したがって,$u$を定数倍にとりなおすことで 3次曲線を不変にできる. □


\begin{displaymath}
\left\vert C \right\vert\ :\ \Theta_1\ :\ \Theta_2\ :\ \left\vert D \right\vert
\end{displaymath}

線束不変量という.これは射影変換で不変である.

ケーリーの条件

2つの円錐曲線の一方に内接し,他方に外接する$n$角形が一つ存在すれば,無数に存在する. こればポンスレの閉形定理であった.

では,二つの円錐曲線がどのような条件を満たせば, そのよう$n$角形が存在するのか. ポンスレの閉形定理はそれには答えていない.

存在条件を線束不変量を用いて明示的に与えたのは,ケーリーであった. この条件は,『解析幾何学(円錐曲線)』(サーモン)[35]が,610頁の脚注で述べている. 記号を本書にそろえて紹介する.

この条件はケーレー(1853)が楕円関数論を用いてはじめた与えたるところなり(Philosophical Magazine,VI,99頁). $x^3\left\vert C \right\vert+x^2\Theta_1+x\Theta_2+\left\vert D \right\vert$の平方根を$k$の巾について展開して, $A_0+A_1x+A_2x^2+\cdots$を得たりとせば,$Q_0$に内接し$Q_1$に外接する$n$辺多角形が存在するための条件は, $n=3,\ 5,\ 7,\ \cdots$に対してはそれぞれ

\begin{displaymath}
A_2=0,\
\left\vert
\begin{array}{cc}
A_2&A_3\\
A_3...
..._4&A_5\\
A_4&A_5&A_6
\end{array}
\right\vert=0,\ \cdots
\end{displaymath}

にして, $n=4,\ 6,\ 8,\ \cdots$に対してはそれぞれ
\begin{displaymath}
A_3=0,\
\left\vert
\begin{array}{cc}
A_3&A_4\\
A_4...
..._5&A_6\\
A_5&A_6&A_7
\end{array}
\right\vert=0,\ \cdots
\end{displaymath}
なることを証明したり.

ケーリーの論文は 『The Collected Mathematical Papers of Arthur Cayley.Vol.2』[42]に収められている. このケーリーによる一方に内接し,他方に外接する$n$角形の存在条件の証明,これが本書の最後の目標である. 定理16でなされる.

本節では,$n=3$$n=4$の場合に,楕円関数によらない直接証明を試みる. さらに,線束不変量を用いて,ポンスレの定理の別証明を与える.

三角形の場合

定理 14        二つの非退化二次曲線$Q_0$$Q_1$があり,それぞれを定める対称行列$C$$D$をとる. また, $\Theta_1,\ \Theta_2$はそれから上記のように定義されるものとする.
(i)
関係式
\begin{displaymath}
{\Theta_2}^2-4\left\vert D \right\vert\Theta_1=0
\end{displaymath} (5.1)

がある$C$$D$ で成立すれば,行列$C$$D$のとり方によらず成立し, また$Q_0,\ Q_1$にある射影変換を施しても成立する.
(ii)
二次曲線$Q_0$上に頂点をもち3辺が$Q_1$に接する三角形が 存在する必要十分条件は, 関係式(5.1)が成立することである.
(iii)
二次曲線$Q_0$上に頂点をもち3辺が$Q_1$に接する三角形が ひとつ存在すれば, $Q_0$上の任意の点$p$に対し, 二次曲線$Q_0$上に頂点をもち3辺が$Q_1$に接する三角形$pqr$が存在する. ■
証明
(i)    $C$$D$$cC$$dD$にかえると, ${\Theta_2}^2$$c^2d^4$倍され, $\left\vert D \right\vert\Theta_1$ $d^3\times dc^2=c^2d^4$倍される. また行列$A$による射影変換でいずれもが$\vert A\vert^{-4}$倍される. よって関係式(5.1)が成立するか否かは, 行列$C$$D$のとり方によらず確定し, また$Q_0,\ Q_1$にある射影変換を施したもので成立すれば$Q_0,\ Q_1$で成立する. つまりこの関係式が成立するという条件は射影変換で不変である.

(ii)
1)     必要条件であることを示す.

二次曲線$Q_0$上に頂点をもち3辺が$Q_1$に接する三角形$pqr$が存在するものとする. 3点$p,\ q,\ r$を枠の3点にうつす射影変換を行うことにより,この3点の同次座標を $(0,\ 0,\ 1)$$(0,\ 1,\ 0)$$(1,\ 0,\ 0)$とできる. この3点が$Q_0$上にあるので, $a_{00}=a_{11}=a_{22}=0$である.つまり

\begin{displaymath}
C=\left(
\begin{array}{ccc}
0&a_{01}&a_{20}\\
a_{01}&...
...t)
,\ \quad f_0(x)=2a_{01}x_0x_1+2a_{12}x_1x_2+2a_{20}x_2x_0
\end{displaymath}
である.また3直線$p\vee q$$q\vee r$$r\vee p$の方程式は $x_0=0$$x_2=0$$x_1=0$である.

$x_0=0$$f_1(x)=0$を連立して

\begin{displaymath}
f_1(0,\ x_1,\ x_2)=b_{11}{x_1}^2+b_{22}{x_2}^2+2b_{12}x_1x_2=0
\end{displaymath}

となるが,直線$p\vee q$$Q_1$に接するので, この同次2次方程式が重根をもつ. 他も同様.よってその判別式を考えることにより
\begin{displaymath}
{b_{12}}^2=b_{11}b_{22},\
{b_{01}}^2=b_{00}b_{11},\
{b_{20}}^2=b_{22}b_{00}
\end{displaymath} (5.2)

である.これは余因子で言えば

\begin{displaymath}
D_{00}=D_{11}=D_{22}=0
\end{displaymath}

である.よって
\begin{eqnarray*}
\left\vert D \right\vert&=&b_{01}D_{01}+b_{20}D_{20}\\
&=&-...
...}-b_{22}b_{00}b_{11}
=2(b_{01}b_{12}b_{20}-b_{00}b_{11}b_{22})
\end{eqnarray*}

$(b_{01}b_{12}b_{20})^2=(b_{00}b_{11}b_{22})^2$であるが, $\left\vert D \right\vert\ne 0$より
\begin{displaymath}
b_{01}b_{12}b_{20}=-b_{00}b_{11}b_{22}
\end{displaymath} (5.3)

である.よって
\begin{displaymath}
\left\vert D \right\vert=-4b_{00}b_{11}b_{22}.
\end{displaymath}

以下(5.2),(5.3)を用いて計算する.
\begin{eqnarray*}
\Theta_1&=&b_{00}(-{a_{12}}^2)+b_{11}(-{a_{20}}^2)+b_{22}(-{a...
...ad +2b_{01}a_{12}a_{20}+2b_{12}a_{01}a_{20}+2b_{20}a_{01}a_{12}
\end{eqnarray*}

ここで
\begin{displaymath}
\left\vert D \right\vert b_{00}(-{a_{12}}^2)=4{b_{00}}^2b_{11}b_{22}({a_{12}}^2)=4(b_{00}b_{12}a_{12})^2
\end{displaymath}

などより
\begin{eqnarray*}
4\left\vert D \right\vert\Theta_1&=&
16\left\{(b_{00}b_{12}a...
...b_{01}a_{12}a_{20}+b_{12}a_{01}a_{20}+b_{20}a_{01}a_{12}\right)
\end{eqnarray*}

一方
\begin{displaymath}
\Theta_2=2(a_{01}D_{01}+a_{12}D_{12}+a_{20}D_{20})
\end{displaymath}

である.ここで
\begin{eqnarray*}
(D_{01})^2&=&(b_{01}b_{22}-b_{12}b_{20})^2
={b_{01}}^2{b_{22...
...}b_{20})\\
&=&4b_{22}b_{00}b_{11}b_{22}=4{b_{01}}^2{b_{22}}^2
\end{eqnarray*}

同様に
\begin{displaymath}
(D_{12})^2=4{b_{12}}^2{b_{00}}^2,\ (D_{20})^2=4{b_{20}}^2{b_{11}}^2
\end{displaymath}

である.また
\begin{eqnarray*}
D_{01}\cdot D_{12}
&=&(b_{01}b_{22}-b_{12}b_{20})(b_{00}b_{...
...}b_{22}b_{12}+{b_{12}}^2b_{01}b_{20}=-4b_{00}b_{11}b_{22}b_{12}
\end{eqnarray*}

となる. 以上より関係式(5.1)は成立する.

2)     十分条件であることを示す.

関係式(5.1)が成り立っているとする. このとき3点$p(0,\ 0,\ 1)$$q(0,\ 1,\ 0)$$r(1,\ 0,\ 0)$に対し, 三角形$pqr$の3辺$p\vee q$$q\vee r$$r\vee p$$Q_1$に接し, $p$$q$$Q_0$上にあれば,$r$$Q_0$上にあることを示せばよい.

$p$$q$$Q_0$上にあり, $p\vee q$$q\vee r$$r\vee p$$Q_1$に接することから

\begin{displaymath}
a_{22}=a_{11}=0,\ D_{00}=D_{11}=D_{22}=0,\
\left\vert D \right\vert=-4b_{00}b_{11}b_{22}
\end{displaymath}

である.これからまた
\begin{displaymath}
\Theta_2=2a_{01}D_{01}+2a_{12}D_{12}+2a_{20}D_{20}
\end{displaymath}
である.一方,
\begin{eqnarray*}
\Theta_1&=&b_{00}(-{a_{12}}^2)+b_{11}(-{a_{20}}^2)+b_{22}(-{a...
...2}a_{20}-2b_{12}(a_{00}a_{12}-a_{01}a_{20})+2b_{20}a_{01}a_{12}
\end{eqnarray*}

なので,
\begin{eqnarray*}
4\left\vert D \right\vert\Theta_1&=&
16\left\{(b_{00}b_{12}a...
...ight)\\
&&\quad \quad +32b_{00}b_{11}b_{22}b_{12}a_{12}a_{00}
\end{eqnarray*}
よって
\begin{displaymath}
{\Theta_2}^2-4\left\vert D \right\vert\Theta_1=-32b_{00}b_{11}b_{22}b_{12}a_{12}a_{00}=0
\end{displaymath}

となる.二次曲線が非退化なので $b_{00}b_{11}b_{22}b_{12}a_{12}\ne 0$. よって$a_{00}=0$となり点$r$$Q^0$上にあることが示された.

(iii)     二次曲線$Q_0$上に頂点をもち3辺が$Q_1$に接する三角形がひとつ存在すれば, 関係式(5.1)が成立する. $Q_0$上の任意の点$p$に対し,$p$から$Q_1$に接線$p\vee q$をひき, $p$$q$から$Q_1$に接線$p\vee q$と異なる接線をひき, その交点を$r$とする.(ii)の十分性の証明と同様にして$r$$Q_0$にあることが示され, 二次曲線$Q_0$上に頂点をもち3辺が$Q_1$に接する三角形$pqr$が存在する. □

注意 5.1.1        係数体が複素数体であるので,さらに $b_{00}=b_{11}=b_{22}=1$にとり,その結果, 重根条件と $b_{01}b_{12}b_{20}=-b_{00}b_{11}b_{22}$から 必要ならさらに座標を取り直し $b_{01}=b_{12}=b_{20}=-1$にとることができる. これは射影変換でいえば,$p,\ q,\ r$を枠の3点にうつすとともに, 単位点も適当に選びなおすこと意味している. したがって上記証明は係数のとり方をこのようにすることでより簡略化できる.

そのうえで実数体のなかだけでも証明されることを確認するため, 本証明では係数$b_{ij}$についての重根条件だけを仮定して計算した.

『解析幾何学(円錐曲線)』(サーモン)[35]や 『幾何学大辞典6』[46]の証明は, ここで注意した方法によって,係数を簡単にしておこなっている.

四角形の場合

『幾何学大辞典6』[46]にはケーリーの結果のうち$n=4$の場合に, その定式化と楕円関数によらない証明の概略が載っている.それを命題として紹介し,証明をつける. 射影変換に対する不変性等の証明は同様であるので,ここでは省略する.
命題 100        二次曲線$Q_0$上に頂点をもち4辺が$Q_1$に接する四辺形が存在するならば
\begin{displaymath}
{\Theta_2}^3+8\left\vert C \right\vert\left\vert D \right\vert^2
-4\left\vert D \right\vert\Theta_1\Theta_2=0
\end{displaymath} (5.4)

である. ■
証明      二次曲線$Q_0$上に頂点をもつ四辺形を$abcd$とし, この四辺が作る完全四辺形の対角線で出来る三角形を座標三角形$pqr$にとり, それぞれの座標は $p(1,\ 0,\ 0)$$q(0,\ 1,\ 0)$$r(0,\ 0,\ 1)$とする.

$a$は直線$x_2=0$上にあり,点$b$は直線$x_1=0$上にある. 単位点を取りなおして$a(1,\ 1,\ 0)$$b(1,\ 0,\ 1)$にする. 命題70の系70.1より $[a,\ c;\ p,\ q]=-1$である.$c(s,\ t,\ 0)$とすれば

\begin{displaymath}[a,\ c;\ p,\ q]=\dfrac{1\cdot 0-1\cdot 1}{1\cdot 1-1\cdot 0}
\cdot \dfrac{s\cdot 1-t\cdot 0}{s\cdot 0-t\cdot 1}
=-1
\end{displaymath}

より$s=-t$.よって$c(1,\ -1,\ 0)$となる.同様に$d(1,\ 0,\ -1)$となる.

この4点を通る円錐曲線$Q_0$の方程式は

\begin{displaymath}
-{x_0}^2+{x_1}^2+{x_2}^2+2lx_1x_2=0
\end{displaymath}

と表すことができる. $C=
\left(
\begin{array}{ccc}
-1&0&0\\
0&1&l\\
0&l&1
\end{array}
\right)$である.

一方,系93.1によって,三角形$abc$$Q_1$の極三角形である.したがってその方程式は

\begin{displaymath}
a_{00}{x_0}^2+a_{11}{x_1}^2+a_{22}{x_2}^2=0
\end{displaymath}
と表すことができる. $D=
\left(
\begin{array}{ccc}
a_{00}&0&0\\
0&a_{11}&0\\
0&0&a_{22}
\end{array}
\right)$である.

$abcd$の4辺は順に

\begin{displaymath}
x_0-x_1-x_2=0,\
x_0+x_1-x_2=0,\
x_0+x_1+x_2=0,\
x_0-x_1+x_2=0
\end{displaymath}

となる.$Q_1$がこれらと接する条件を求める.

$x_0=\pm x_1\pm x_2$$g$に代入して

\begin{displaymath}
a_{00}(\pm x_1\pm x_2)^2+a_{11}{x_1}^2+a_{22}{x_2}^2
=(a_{00}+a_{11}){x_1}^2\pm 2a_{00}x_1x_2+(a_{00}+a_{22}){x_2}^2=0
\end{displaymath}

この判別式より
\begin{displaymath}
(a_{00}+a_{11})(a_{00}+a_{22})-a_{00}^2
=a_{00}a_{11}+a_{11}a_{22}+a_{22}a_{00}=0
\end{displaymath}

を得る. $D=a_{00}a_{11}+a_{11}a_{22}+a_{22}a_{00}$とおく. $D=0$が4辺が$Q_1$と接する条件である.

一方

\begin{eqnarray*}
\left\vert C \right\vert&=&l^2-1\\
\left\vert D \right\vert...
...a_2&=&-a_{11}a_{22}+a_{22}a_{00}+a_{00}a_{11}
=D-2a_{11}a_{22}
\end{eqnarray*}

である. よって等式(5.4)の左辺は
\begin{eqnarray*}
&&(D-2a_{11}a_{22})^3+8(l^2-1)(a_{00}a_{11}a_{22})^2\\
&&\q...
...0}a_{22})^2-{a_{11}}^2{a_{22}}^2+4{a_{00}}^2a_{11}a_{22}l
^2\}
\end{eqnarray*}

よって$D=0$なら等式5.4が成り立つ.  □

注意 5.1.2        逆が成り立つためには, $(a_{00}a_{11}-a_{00}a_{22})^2-{a_{11}}^2{a_{22}}^2+4{a_{00}}^2a_{11}a_{22}l
^2$の意味を解明しなければならない.それはできていない.

サーモン『解析幾何学(円錐曲線)』[35]は$n=3$の場合のみ. 窪田忠彦『解析幾何学』(第一巻)[35]は必要条件として載せている. 『幾何学大辞典6』[46]は「条件」として書かれているが, 証明されているのはやはり必要条件のみである.

     後に,二つの円錐曲線が異なる4点で交わっている場合, これが十分条件でもあることが示される. 注意5.3.6を参照のこと.

例 5.1.1        $Q_1$ ${x_0}^2+{x_1}^2-{x_2}^2=0$とする. $D=
\left(
\begin{array}{ccc}
1&0&0\\
0&1&0\\
0&0&-1
\end{array}
\right)$ $\left\vert D \right\vert=-1$である. $Q_0$がそれぞれ次のように与えられたとき関係式(5.1)を計算し, これが成立する条件を求める. これらの結果は『数学対話』『ポンスレの定理』にあるものと一致する.
(1)
$Q_0:a{x_0}^2-x_1x_2-b{x_2}^2=0$. このとき $C=\left(
\begin{array}{ccc}
a&0&0\\
0&0&-\frac{1}{2}\\
0&-\frac{1}{2}&-b
\end{array}\right)$である. よって

\begin{displaymath}
\Theta_1=-\dfrac{1}{4}-ab,\ \quad
\Theta_2=-a-b
\end{displaymath}

この結果
\begin{eqnarray*}
&&{\Theta_2}^2-4\left\vert D \right\vert\Theta_1\\
&=&(-a-b)^2-4(-1)\left(-\dfrac{1}{4}-ab \right)
=(a-b-1)(a-b+1)=0
\end{eqnarray*}
$a>0$$Q_0,\ Q_1$が実数平面で交わらないときは $a-b<-\dfrac{1}{4a}<0$.よって$a-b+1=0$
(2)
$Q_0:\dfrac{{x_0}^2}{a^2}+\dfrac{{x_1}^2}{b^2}-{x_2}^2=0$. このとき $C=\left(
\begin{array}{ccc}
\frac{1}{a^2}&0&0\\
0&\frac{1}{b^2}&0\\
0&0&-1
\end{array}\right)$である. よって
\begin{displaymath}
\Theta_1=-\dfrac{1}{b^2}-\dfrac{1}{a^2}-\dfrac{1}{a^2b^2},\ \quad
\Theta_2=-\dfrac{1}{a^2}-\dfrac{1}{b^2}-1
\end{displaymath}

この結果
\begin{eqnarray*}
&&{\Theta_2}^2-4\left\vert D \right\vert\Theta_1\\
&=&\le...
...{1}{b}-1 \right)
\left(\dfrac{1}{a}-\dfrac{1}{b}+1 \right)=0
\end{eqnarray*}

実数平面で$Q_0$の内部に$Q_1$がある, つまり条件$1<a,\ b$の下では $\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}-1=0$
(3)
同様に命題100の例として, $Q_0:\dfrac{{x_0}^2}{a^2}+\dfrac{{x_1}^2}{b^2}-{x_2}^2=0$で条件を求める.
\begin{eqnarray*}
&&{\Theta_2}^3+8\left\vert C \right\vert\left\vert D \right\...
...2}+1 \right)
\left(\dfrac{1}{a^2}-\dfrac{1}{b^2}-1 \right)=0
\end{eqnarray*}

これから(2)と同様の条件の下では $\dfrac{1}{a^2}+\dfrac{1}{b^2}-1=0$を得る.
(4)
$Q_0:{x_0}^2-2ax_0x_2+{x_1}^2+(a^2-r^2){x_2}^2=0$. このとき $C=\left(
\begin{array}{ccc}
1&0&-a\\
0&1&0\\
-a&0&a^2-r^2
\end{array}\right)$である. よって
\begin{displaymath}
\Theta_1=(a^2-r^2)+(a^2-r^2-a^2)-1=a^2-2r^2-1,\
\Theta_2=-1-1+a^2-r^2
\end{displaymath}

この結果
\begin{eqnarray*}
&&{\Theta_2}^2-4\left\vert D \right\vert\Theta_1\\
&=&\le...
...=&\left\{a^2-(r+1)^2+1 \right\}\left\{a^2-(r-1)^2+1 \right\}=0
\end{eqnarray*}

注意 5.1.3        $\dfrac{x_0}{x_2}=x,\ \dfrac{x_1}{x_2}=y$ として実平面で考えると, $Q_0:(x-a)^2+y^2=r^2$$Q_1:x^2+y^2=1$となる. 実数平面で$Q_0$の内部に$Q_1$がある, つまり$a<r-1$の下では,$a^2-r^2-2r<0$なので$a^2-r^2+2r=0$. この条件は $(r+a)(r-a)=(r+a)+(r-a)$となり, $\dfrac{1}{r-a}+\dfrac{1}{r+a}=1$とも表され, 古典的に知られた形になる.

ポンスレの定理の証明

定理14は次のように一般化される.

定理 15        二次曲線$Q_0$を含む曲線束がある. この曲線束に属し,かつ$Q_0$とは異なる3曲線 $R_1,\ R_2,\ R_3$に対し, $Q_0$上の3点$p,\ q,\ r$で, 直線$p\vee q$$R_1$に, 直線$q\vee r$$R_2$に, 直線$r\vee p$$R_3$に接するものが存在するとする. ただし3接点は同一直線上にはないものとする.

このとき$Q_0$上の任意の$p$に対し, $Q_0$上の点$q,\ r$で 直線$p\vee q$$R_1$に, 直線$q\vee r$$R_2$に, 直線$r\vee p$$R_3$に接するものが存在する. ■

証明      定理14の証明にならい, 先ず条件を満たす三角形$pqr$が存在するための必要条件を求め, それが射影変換で不変な条件であることを確認し, そのうえでその十分性を示す.

条件を満たす3点$p,\ q,\ r$が存在するとする. そのときの$Q_0$を定める行列$C$をとる. その方程式を$f_0(x)=0$とおく. 射影変換を行い3点$p,\ q,\ r$の同次座標を $(0,\ 0,\ 1)$$(0,\ 1,\ 0)$$(1,\ 0,\ 0)$とする. $Q_0$については定理14と同じである.特に

\begin{displaymath}
f_0(x)=2a_{01}x_0x_1+2a_{12}x_1x_2+2a_{20}x_2x_0
\end{displaymath}

であり,その行列を$C$とすると

\begin{displaymath}
\left\vert C \right\vert=2a_{01}a_{12}a_{20}
\end{displaymath}

である.

3曲線 $R_1,\ R_2,\ R_3$の方程式は,$Q_0$とは異なるので, この曲線束に属するある二次曲線$Q_1$とその方程式$f_1(x)=0$を用いて

\begin{displaymath}
kf_0(x)+f_1(x)=0,\
k'f_0(x)+f_1(x)=0,\
k''f_0(x)+f_1(x)=0
\end{displaymath}

とおける.$f_1(x)$を同じ曲線束の他のものに代えると$k,\ k',\ k''$も異なる.$k,\ k',\ k''$$f_1(x)$によって条件を満たすような $R_1,\ R_2,\ R_3$の方程式が構成できるときは, 次に示すように逆に$Q_1$の方程式$f_1(x)=0$と行列$D$$f_0(x),\ C$$k,\ k',\ k''$を用いて書き表すことができる.

$kf_0(x)+f_1(x)=0$$x_0=0$を連立した$x_1$$x_2$の方程式を

\begin{eqnarray*}
kf_0(0,\ x_1,\ x_2)+f_1(0,\ x_1,\ x_2)&=&
2ka_{12}x_1x_2+f_1(0,\ x_1,\ x_2)\\
&=&c_{11}{x_1}^2+c_{22}{x_2}^2+2c_{12}x_1x_2=0
\end{eqnarray*}

とおく.$f_0(x)$の形から

\begin{eqnarray*}
k'f_0(x_0,\ x_1,\ 0)+f_1(x_0,\ x_1,\ 0)&=&
2k'a_{01}x_0x_1+f...
...0,\ 0,\ x_2)\\
&=&c_{00}{x_0}^2+c_{22}{x_2}^2+2c_{20}x_2x_0=0
\end{eqnarray*}

とおける.これらがそれぞれ重根をもつ. よって係数は$c_{ij}$は条件

\begin{displaymath}
{c_{12}}^2=c_{11}c_{22},\
{c_{01}}^2=c_{00}c_{11},\
{c_{20}}^2=c_{22}c_{00}
\end{displaymath}

を満たす.ここで

\begin{displaymath}
g(x)=\sum_{ij}c_{ij}x_ix_j
\end{displaymath}
とおき,$g(x)=0$で定まる二次曲線を$Q'$とする. $Q'$自身はこの曲線束には属さない. 3点が同一直線上にないので,$Q'$は非退化である.

座標 $(x_0,\ x_1,\ x_2)$ $({c_{00}}^{\frac{1}{2}}x_0,\ {c_{11}}^{\frac{1}{2}}x_1,\ {c_{22}}^{\frac{1}{2}}x_2)$ にとりなおすことにより

\begin{displaymath}
g(x)=
{x_0}^2+
{x_1}^2+
{x_2}^2+
2c_{01}x_0x_1+
2c_{12}x_1x_2+
2c_{20}x_2x_0
\end{displaymath}

とでき,このとき ${c_{01}}^2={c_{12}}^2={c_{20}}^2=1$である. $Q'$が非退化なので $c_{01}c_{12}c_{20}=-c_{00}c_{11}c_{22}$である. よって $c_{01}=c_{12}=c_{20}=-1$か,または1個が$-1$で他は1かである.

\begin{displaymath}
g(x)=
{x_0}^2+
{x_1}^2+
{x_2}^2-
2x_0x_1+
2x_1x_2+
2x_2x_0
\end{displaymath}

のときはさらに 座標 $(x_0,\ x_1,\ x_2)$$i$を虚数単位にして $(ix_0,\ ix_1,\ -ix_2)$ にとりなおすことにより
\begin{displaymath}
g(x)=
-{x_0}^2-
{x_1}^2-
{x_2}^2+
2x_0x_1+
2x_1x_2+
2x_2x_0
\end{displaymath}

となる.そこで$Q'$の行列の符号を逆にとることにより
\begin{displaymath}
g(x)=
{x_0}^2+
{x_1}^2+
{x_2}^2-
2x_0x_1-
2x_1x_2-
2x_2x_0
\end{displaymath}

とできる. これによって$C$も変化するが条件 $a_{00}=a_{11}=a_{22}=0$はそのままである. このときの他の成分をあらためて $a_{01},\ a_{12},\ a_{20}$とする.
\begin{eqnarray*}
kf_0(0,\ x_1,\ x_2)+f_1(0,\ x_1,\ x_2)&=&
2ka_{12}x_1x_2+f_1...
...∴\quad f_1(x_0,\ 0,\ x_2)&=&g(x_0,\ 0,\ x_2)-2k''a_{20}x_2x_0
\end{eqnarray*}

となるので$f_1(x)$$g(x)$$C$の成分を用いて
\begin{displaymath}
f_1(x)=g(x)-2(ka_{12}x_1x_2+k'a_{01}x_0x_1+k''a_{20}x_2x_0)
\end{displaymath}

と表される.これによって定まる二次曲線が$Q_1$である. またその行列を$D$とする.
\begin{displaymath}
D=
\left(
\begin{array}{ccc}
1&-1-k'a_{01}&-1-k''a_{20...
...ka_{12}\\
-1-k''a_{20}&-1-ka_{12}&1
\end{array}
\right)
\end{displaymath}
である. $Q_0,\ Q_1$に対する $\left\vert D \right\vert,\ \Theta_1,\ \Theta_2$ を計算する.

\begin{eqnarray*}
\left\vert D \right\vert&=&
1-(-1-ka_{12})^2
-(-1-k'a_{01})...
...01}+ka_{12}+k''a_{20})+(kk'+k'k''+k''k)\left\vert C \right\vert
\end{eqnarray*}

この結果
\begin{eqnarray*}
&&\left\{\Theta_2-(kk'+k'k''+k''k)\left\vert C\right\vert\rig...
...
&=&4(a_{01}+a_{12}+a_{20})^2(2+k'a_{01}+ka_{12}+k''a_{20})^2
\end{eqnarray*}

より関係式
    $\displaystyle \left\{\Theta_2-(kk'+k'k''+k''k)\left\vert C\right\vert\right\}^2$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle 4\left(\left\vert D\right\vert+kk'k''\left\vert C\right\vert \right)
\left\{\Theta_1+(k+k'+k'')\left\vert C\right\vert \right\}$ (5.5)

が成立する.

関係式(5.5) は条件を満たす3点$p,\ q,\ r$が存在するときに, ある $C,\ D ,\ \Theta_1,\ \Theta_2$$k,\ k',\ k''$の間で成り立つ関係式である.

$C$$cC$にかえると$k,\ k',\ k''$$c^{-1}$倍される. $\Theta_1$$\Theta_2$はそれぞれ$c^2$$c$倍され, $\left\vert C \right\vert$$c^3$倍される. よって関係式(5.5)の成立は不変である. $D$$dD$にかえると$k,\ k',\ k''$$d$倍される. $\Theta_1$$\Theta_2$はそれぞれ$d$$d^2$倍され, $\left\vert D \right\vert$$d^3$倍される. よってやはり関係式(5.5)の成立は不変である. また行列$A$による射影変換で両辺いずれもが$\vert A\vert^{-4}$倍される. よって関係式(5.5)が成立するか否かは, $Q_0$$Q_1$とそれで定まる曲線束の3曲線 $R_1,\ R_2,\ R_3$に 固有のことであり,さらにそのことは射影変換で不変である.

逆に$Q_0$$Q_1$で定義される曲線束の3曲線 $R_1,\ R_2,\ R_3$があり,それらを定める行列と係数を一組とるとき, $\left\vert C \right\vert,\ \left\vert D \right\vert,\ \Theta_1,\ \Theta_2$$k,\ k',\ k''$の間に関係式(5.5)が成立しているとする.

このとき,別の三角形$pqr$で, その3辺$p\vee q$$q\vee r$$r\vee p$がそれぞれ曲線 $R_1,\ R_2,\ R_3$に接し,かつ$p$$q$$Q_0$上にあれば, $r$$Q_0$上にあることを示せば本定理の証明が完結する.

関係式の成立は射影変換で不変なので 3点の同次座標を$p(0,\ 0,\ 1)$$q(0,\ 1,\ 0)$$r(1,\ 0,\ 0)$にとる. $p$$q$$Q_0$上にあるとする.これから

\begin{displaymath}
f_0(x)={}^t(x)
\left(
\begin{array}{ccc}
a_{00}&a_{01}...
...(x)=
a_{00}{x_0}^2+2a_{01}x_0x_1+2a_{12}x_1x_2+2a_{20}x_2x_0
\end{displaymath}

とおける. このとき $\left\vert C\right\vert=2a_{01}a_{12}a_{20}-a_{00}{a_{12}}^2$であり,余因子は
\begin{eqnarray*}
&&
C_{00}=-{a_{12}}^2,\
C_{11}=-{a_{20}}^2,\
C_{22}=-{a_...
...0},\
C_{12}=a_{01}a_{20}-a_{00}a_{12},\
C_{20}=a_{01}a_{12}
\end{eqnarray*}

である. 次に,$D=(b_{ij})$,つまり
\begin{displaymath}
f_1(x)=b_{00}{x_0}^2+b_{11}{x_1}^2+b_{22}{x_2}^2+
2b_{01}x_0x_1+
2b_{12}x_1x_2+
2b_{20}x_2x_0
\end{displaymath}

とする. $x_0=0,\ x_2=0,\ x_1=0$がそれぞれ $R_1,\ R_2,\ R_3$に接することから, $kf_0(x)+f_1(x)=0$$x_0=0$を連立した$x_1$$x_2$の方程式などはそれぞれ重根をもつ. $k'f_0(x_0,\ x_1,\ 0)+f_1(x_0,\ x_1,\ 0)$ $k''f_0(x_0,\ 0,\ x_2)+f_1(x_0,\ 0,\ x_2)$${x_0}^2$の係数が異なるため, 係数を調整することで,次の形にまで整理できる. $a_{ij}$$k$などをそれに対応するものに変えて,同じ文字で表す. これによって
\begin{eqnarray*}
&&kf_0(0,\ x_1,\ x_2)+f_1(0,\ x_1,\ x_2)\\
&=&2ka_{12}x_1x_...
...b_{20}x_2x_0+b_{00}{x_0}^2+b_{22}{x_2}^2
=(\alpha x_0-x_2)^2=0
\end{eqnarray*}

とできる.$D$の各成分は$C$の成分と$k$などを用いて次のように表される.
\begin{eqnarray*}
&&b_{00}=b_{22}=1,\
b_{12}+ka_{12}=-1\\
&&b_{11}=1,\
b_...
...{01}=-1\\
&&1+k''a_{00}=\alpha^2,\
b_{20}+k''a_{20}=-\alpha
\end{eqnarray*}

$D$
\begin{displaymath}
D=
\left(
\begin{array}{ccc}
1&
-1-k'a_{01}&
-\alp...
...
-\alpha-k''a_{20}&
-1-ka_{12}&
1
\end{array}
\right)
\end{displaymath}

となる. これらを用いて$D$の余因子を$C$の成分などで表す.
\begin{eqnarray*}
D_{00}
&=&b_{11}b_{22}-{b_{12}}^2=1-(1+ka_{12})^2
=-ka_{12}...
...lpha\\
&=&kk'a_{01}a_{12}+k'a_{01}+ka_{12}+k''a_{20}+\alpha+1
\end{eqnarray*}

となる.よって
\begin{eqnarray*}
\left\vert D \right\vert
&=&b_{00}D_{00}+b_{01}D_{01}+b_{20}...
...uad \quad \quad \quad \quad \quad
-2(\alpha-1)kk'a_{01}a_{12}
\end{eqnarray*}

\begin{eqnarray*}
\Theta_1&=&b_{00}C_{00}+b_{11}C_{11}+b_{22}C_{22}
+2b_{01}C_...
...\quad \quad
-2(\alpha-1)a_{01}a_{12}+2(ka_{12}+1)a_{00}a_{12}
\end{eqnarray*}

よって
\begin{eqnarray*}
\Theta_1+(k+k'+k'')\left\vert C \right\vert
&=&\Theta_1+(k+k...
...quad \quad
-kk'k''a_{00}{a_{12}}^2-2(\alpha-1)kk'a_{01}a_{12}
\end{eqnarray*}

次に
\begin{eqnarray*}
\Theta_2&=&a_{00}D_{00}+2a_{01}D_{01}+2a_{12}D_{12}+2a_{20}D_...
...\quad
+2(k+k')(\alpha-1)a_{01}a_{12}-ka_{00}a_{12}(ka_{12}+2)
\end{eqnarray*}
なので
\begin{eqnarray*}
\Theta_2-(kk'+k'k''+k''k)\left\vert C \right\vert&=&
2(a_{01...
...\quad +2(k+k')(\alpha-1)a_{01}a_{12}
-ka_{00}a_{12}(ka_{12}+2)
\end{eqnarray*}

この $\left\vert C \right\vert,\ \left\vert D \right\vert,\ \Theta_1,\ \Theta_2$について 関係式(5.5)が成立する.

$A=a_{01}+a_{12}+a_{20}$ $B=k'a_{01}+ka_{12}+k''a_{20}+\alpha+1$とおく.

    $\displaystyle \left\{\Theta_2-(kk'+k'k''+k''k)\left\vert C\right\vert\right\}^2...
...\right\vert \right)
\left\{\Theta_1+(k+k'+k'')\left\vert C\right\vert \right\}$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \{2AB+2(\alpha-1)a_{01}a_{12}-ka_{00}a_{12}(ka_{12}+2)\}^2$  
    $\displaystyle \quad \quad \quad -4\{-B^2-kk'k''a_{00}{a_{12}}^2-2(\alpha-1)kk'a_{01}a_{12}\}$  
    $\displaystyle \quad \quad \quad \quad \quad \quad
\times[-A^2+\{(k-k'-k'')a_{12}+2\}a_{00}a_{12}-2(k+k')(\alpha-1)a_{01}a_{12}]$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle 0$ (5.6)

差をとって残る項は$\alpha-1$または$a_{00}$で括ることが出来る. ところが $1+k''a_{00}=\alpha^2$$k,\ k',\ k''$のうち0であるのは多くても1個である. $R_1,\ R_2,\ R_3$の順序をとりなおして$k''\ne 0$とする. このとき $a_{00}=\dfrac{\alpha^2-1}{k''}$である. よって差はすべて$\alpha-1$で括れる.

$\alpha$に関するこの関係式は, $R_1,\ R_2,\ R_3$$p\vee q$$q\vee r$$r\vee p$ の接点を $(0,\ 1,\ 1)$$(1,\ 1,\ 0)$ $(1,\ 0,\ \alpha)$ とおくとき,この$\alpha$を決定する. したがって$\alpha$の方程式と見れば一つの解は$\alpha=1$である.

ところが二次曲線$R_3$と直線$r\vee p$の接点として$\alpha$は一意であり, これから$\alpha=1$と確定する. この結果 $k''a_{00}=\alpha^2-1=0$となり,$a_{00}=0$.つまり$r$$Q_0$上にある.

よって関係式(5.5)は$r$$Q_0$上にあるための十分条件である. 定理15が証明された. □

定理15を線型代数で証明した. この結果,前小節の命題98の別証明が得られる. 命題98を再掲する.

    曲線束$A$に属する円錐曲線 $Q_0,\ Q_1,\ Q_2$がある. $i=1,\ 2$に対し, $Q_0$上の点$p$から$Q_i$に接線$l_i$を引く. $Q_0$の点$q_i$$l_i=p\vee q_i$となるものをとる. このとき直線$q_1\vee q_2$と接する曲線束$A$の円錐曲線$Q_3$ が存在する.
証明     曲線束$A$$Q_0$$Q'$で定まっているとし,その方程式を $f(x)=0,\ g(x)=0$とする. また$Q_1,\ Q_2$の方程式がそれぞれ $kf+g=0,\ k''f+g=0$とする. このとき関係式(5.5)は$k'$に関する2次方程式である. この根による方程式$k'f+g=0$で定まる共線束の曲線を$Q_3$とすれば, この$Q_3$が条件を満たす. □

ポンスレの定理12は命題98から数学的帰納法で示されるので, これで定理15にもとづく定理12の証明が完結した.

一般の位置にない場合の計算過程

定理15は, 3接点が同一直線上にないとの条件のもとで, その証明がなされた. この条件がなく同一直線上にあると,$Q'$が退化である. 退化している場合,計算ではどのようになるのか,その過程を示す.

1)     このとき必要条件の部分は次のような計算がなされる. 定理の証明前半と同様の考察から

\begin{displaymath}
g(x)=
{x_0}^2+
{x_1}^2+
{x_2}^2+
2x_0x_1+
2x_1x_2+
2x_2x_0=(x_0+x_1+x_2)^2
\end{displaymath}
とできる.
\begin{displaymath}
f_1(x)=g(x)-2(ka_{12}x_1x_2+k'a_{01}x_0x_1+k''a_{20}x_2x_0)
\end{displaymath}

は同じである.これによって定まる二次曲線が$Q_1$である. またその行列を$D$とする.
\begin{displaymath}
D=
\left(
\begin{array}{ccc}
1&1-k'a_{01}&1-k''a_{20}\...
...1-ka_{12}\\
1-k''a_{20}&1-ka_{12}&1
\end{array}
\right)
\end{displaymath}

である.
\begin{eqnarray*}
\left\vert D \right\vert&=&
1-(1-ka_{12})^2
-(1-k'a_{01})\{...
...ad \quad \quad \quad
+(kk'+k'k''+k''k)\left\vert C \right\vert
\end{eqnarray*}

この場合
\begin{eqnarray*}
&&\left\{\Theta_2-(kk'+k'k''+k''k)\left\vert C\right\vert\rig...
...(k-k'')a_{12}+
(k''-k)(k''-k')a_{20}\}\left\vert C \right\vert
\end{eqnarray*}

となる.これは射影変換で不変の関係がない. この場合の考察は未完である.


2)     さらにまた,十分条件の証明でえられた関係式(5.6)の 残余項を$\alpha-1$で括るとき,残る因数部分がどのようになるのか, $\alpha$が残るのか否かを含めてこの考察も未完である.


3)     曲線束が一般的でない場合, 例えば$Q_0$$Q_1$が1点で接し2点で交わる場合などのときに, 本定理がどのように成り立つのかの考察も未完である.

注意 5.1.4        退化している場合の一般的な考察は,『Poncelet's Theorem』[40] の11章「Non-generic Cases」にある. 代数幾何的に,退化してる場合を類別し,それぞれにおいてポンスレの定理がどのようになるのかを,示している.

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2014-01-03