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が整数係数の多項式であるとき,合同方程式
を満たすを求めることを考える.このときは,各係数をそれと合同な数で
置き換えてもかまわない.特にで割りきれる係数は消し去ってかまわない.このような消
去をおこなった後に
なら,この合同方程式を次という.
合同方程式の解法に関する三つの基本定理を証明しよう.
定理 14
法
が素数であるとき,
次の合同方程式
|
(2.10) |
は
個より多くの解を有することはない.
解の数とは(
2.10)を満たす
を法とする剰余類の個数である.
■
証明
次数に関する数学的帰納法で示す.
のとき.一次の合同方程式
は定理12によって, を法としてただ一つの解を有する.
次のとき解が個以下であることが示されたとする.
(2.10)が解を有するときその一つを
とする.
すなわち
.
このとき多項式の除法の原理(定理37)によって
となる次の多項式がある.
とおくと
なので, は整数が係数の多項式である.
このとき合同方程式(2.10)は
と同一の解を有する.が素数であるからこの合同式はまたはが
で割り切れるときにかぎって成り立つ.
ゆえに
以外の解は次の合同方程式
の解でなければならない.帰納法の仮定によりこの解は個以下である.
よって(2.10)の解は個以下である.□
さて一般の合同方程式
は,が素数の場合に解ければ,
を素因数分解して各因子を法とする方程式の解から
具体的に構成することが出来る.
それを二段階に分けて示そう.
まず,が素数のべきつまりのときの解は,
のときの解から帰納的に構成することが出来ることを示す.
そのために,の解からのときの解が構成できることを示す(定理15).
この定理によって,のときから順次解を構成してゆくことによって,のときの解が構成できる.
次に,が
と因数分解されるときの解は,
のときの解から構成することが出来ることを示す(定理16).
定理 15
を自然数,
を素数とする.合同方程式
|
(2.11) |
の解は
|
(2.12) |
の解から構成することが出来る.
証明
(2.11)の解は法をで考えることにより(2.12)を満たす.
よってが(2.11)の解であるために,
(2.12)の解を用いて
|
(2.13) |
と表されることが必要である.
逆に方程式(2.12)の各解に対し(2.13)の形の数が
方程式(2.11)の解となるようにをとることができるか否かを判断し,
可能ならそれを求めることができる.
一般に整数係数の整式に対して
と展開され,さらに各
はの次の整数係数の整式で
あることに注意する.
このにを,にを代入することにより
を得る.
上の注意から各,
は整数である.
ゆえにこの展開式の第3項以下はで割りきれる.
この結果合同方程式
は
と同値である.はで割り切れるので
|
(2.14) |
ここで二つの場合を区別する.
(1)
のとき.
このときは(2.14)はを法としてただ一つの解をもつ.それを
とする.
は(2.11)の解である.
(2)
のとき.
このときは(2.14)は
がさらにで割り切れなければ解がない.
がで割り切れるならの剰余系の任意のが解になる.つまり
が(2.11)を満たす.
すなわち
となる(2.12)の解に対して,
(2.13)の形の数は,
ならによらず(2.11)の解でなく,
なら(2.11)のを法とする個の解を与える.
□
例 2.1.3
が素数で,
は
で割り切れないとする.そのとき
に解があるときは,その解は二つある.それを
とする.
この場合には,
である.ゆえに
これは上定理の(1)の場合である.ゆえに
には二つの解がある.
例えば,
の解は
である.これから
の解を求めてみよう.そのために
とおく.
定理 16
法
を素数べきに因数分解して
とするとき,
がそれぞれ
個の解をもつとすれば,
|
(2.17) |
は
個の解をもつ.それは
から求められる.ここで
はそれぞれ
を法としての
の任意の解の一組である.■
証明
が(2.17)の解ならば(2.15),(2.16)の解である.
したがって(2.18)を満たす.
逆に(2.18)を満たすは,(2.15),(2.16)を満たすから,
(2.17)を満たす.□
例 2.1.4
の解はそれぞれ二つある.それらを
と
とする.
は四つの解をもつ.それらは,
から求められる.
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