1828年にC.G.J.ヤコビ(1804〜1851)はクレレ誌に楕円関数を使った閉形定理の証明を発表した. 彼は実平面上の二円,一方は他方の円の内部にある場合に閉形定理を証明した. 射影することによって,定理は一方が他方の内部にある二つの楕円の場合に一般化できることをヤコビは注意している.
実際, また,「円に還元する別証明」5.1.2で述べたように,実平面上での射影幾何の命題の証明は, 複素射影空間での命題の証明となる.
また『数学点描』[35]で著者のシェーンベルグは,
ベルトラン(J.Bertrand)がヤコビ(Jacobi)のものとする方法で証明する.しかし,ヤコビの著作集の第1巻にある回顧録を調べてみると,この証明はヤコビよりもむしろベルトランによるものだということがわかる.これは初等微分積分学の幾何学へのひとつの注目すべき応用である.と述べ,解析的なポンスレの定理の証明を行っている. これとまったく同じ内容が,高校生向けに書かれた『高校生に贈る数学II』[36]の中で, 「ヤコビの証明の考え方に基づく,もう少し簡単化されたベルトランの証明を述べてみます」との前置きのもとに書かれている. ここでそれを再構成しよう.
実平面におかれた二円とがある. 同心円ならポンスレの定理は自明なので, 同心ではないとし, それぞれの中心は ,半径はで, 円は円の内部にあり,2円の中心間の距離はであるとする. 直線との交点のうち,との距離が大きいものをとする. 上の点に対してからへの左回りの角をとおく. この角に対する点であることを明示するときは と書く.
上の点をとる. 点を点の位置から左回りに円上を動かし, 弦が最初に円と接するとき, その位置のあらためてとする. また接点をとする. 点は点に対して一意に定まり, からへの左回りの角をとすると, はの関数である.これを明示するときは と書く.また とも書ける.
三平方の定理と余弦定理から
命題 101
の関数
の導関数について
証明 微少な角 をとり, とおく. また とし, , とする. 2弦と の交点をとする.
と
の相似と,
弦の長さに円弧の長さが比例することより
上記証明は簡明であるが,微少な角における円弧と弦の比の相等を用いている. それによらず,直接に示すことができる.
別証明
図形を,を原点に,を軸として座標平面に置く.
上の2点
と
の座標は
,
であるから,
直線の方程式は
命題101の別証明が得られた. □
証明 の原始関数をとおく.
この命題を用いて円の場合にポンスレの定理を証明する. 補題が必要である.
証明 の周期性から なので
は,
一方,命題102より