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7章

解答 27   問題27
(1)
$p(x)=1$とすれば$f(x)=f(x)p(x)$となるので, 整式$f(x)$$f(x)$の約数である.
(2)
0と異なる整式$f(x)$が整式$g(x)$なので,(1)から $f(x)$$f(x)$$g(x)$の公約数である. $f(x)$の約数の次数は$f(x)$の次数以下であるから, $f(x)$$f(x)$$g(x)$の公約数のなかで次数最大である. つまり$f(x)$$f(x)$$g(x)$の最大公約数である.
(3)
整式$g(x)$$f(x)$で割った商を$q(x)$とすると,
\begin{displaymath}
g(x)=f(x)q(x)+r(x)
\end{displaymath}

である.整式$d(x)$$r(x),\ f(x)$の公約数なので,$d(x)$$g(x)$の約数ともなり,$d(x)$$f(x)$$g(x)$の公約数でもある.

ここで$f(x)$$g(x)$の最大公約数を$D(x)$とすると,

\begin{displaymath}
d(x)の次数\le D(x)の次数
\end{displaymath}

つぎに

\begin{displaymath}
r(x)=g(x)-f(x)q(x)
\end{displaymath}

より$D(x)$$r(x)$の約数にもなり,$D(x)$$r(x),\ f(x)$の公約数となる. この結果
\begin{displaymath}
D(x)の次数\le d(x)の次数
\end{displaymath}

あわせて
\begin{displaymath}
D(x)の次数=d(x)の次数
\end{displaymath}

となり,$d(x)$$f(x)$$g(x)$の最大公約数でもあることが示された.
解答 28   問題28

解1    (整式の除法を用いる方法)

$Q(x)$は2次式なので, 整式$P(x)$$Q(x)$で割った余りは1次以下の整式である. 商を$A(x)$,余りを$ax+b$とする.

\begin{displaymath}
P(x)=Q(x)A(x)+ax+b
\end{displaymath}

このとき

\begin{eqnarray*}
&&\{P(x)\}^2=\{Q(x)A(x)\}^2\\
&&\quad+2(ax+b)Q(x)A(x)+(ax+b)^2
\end{eqnarray*}

ところが$\{P(x)\}^2$$Q(x)$で割り切れるので $\{P(x)\}^2=Q(x)B(x)$とおける. これから

\begin{eqnarray*}
&&Q(x)\left[B(x)-Q(x)\{A(x)\}^2\right.\\
&&\quad\left.-2(ax+b)A(x)\right]=(ax+b)^2
\end{eqnarray*}

$Q(x)$は2次式で,右辺は2次以下であるから, $B(x)-Q(x)\{A(x)\}^2-2(ax+b)A(x)$は定数である.これを$c$とする.

$P(x)$$Q(x)$で割り切れないので右辺は定数0ではない. つまり$c\ne 0$である.よって$Q(x)$

\begin{displaymath}
Q(x)=\dfrac{1}{c}(ax+b)^2
\end{displaymath}

と表される.$Q(x)$は2次式だから$a\ne 0$である. このとき方程式$Q(x)=0$は重解 $x=-\dfrac{b}{a}$を持つ.


解2    (整式の整数論を用いる方法)

$Q(x)=0$の解を$\alpha$$\beta$とし,

\begin{displaymath}
Q(x)=a(x-\alpha)(x-\beta)
\end{displaymath}

とおく. $\alpha\ne \beta$と仮定する. このとき$x-\alpha$$x-\beta$は互いに素である. よって任意の整式$f(x)$について$f(x)$$Q(x)$で割りきれることと, $f(x)$$x-\alpha$で割り切れかつ$x-\beta$で割り切れることが同値である. もし$P(x)$が因数$x-\alpha$をもたなければ,整式における素因数分解の一意性によって, $\{P(x)\}^2$も因数$x-\alpha$をもたない. よってもし$\{P(x)\}^2$が因数$x-\alpha$をもてば, $P(x)$が因数$x-\alpha$をもつ.

$\{P(x)\}^2$$Q(x)$で割り切れるので, $\{P(x)\}^2$が因数$x-\alpha$$x-\beta$をもち, その結果$P(x)$が因数$x-\alpha$$x-\beta$をもつ.

ところがこれは$P(x)$$Q(x)$で割りきれることを意味し,仮定と矛盾する. よって$\alpha=\beta$であり,2次方程式$Q(x)=0$$x=\alpha$を重解にもつ.

解答 29   問題29

解1    (整式の除法を用いる方法)

$A(x)$$B(x)$$C(x)$で割った商と余りをそれぞれ$a,\ p$$b,\ q$とし,

\begin{eqnarray*}
A(x)&=&aC(x)+p\\
B(x)&=&bC(x)+q
\end{eqnarray*}

とおく. それぞれ1次式であるので,$ab \ne 0$である. $\{A(x)\}^2+\{B(x)\}^2=\{C(x)\}^2$より
\begin{displaymath}
a^2\{C(x)\}^2+2apC(x)+p^2+b^2\{C(x)\}^2+2bqC(x)+q^2
=\{C(x)\}^2\quad \cdots\maru{1}
\end{displaymath}

$C(x)$$cx+d$とすると,$c\ne 0$で,両辺の$x^2$の係数の比較より
\begin{displaymath}
a^2c^2+b^2c^2=c^2
\end{displaymath}

これから

\begin{displaymath}
a^2+b^2=1
\end{displaymath}

である. このとき$\maru{1}$

\begin{displaymath}
2apC(x)+p^2+
2bqC(x)+q^2=0
\end{displaymath}

となる.両辺の$x$の係数比較から
\begin{displaymath}
2apc+2bqc=0
\end{displaymath}

その結果, $ap+bq=0\quad \cdots\maru{2}$となり,さらに
\begin{displaymath}
p^2+q^2=0\quad \cdots\maru{3}
\end{displaymath}

である.ここで$a\ne 0$なので$\maru{2}$から
\begin{displaymath}
p=-\frac{bq}{a}
\end{displaymath}

これを$\maru{3}$に代入して
\begin{displaymath}
\dfrac{b^2q^2}{a^2}+q^2
=\dfrac{b^2+a^2}{a^2}q^2=\dfrac{1}{a^2}q^2=0
\end{displaymath}

よって$q=0$となり,$\maru{3}$から$p=0$

$A(x)$$B(x)$はともに$C(x)$の定数倍であることが示された.


解2    (整式の整数論を用いる方法)

$\{A(x)\}^2+\{B(x)\}^2=\{C(x)\}^2$より

\begin{displaymath}
\{B(x)\}^2=\{C(x)+A(x)\}\{C(x)-A(x)\}
\end{displaymath}

である. $C(x)+A(x)$$C(x)-A(x)$も1次以下の整式であるから$\{B(x)\}^2$の定数倍になることはない. したがって定数$k\ (k\ne 0)$が存在して
\begin{eqnarray*}
&&C(x)+A(x)=kB(x)\\
&&C(x)-A(x)=\dfrac{1}{k}B(x)
\end{eqnarray*}

と表される. これから

\begin{displaymath}
A(x)=\dfrac{k^2-1}{2k}B(x),\ C(x)=\dfrac{k^2+1}{2k}B(x)
\end{displaymath}

である. $A(x)$$C(x)$も1次式なので$k^2\pm 1\ne 0$である.
\begin{displaymath}
A(x)=\dfrac{k^2-1}{k^2+1}C(x),\ B(x)=\dfrac{2k}{k^2+1}C(x)
\end{displaymath}

となり,$A(x)$$B(x)$はともに$C(x)$の定数倍であることが示された.
解答 30   問題30
解1      $(x+1)^3$$x-1$で割って
\begin{displaymath}
(x+1)^3=(x-1)(x^2+4x+7)+8
\end{displaymath}

これから
\begin{displaymath}
-\left(\dfrac{1}{8}x^2+\dfrac{1}{2}x+\dfrac{7}{8} \right)(x-1)
+\dfrac{1}{8}(x+1)^2=1
\end{displaymath}

となる. $p(x)f(x)+q(x)g(x)=1$と辺々引いて
\begin{displaymath}
(x-1)\left\{p(x)+\dfrac{1}{8}x^2+\dfrac{1}{2}x+\dfrac{7}{8} \right\}
+(x+1)^3\left\{q(x)- \dfrac{1}{8}\right\}=0
\end{displaymath}

$x-1$$(x+1)^3$は互いに素なので,ある整式$T(x)$を用いて

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
p(x)+\dfrac{1}{8}x^2+\dfrac{1}{2}x+\dfr...
...=(x+1)^3T(x)\\
q(x)- \dfrac{1}{8}=-(x-1)T(x)
\end{array}
\end{displaymath}

と表され,またこの形のものは与式を満たす.ゆえに任意の解は
\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
p(x)=-\dfrac{1}{8}x^2-\dfrac{1}{2}x-\df...
...)T(x)
\end{array}
,\ \left(T(x) は任意の整式\right)
\end{displaymath}

と表される.

次数最小のものは$T(x)=0$のときである.

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
p(x)=-\dfrac{1}{8}x^2-\dfrac{1}{2}x-\dfrac{7}{8}\\
q(x)=\dfrac{1}{8}
\end{array}
\end{displaymath}

である.最高次数の係数が1で次数最小のものは$T(x)=1$のときだから
\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
p(x)=x^3+\dfrac{23}{8}x^2+\dfrac{5}{2}x+\dfrac{1}{8}\\
q(x)=-x+\dfrac{7}{8}
\end{array}
\end{displaymath}

である.

解2      与式に$x=1,\ x=-1$を代入して

\begin{displaymath}
q(1)(1+1)^3=1,\ p(-1)(-1-1)=1
\end{displaymath}

これから$p(x),\ q(x)$は,ある整式$P(x),\ Q(x)$を用いて
\begin{displaymath}
p(x)=(x+1)P(x)-\dfrac{1}{2},\
q(x)=(x-1)Q(x)+\dfrac{1}{8}
\end{displaymath}

と表される.これを与式に代入して
\begin{displaymath}
(x-1)\left\{(x+1)P(x)-\dfrac{1}{2} \right\}+
(x+1)^3\left\{(x-1)Q(x)+\dfrac{1}{8} \right\}=1
\end{displaymath}

これから
\begin{eqnarray*}
(x^2-1)P(x)+(x^2-1)(x+1)^2Q(x)&=&1-\dfrac{(x+1)^3}{8}+\dfrac{x-1}{2}\\
&=&\dfrac{(x^2-1)(-x-3)}{8}
\end{eqnarray*}

\begin{displaymath}
∴\quad P(x)=-(x+1)^2Q(x)-\dfrac{x+3}{8}
\end{displaymath}

次数を小さくとるために,$Q(x)=0$とおく. $P(x)=-\dfrac{x+3}{8}$

このとき

\begin{eqnarray*}
p(x)&=&(x+1)\left(-\dfrac{x+3}{8} \right)-\dfrac{1}{2}\\
&=...
...rac{1}{8}x^2-\dfrac{1}{2}x-\dfrac{7}{8}\\
q(x)&=&\dfrac{1}{8}
\end{eqnarray*}

逆にこれは与式を満たす.

次に与式を満たす任意の$p(x),\ q(x)$と,先に求めた一組の解を与式に代入し

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
(x-1)p(x)+(x+1)^3q(x)=1\\
(x-1)\left...
...\right)
+(x+1)^3\left( \dfrac{1}{8}\right)=1
\end{array}
\end{displaymath}

の辺々を引く(以下は同じ).


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Aozora
2015-03-02