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1のn乗根

1の $n$ 乗根,すなわち方程式
\begin{displaymath}
x^n-1=0
\end{displaymath} (2.24)

の根は $n$ 個ある.それらは
\begin{displaymath}
\cos \dfrac{2k\pi}{n}+i\sin \dfrac{2k\pi}{n}
\,,\ (k=0,\ 1,\ \cdots,\ n-1)
\end{displaymath} (2.25)

である.これらはすべて偏角が異なり異なる複素数である. しかも$n$乗すると1になるので,方程式(2.24)の解である. したがってこの$n$個の複素数が$n$次方程式(2.24)の根のすべてであることがわかる.

簡単のために

\begin{displaymath}
\alpha=\cos \dfrac{2\pi}{n}+i\sin \dfrac{2\pi}{n}
\end{displaymath}

とおく.ド・モアブルの定理より,(2.25)は

\begin{displaymath}
\alpha^k\ \,\ (k=0,\ 1,\ \cdots,\ n-1)
\end{displaymath}

と表される. ここで $\alpha^n=1$ なので,(2.25)において $k$ に与えるべき値は $n$ を法としての一つの剰余系である. さらに$(k,\ n)=1$ のとき (2.25)において $\dfrac{2k\pi}{n}$$n$ 倍してはじめて$2\pi$ になるので, $\alpha^k$$n$ 乗してはじめて 1 に等しくなる. 1の $n$ 乗根のうち $n$ 乗してはじめて 1 になるものを1の原始 $n$ 乗根という.

定理 21
     1の原始 $n$ 乗根は$\varphi (n)$個ある.それらは
\begin{displaymath}
\cos \dfrac{2k\pi}{n}+i\sin \dfrac{2k\pi}{n}
\end{displaymath} (2.26)

において, $k$$n$ を法としての既約剰余系の値を与えて得られるものである.■

証明     すでに述べたように$(k,\ n)=1$ のとき (2.26)の $\dfrac{2k\pi}{n}$$n$ 倍してはじめて$2\pi$ になるので, $\alpha^k$$n$ 乗してはじめて 1 に等しくなる.つまり $\alpha^k$ は 原始 $n$ 乗根である.

逆に $\beta$ が原始 $n$ 乗根であるとする. $\beta$$x^n-1=0$ の根であるから $\beta=\alpha^l$ と表される.

もし $(l,\ n)=d>1$ なら $n=dn',\ l=dl'$ とおくとき

\begin{displaymath}
\cos \dfrac{2l\pi}{n}+i\sin \dfrac{2l\pi}{n}
=\cos \dfrac{2l'\pi}{n'}+i\sin \dfrac{2l'\pi}{n'}
\end{displaymath}

なので, $(\alpha^l)^{n'}=1$ となり, $n$ 乗してはじめて1となるという仮定に反する. ゆえに $(l,\ n)=1$ となる.

$\alpha^k$ が原始 $n$ 乗根となることと, $n$ と互いに素な $k$ を用いて $\alpha^k$ と表されることが同値であることが示された. よってその個数は$\varphi (n)$個である.□

ちなみに$\alpha^l$は原始 $n'$ 乗根である.これを次の定理22の証明に用いる.

例 2.3.1        1の6乗根は

\begin{displaymath}
1,\ -1,\ \dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2},\ \dfrac{1\pm\sqrt{3}i}{2}
\end{displaymath}

そのうち原始6乗根は最後の二つだけである. $\dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2}$ は原始3乗根, $-1$ は原始2乗根,1は1乗根である.

定理 22
     $n$ の素因数分解を $n=p^{\alpha}q^{\beta}r^{\gamma}\cdots$ とし,
$\displaystyle F_n(x)$ = $\displaystyle \dfrac{(x^n-1)(x^{ \frac{n}{pq}}-1)(x^{ \frac{n}{qr}}-1)\cdots\cdots}
{(x^{ \frac{n}{p}}-1)(x^{ \frac{n}{q}}-1)\cdots(x^{ \frac{n}{pqr}}-1)\cdots}$ (2.27)
  = $\displaystyle \prod_{d\vert n}(x^{ \frac{n}{d}}-1)^{\mu(d)}$ (2.28)

とすれば, $F_n(x)$ は1の原始 $n$ 乗根のみを根とする多項式である. $F_n(x)$$\varphi (n)$次で,その最高次数の係数は1, その他の係数もすべて整数である. ここに$\mu (n)$はメビウスの関数である.■

証明     1の原始 $n$ 乗根のみを単根とする方程式で 最高次数の係数が1であるものを $F_n(x)=0$ とする. 定理21の証明より,その他の $n$ 乗根は $n$ の約数$d$ に対し、原始$\dfrac{n}{d}$乗根になるが, $d$ が1以外の約数を動けば$\dfrac{n}{d}$$n$ 以外の約数を動くので,原始 $n$ 乗根以外の $n$ 乗根は $n$ の真の約数 $d$ を次数とする原始 $d$ 乗根になる. 原始 $n$ 乗根と合わせた全体がちょうど 1の$n$ 乗根の全体である.つまり $\displaystyle \prod_{d\vert n}F_d(x)=x^n-1$ となる. $x$ を十分大きく各 $F_d(x)$ が正の値をとるように固定する. それぞれの最高次数の係数が正なのでそれは可能である. その上で両辺の対数をとる.

\begin{displaymath}
\sum_{d\vert n}\log F_d(x)=\log(x^n-1)
\end{displaymath}

整数 $n$$d$ に関する等式と見ればメビウスの反転公式(6節定理20) が使え

\begin{displaymath}
\log F_n(x)=\sum_{d\vert n}\mu(d)\log(x^{ \frac{n}{d}}-1)
\end{displaymath}

つまり

\begin{displaymath}
F_n(x)=\prod_{d\vert n}(x^{ \frac{n}{d}}-1)^{\mu(d)}
\end{displaymath}

両辺 $x$ の多項式で,十分大きい$x$ でつねに成立するので $x$ に関して恒等的に成立する.したがって(2.28)が示された.

$F_n(x)$ の次数は定理21より$\varphi (n)$で その係数は(2.28)より明らかに整数である. 式(2.27)の分子分母の最高次数の係数はともに1なので分母を払って 係数比較すれば$F_n(x)$ の最高次数の係数が1であることがわかる.□

例 2.3.2  

\begin{eqnarray*}
F_6(x)&=&\dfrac{(x^6-1)(x-1)}{(x^2-1)(x^3-1)}=x^2-x+1\\
F_{...
...e}-1}{x^{p^{e-1}}-1}=x^{p^{e-1}(p-1)}+x^{p^{e-1}(p-2)}+\cdots+1
\end{eqnarray*}


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