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射影幾何と代数幾何

本節以降は研究ノートである. 証明が出来ていないことも述べつつ,順次書いてゆく. したがってそのつど必要な改訂がなされる. この節はこれまで展開してきたことをこえる内容を前提とする. つまり,楕円積分と楕円関数の解析理論の基礎と, 楕円曲線の代数幾何的理論である. この分野の基本事項については,必要なことを証明なしに明示しつつ,進みたい. したがって,この節以下は自己完結ではない.

第1,楕円関数によるポンスレの定理の証明

ヤコビの証明では, 2つの円の一方に接する直線が他方と交わるときの2つの交点の位置関係に関する不変量が, 楕円積分を用いることで得られるという命題102を示した. これがポンスレの定理の根拠であった.

この基本思想のもと,ケーリーはさらに考察を深めた. ケーリー(Arthur Cayley)の論文集第2巻[42]所収の第113論文である. このケーリーの方法をもとに, ポンスレの定理12の楕円関数による証明を再構成する.

第2,ポンスレ多角形の存在条件

ケーリーはさらに, ポンスレの閉形定理が成立するための2つの円錐曲線に関する条件を導きその結論を述べた. それが論文集第2巻[42]所収の第115,116論文である. しかしそこに証明はない.

ところが1978年に,Griffiths と Harrisによって代数幾何的な証明がなされる. それが『ON CAYLEY'S EXPLICIT SOLUTION TO PONCELET'S PORISM』[39]である. さらにこれは『Poncelet's Theorem』[40]で包括的に展開されている. また,『Poncelet Porisms and Beyond』[41]ではさらに高次の場合にも拡張して,今日の問題まで述べられている. 2012年7月に,これらをご教示いただいた有本彰雄先生に心から感謝する.

この理論は本質的にリーマン面の解析的な理論にもとづいている.まずこの内容を再構成し,第116論文の定理を証明することをめざす.

第3,代数的証明をめざす

ポンスレの定理そのものは,楕円曲線の代数的方法で証明される. それが『代数幾何学』[38]においてなされている. この本の13章の冒頭「前章でポンスレの定理の証明が完成したが, この定理は『いつ$n$角形が描けるのか』については何もいっていない. この問題を考えていくのがこの章の目標である」と書かれているが, ポンスレ多角形のケーリーによる条件までは至っていない. ケーリーによる条件はどこまで代数的理論の範囲で求まるのか. あるいは解析理論なしには不可能なのか,ここを見極めたい.

以上のような目標をたて勉強をはじめたのが,2012年の5月であった. 以下はその過程をそのままにおく.

一般の位置

行列$C$で定まる円錐曲線$Q_0$と行列$D$で定まる円錐曲線$Q_1$がある. これらの円錐曲線は一般の位置にあるとする. つまり異なる4点を共有しているとする. 以下において,言割らずともそうであるとする.

一般の位置にない場合のポンスレの定理は,すでに一つの問題が未解決のままおかれている.一方で,『Poncelet's Theorem』[40]では一般の位置にない場合についても包括的に述べている.

この分野の研究は,一般の位置にある場合の課題に目処をつけて後,時間が許せば取りかかりたい.


2014-01-03