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オイラーの関数$\varphi (n)$

自然数 $1,\ 2,\ \cdots,\ n$のなかにある$n$と互いに素な整数$x$の個数を$\varphi (n)$で表す. 例えば,

\begin{eqnarray*}
\varphi(1)=1,&&(x=1)\\
\varphi(2)=1,&&(x=1)\\
\varphi(3)=...
...
\varphi(5)=4,&&(x=1,\ 2,\ 3,\ 4)\\
\varphi(6)=2,&&(x=1,\ 5)
\end{eqnarray*}

$\varphi (n)$オイラーの関数という. $\varphi (n)$は自然数を定義域とする関数である.

$p$ が素数ならば,明らかに

\begin{displaymath}
\varphi(p)=p-1
\end{displaymath}

である.また同じく$p$ が素数ならば

\begin{displaymath}
\varphi(p^e)=p^e-p^{e-1}=p^e \left(1-\dfrac{1}{p} \right)
\end{displaymath}

である.なぜなら1から $p^e$ までの数のなかで $p^e$ と互いに素ではないものは, $p$ で割り切れるものに他ならず,それは

\begin{displaymath}
1\cdot p,\ 2\cdot p,\ \cdots,\ p^{e-1}\cdot p
\end{displaymath}

$p^{e-1}$ 個だけあるからである.

$n$を法とする合同関係による商集合$\mathbb{Z}_n$$n$個の要素からなる集合であった.

\begin{displaymath}
\mathbb{Z}_n=\{\overline{0},\ \overline{1},\ \cdots,\ \overline{n-1}\}
\end{displaymath}

である. さて,一つの $\overline{k}$ 内の要素はすべて $n$ と互いに素であるか, すべて $n$ と互いに素でないか,のいずれかであって,一部のみが互いに素 ということはない. なぜなら$\overline{k}$ の要素 $x$ はすべて $x=k+nt\ (t\ 整数)$ と書け,

\begin{displaymath}
(k+nt,\ n)=(k,\ n)
\end{displaymath}

となるからである (この等号の証明はユークリッドの互除法の原理の証明と同じ).

したがって「剰余類 $\overline{k}$$n$ と互いに素である」ということが意味を持つ. $n$ と互いに素な剰余類 $\overline{k}$既約類という.またすべての既約類の 代表の一組を既約剰余系という.既約類は$\varphi (n)$個ある.


整数で定義された関数 $F(x)$ が互いに素な二つの整数$a$$b$に 対して

\begin{displaymath}
F(ab)=F(a)F(b)
\end{displaymath}

が成り立つとき,乗法的関数という.

定理 17
     $\varphi (n)$は乗法的関数である.すなわち $a$$b$ が互いに素ならば,
\begin{displaymath}
\varphi(ab)=\varphi(a)\varphi(b)
\end{displaymath} (2.19)

が成り立つ.■

証明     $a$ を法とする既約類 $\overline{k}_a$$b$ を法とする既約類 $\overline{l}_b$ をとる.

集合

\begin{displaymath}
A=\{ bx+ay\,\vert\,x \in \overline{k}_a,\ y \in \overline{l}_b\}
\end{displaymath}

を考える. これは $ab$ を法とする剰余類を定める. なぜなら,整数 $s,\ t$ を用いて $x=k+as,\ y=l+bt$ と表すと

\begin{displaymath}
bx+ay=bk+al+ab(s+t)
\end{displaymath}

となり,整数 $s,\ t$ の取り方を変えても $ab$ を法として合同だから剰余類 $A=\overline{bk+al}_{ab}$ となる.

さらにこれは既約類である. なぜならもし $bx+ay$$ab$ と互いに素でないとする. $a$$b$ が互いに素なので $a$ または $b$ と互いに素でない. $a$ と互いに素でないとする.

\begin{displaymath}
(bx+ay,\ a)\ne 1\ \iff\ (bx,\ a)\ne 1\ \iff\ (x,\ a)\ne 1\ \iff\ (k,\ a)\ne 1
\end{displaymath}

となり $\overline{k}_a$$a$ を法とする既約類であることに反するからである.

ここで $k'\not \equiv k\quad (\bmod.\ a)$ なる $k'$ をとると

\begin{displaymath}
bk'+al\not \equiv bk+al\quad (\bmod.\ ab)
\end{displaymath}

である.なぜならもし $bk'+al \equiv bk+al\quad (\bmod.\ ab)$なら $bk'\equiv bk\quad (\bmod.\ ab)$ であるが $a$$b$ が互いに素なので $k'\equiv k\quad (\bmod.\ a)$とならねばならないからである.

つぎに $ab$ を法とする任意の既約類 $\overline{m}_{ab}$ をとる. $a$$b$ が互いに素なので $bk+al=m$ となる $k,\ l$ が存在する. ゆえに既約類 $\overline{m}_{ab}$ は既約類 $Z_a(k)$ と既約類 $Z_b(l)$ から上の方法で作られる. したがって $a$ を法とする既約類 $\overline{k}_a$$b$ を法とする既約類 $\overline{l}_b$の一組と $ab$ を法とする既約類 $\overline{m}_{ab}$は一対一に対応する. この組は $\varphi(a)\varphi(b)$ 個あるので% latex2html id marker 6048 $(\ref{61})$が示された□


これが基本的な事実である.この証明は剰余類の定義にたちかえって行った. なお中国の剰余定理13を用いれば証明は簡明である.すなわち次のようになる.

別証明     いま $\alpha_1,\ \alpha_2,\ \cdots,\ \alpha_m\ ,\ m=\varphi(a)$ および $\beta_1,\ \beta_2,\ \cdots,\ \beta_n\ ,\ n=\varphi(b)$ をそれぞれ $a$$b$ を法とする既約剰余系の一組とする. $mn=\varphi(a)\varphi(b)$ 個の組合せの一つ $\alpha_i,\ \beta_j$ に対して

\begin{displaymath}
\gamma\equiv \alpha_i\ (\bmod.\ a)\ ,\quad \gamma
\equiv \beta_j\ (\bmod.\ b)
\end{displaymath} (2.20)

となる $\gamma$$ab$ を法として一つずつある. $\gamma$$ab$ と互いに素である.

逆に $(\gamma,\ ab)=1$ とすると,(2.20)となる $\alpha_i,\ \beta_j$ が一意に決まる. ゆえに $ab$ を法とする既約代表の一組の各数 $\gamma$ $\alpha_i,\ \beta_j$ の組の 間に一対一の対応が成り立つ.したがって% latex2html id marker 6080 $(\ref{61})$が示された.□


$\varphi (n)$は次の定理によって計算される.

定理 18
$n$ を素数べきに分解して

\begin{displaymath}
n=p^{\alpha}q^{\beta}r^{\gamma}\cdots
\end{displaymath}

とすると
\begin{displaymath}
\varphi(n)=n \left(1- \dfrac{1}{p} \right)
\left(1- \dfrac{1}{q} \right)\left(1- \dfrac{1}{r} \right)\cdots
\end{displaymath} (2.21)

が成り立つ.■

証明     定理17から

\begin{eqnarray*}
\varphi(n)&=&\varphi(p^{\alpha}q^{\beta}r^{\gamma}\cdots)\\ ...
...left(1- \dfrac{1}{q} \right)\left(1- \dfrac{1}{r} \right)\cdots
\end{eqnarray*}

つまり,% latex2html id marker 6086 $(\ref{62})$が示された.□

例 2.2.1        $a=3,\ b=5$ とする.

\begin{eqnarray*}
\alpha=1,\ 2,\ \beta=1,\ 2,\ 3,\ 4&&\varphi(3)=2,\ \varphi(5)=4\\
\gamma=1,\ 2,\ 4,\ 7,\ 8,\ 11,\ 13,\ 14&&\varphi(15)=8\\
\end{eqnarray*}

であるが, $5\alpha+3\beta\quad (\bmod.\ 15)$ と,別証の$\gamma$を計算すると

\begin{displaymath}
\begin{array}{c\vert\vert c\vert c\vert c\vert c\vert c\ve...
...11&14&2&13&1&4&7\\
\gamma&1&7&13&4&11&2&8&14
\end{array}
\end{displaymath}

$d\vert n$$d$$n$ を割り切ることを意味する記号であった. $d=1,\ n$ のときも$d\vert n$である. $\displaystyle \sum_{d\vert n}$と書けば,和は $n$ のすべての約数(1も $n$ も含む)にわたるものとする.

定理 19
    
\begin{displaymath}
\sum_{d\vert n} \varphi(d)=n
\end{displaymath} (2.22)

である.■

証明     $d$$n$ の約数として, 1から $n$ までの数 $x$ で, $(x,\ n)=d$ となるものは $\varphi \left(\dfrac{n}{d} \right)$ 個ある.

なぜなら

\begin{displaymath}
(x,\ n)=d\quad \iff \quad \left(\dfrac{x}{d},\ \dfrac{n}{d} \right)=1
\end{displaymath}

であるから, その個数は1から $\dfrac{n}{d}$ までの中にある $\dfrac{n}{d}$ と互いに素な数の 個数に等しい. つまり $\varphi \left(\dfrac{n}{d} \right)$個である.

1から $n$ までの数 $x$$(x,\ n)$ の値が等しいものに分類できるので

\begin{displaymath}
\{\ 1,\ 2,\ \cdots,\ n\ \}=\bigcup_{d\ \vert\ n}\{\ x\ \vert\ (x,\ n)=d,\ 1\le x \le n \ \}
\end{displaymath}

である.したがって,$d$$n$ の約数全体を動くとき(1と $n$ を含む).この方法で 1から $n$ までの数はちょうど一度ずつ数えられる.

\begin{displaymath}
∴\quad \sum_{d\vert n} \varphi \left(\dfrac{n}{d} \right)=n
\end{displaymath}

$d$$n$ の約数全体を動くとき $\dfrac{n}{d}$$n$ の約数全体を動くので, (2.22)が示された. □

例 2.2.2        $n=15$ とする.

\begin{displaymath}
\begin{array}{c\vert l\vert l}
d&\quad \quad x&\ \varphi...
...\
15&15&1=\varphi(1)\\
\hline
&&計\ 15
\end{array}
\end{displaymath}

例 2.2.3        $n=12$ とする.

\begin{displaymath}
\begin{array}{c\vert l\vert l}
d&\quad \quad x&\ \varphi...
...\
12&12&1=\varphi(1)\\
\hline
&&計\ 12
\end{array}
\end{displaymath}


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