自然数の集合を基礎に,整数の集合と有理数の集合を構成することができる.その道筋を考えよう.そのために,今後も必要になる集合の同値関係による類別を明確にしておく.これは後に整数の類別においても基礎的な概念となるものである.
この同値関係による商集合 に和「+」と積「」という二つの演算を定義する. の二つの要素 をとる.
をとったがこの類が の他の要素を用いて表されていたとする.このとき であるが,こちらを用いて, の和を作ると となる.このとき,と は同値である.実際であるので が成り立つ.従って和は同じ類に属するいずれの要素を用いても同じ類を定める.このことを和は適切に定義されるという.積についても同様に確かめられる.さらに, が和の単位元, が積の単位元, が 和に関する逆元であることが確認でき,これによって が環をなすことが確認できる.
この環を整数の集合(整数環)いう.
から
への写像を自然数を用いて
自然数だけを用いて整数を構成しようとした.そのために自然数の組に のような 同値関係を入れ,同値なものを同一視したのである.が整数のに,が整数のになるわけである.
を整数の集合とする.次のような整数の組の集合を考える.
集合 のこの関係での商集合 に和「+」と積「」を定める.
これは適切に定義される.例えば和についていえば
この体をを有理数体という.
さらに
以下,有理数体の積で文字の場合,積の記号は約すか または紛らわしくなるときはで書こう.
こうして自然数の集合,整数環,有理数体が順次構成されるのである.