歴史的に無限等差数列のことを算術級数,無限等比数列のことを幾何級数という.
算術級数の定理を完全に証明したのはディリクレ(Dirichlet)である(1837).この定理の証明は簡単ではない.級数の理論を整数問題に応用する『解析的整数論』の発端となった.それは『数論初歩』の範囲を越える. ただ初項がの場合,解析的方法を用いないで証明することができる.
証明
【1】 型の素数が無数にあることを示す.
型の素数が有限個しかないとし,その最大のものを とする.
つまり,
が 型の素数の全体であるとする.
これら 型の素数全体の積に4をかけ1を減じた数を とする.つまり
ところがこれは3から の 型の素数のいずれとも互いに素であるから, 以外の素数である. つまり が 型の素数のすべてであるという仮定と矛盾した. つまり 型の素数が無数にあることが示された.
【2】 型の素数が無数にあることを示す.
型の素数が無数にあることは簡単ではない. その証明にはフェルマの小定理が必要である. フェルマの小定理を応用して 型の素数が無数にあることを証明しよう.
その基本となる事実は, の形をした数の素因数は 2 かまたは型の素数にかぎる,ということである.
いくつか調べてみると
つねに成立することは,次のように示される.
が 2 以外の素数 で割り切れるとする.
型の素数が有限個しかないとする.その最大のものを とし,2とそれら 型の素数すべての積の平方に1を加えた数を とする.つまり
これは が 型の素数のすべてであるという仮定と矛盾する. ゆえに 型の素数が無数にあることが示された.
【3】 型の素数は無数に存在することを示す.
つまり, を2以上の任意の整数とするとき, 初項が1で公差が の等差数列の中に無数の素数が存在していることを証明する.
この証明は, の場合つまり 型の素数が無数に存在することの証明を一般化することで得られる. 型の素数が無数に存在することの証明に現れた は何か. それは定理22の に他ならない. 1の原始4乗根 のみを根とする多項式である.
そこで与えられた に対して を考えよう. を であるような任意の整数とする. このとき の素因数は の約数, または の型のものにかぎられることを示す.
定理22によって次の等式が成り立つ.
次に なら が の指数であるから は の約数である.つまり と書ける. ゆえに, のとき の素因数は の約数,または の型のものであることが示せた. 特に を に含まれるすべての素因数の積の倍数 とすれば, より なので は の約数 ではあり得ない.したがってこのような をとるなら は必ず の型の素数である.
を仮定したが, となる は有限個なのでそれ以外の はをとればよい. ゆえに任意の整数 に対して 型の素数が存在することが示された.
もし 型の素数が有限個しかなければ,最大のものを とする. は任意なので の代わりに をとると 型の素数もまた存在する. ところが は 型の素数でもありしかも より大きい. したがって の最大性と矛盾するので, 型の素数は無数に存在する. □