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整数係数の二次方程式,でその判別式が正かつ平方数でないとする.このときこの方程式の根を二次(実)無理数と呼ぶ.
逆に二次無理数が満たす整係数の二次方程式を,その二次無理数の二次方程式という.
二次無理数の理論は,あまり他の知識を必要とせず理解できる大変美しい理論であるが,殘念ながら高校では習わない.ぜひ意慾的な高校生が,実際に計算をしながら学び理解してほしい.
補題 9
二次無理数の二次方程式は,定数倍を除いて一意である.
■
証明
なぜなら,が解であるとして,
さらに
の解でもあるとする.
を有理数とし,とする.
となる.第一式にを乗じて第二式を引くことにより,
となる.
が無理数で各係数が有理数なので
である.
つまり二つの二次方程式は,定数倍を除いて一意である.
□
二次無理数に対し,
が属する二次方程式のもう一つの根をの共役根と呼ぶ.
定理 60 (二次無理数の展開と判別式)
- (1)
- 二次実無理数に対等な無理数は,再び二次無理数である.
- (2)
- 対等な二次無理数の二次方程式の判別式は等しい.
■
証明
- (1)
-
と置く.
がをみたすとする.
この二次方程式の判別式をとする.では平方数ではない.
分母をはらってまとめると,
が平方数ではないので,整数に対して
はいずれも有理数解をもたないので,
である.
ゆえに,は整数を係数とする二次方程式の解となり,
二次無理数である.
- (2)
- この二次方程式の判別式をとする.
さらに
確かに二つの二次方程式の判別式は等しい.□
ここで,最も重要な論点となる定理を証明しよう.
それは 二次実無理数の連分数展開は循環する ということである.
既出の例5.2.1のように,は第二項目から循環し,循環の長さは1である.このような循環性がすべての実二次無理数で成り立つのである.
その証明のための次の事実に注意しよう.
補題 10
整数係数の二次方程式
で,判別式が
(一定)であって,
さらに
が互いに素かつ
であるようなものは,有限個しかない.
■
証明
なぜなら,より.従っては有限個である.
各に対して,を満たす整数の組は,
右辺の因数分解を4ととに分ける場合の数なので有限個である.
□
定理 61 (実二次無理数の基本性質)
実二次無理数の連分数展開は循環する.
すなわち,実二次無理数
の
までの展開を
|
(6.1) |
とすると,
はあるところから一定の周期をもって同じ展開を繰りかえす.
また,循環のはじまる番号
は
となる最初の番号である.
■
証明
いくつかの段階に分けて考えよう.正のもので証明できればよく,また共役なもののいずれかで証明できればよいのでを正な二次無理数で,をその共役無理数とし,
とする.
- (i)
- を十分大きくとれば
となることを示す.
等式6.1での共役をとると,
これから
ところが,
であるから十分大きなに対して,
したがって,
となる.
他方はから整数部分を除いた小数部分の逆数なので
である.
さらに
とすれば
であるが,逆に解いて,
である.このとき,より
である.
- 1.
- 十分大きいをとり
となっているとする.
とすれば,
はすべて同一の判別式の二次方程式の解であり,共役無理数が負である.
これら無理数の二次方程式は補題9より,
係数の定数倍を除いて一意なので,係数は互いに素としてよい.
これらの二次方程式は,二つの根の積が負で判別式が同一なので,
補題10の条件を満たす.補題10より
の中に異なるものは有限個しかない.
ゆえにある番号とがあって,
となり,以下との間の無理数が繰り返し現れる.
- (ii)
- このようなのうちが最小となるをとする.
すると
なるはすべての倍数である.
それを示す.
一般に一列に並んでいる数学的な対象が回毎にくり返しさらに回毎にくり返せば回毎にもくり返す.
なぜなら回目のその対象をと書けば,
がつねに成立することから,
が成立するからである.
このことに注意して,をで割った余りをとおく.
である.
ゆえにでもくり返すのでの最小性により,
.つまりを周期として循環する.
- 2.
- 循環のはじまるは
となる最小の番号であることを示す.
を循環のはじまる番号とし,番号はとする.
番号は循環部分にあるので,
つまり
なるが存在する.
また,
も成立している.
さて,
したがって
.
ここでと
は同一の判別式に属し,差が整数なので,
,
とおけ,
すでに見たようにこの場合
より
となって
.
すなわち
この操作は
であるかぎり繰り返せ,番号が1ずつ減じる.
逆に十分大きいでは
となるので,
循環する部分は
を満たしていなければならない.
よって,循環のはじまる 番号は
となる最小の番号である.
□
のことを二次無理数の連分数展開の周期と呼ぶ.
例 6.2.1
のとき.
である.
の共役が条件を満たす最初の共役無理数である.実際
となり,ここから循環が始まっている.
そして循環周期はである.
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