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ピタゴラス数の一般形


\begin{displaymath}
x^2+y^2=z^2
\end{displaymath}

を満たす正の整数の組$(x,\ y,\ z)$ピタゴラス数という.

$x,\ y,\ z$の最大公約数が1である組の一般形を求めてみよう.

$x,\ y$がともに偶数なら$z$も偶数になって, 最大公約数が1でなくなるので,$x$$y$のいずれかは奇数である.

$y$ を偶数とする. $x$$z$ は奇数になる.

\begin{displaymath}
y^2=(z-x)(z+x)
\end{displaymath}

であるが, $x$$z$ は奇数なので, $z-x,\ z+x$ はともに偶数である. つまり
\begin{displaymath}
\left(\dfrac{y}{2} \right)^2=\dfrac{z+x}{2}\cdot\dfrac{z-x}{2}
\quad \cdots\maru{1}
\end{displaymath}

で,
\begin{displaymath}
\dfrac{y}{2},\ \dfrac{z+x}{2},\ \dfrac{z-x}{2}
\end{displaymath}

がすべて整数になる.

さらに,

\begin{displaymath}
\dfrac{z+x}{2},\ \dfrac{z-x}{2}
\end{displaymath}

がたがいに素になる.なぜならもしこの2数が公約数 $d$ をもてば,
\begin{displaymath}
z+x=2du,\ z-x=2dv
\end{displaymath}

となり,
\begin{displaymath}
z=d(u+v),\ x=d(u-v) ,\ y^2=4duv
\end{displaymath}

となって$x,\ y,\ z$の最大公約数が1であることに反する.


\begin{displaymath}
\dfrac{z+x}{2},\ \dfrac{z-x}{2}
\end{displaymath}

は互いに素で,かつその積が平方数である.

$\maru{1}$の左辺を素因数分解すると, 各素因数は偶数個現れる. $\dfrac{z+x}{2},\ \dfrac{z-x}{2}$が互いに素なので, これらの素因数はそれぞれ $\dfrac{z+x}{2},\ \dfrac{z-x}{2}$のいずれか一方にのみ現れ, その結果 $\dfrac{z+x}{2},\ \dfrac{z-x}{2}$の素因数分解で 各素因数はすべて偶数個現れる.

よって $\dfrac{z+x}{2},\ \dfrac{z-x}{2}$はいずれも平方数である.

\begin{displaymath}
z+x=2a^2,\ z-x=2b^2
\end{displaymath}

とおく.これから

\begin{displaymath}
x=a^2-b^2,\ y=2ab,\ z=a^2+b^2
\end{displaymath}

となる.

最大公約数が1であるための $a$$b$ の条件を求める.

$a$$b$ はたがいに素で $a>b$ ,さらに $x,\ z$ が奇数なので $a$$b$ の偶数奇数が異なることが, $(x,\ y,\ z)$ の最大公約数が1であるために必要である.

よって,最大公約数が1の解は

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
(x,\ y,\ z)
=(a^2-b^2,\ 2ab,\ a^2+b^2...
...(a,\ b)=1,\ a-b は奇数
\end{array}
\quad \dots\maru{2}
\end{displaymath}

と表せる.

逆に条件$\maru{2}$を満たす $a$$b$ を用いて上のいずれかで 表される $(x,\ y,\ z)$ は最大公約数が1の解である.

それを示す. $\maru{2}$のように定まる$x,\ y,\ z$がピタゴラス数であることは明か.

もしこの $(x,\ y,\ z)$ に共通素因数 $p$ があるとする.

すると $z \pm x$$z \pm y$ を考えると $p$

\begin{displaymath}
2a^2,\ 2b^2
\end{displaymath}

の公約数である. $a$$b$ はたがいに素なので $p=2$ である.

ところが $p=2$$a^2-b^2$ 約数なので $a^2-b^2=(a+b)(a-b)$ が偶数.

これは条件 $a-b$ は奇数 に反する. よって確かに$\maru{2}$で定まる$(x,\ y,\ z)$は, 最大公約数が1のピタゴラス数である.

必要条件とあわせて,$\maru{2}$で表される$x,\ y,\ z$が最大公約数が1の ピタゴラス数のすべてである.


Aozora
2015-03-02