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恒等式の判定法


南海  ここでは「恒等式を発見する」で書いたことを少し深めたい.

現在の教科書では,恒等式の定義を習った段階で,因数定理はまだである.そのため,次の大変重要な基本定理が高校数学から拔け落ちている.

定理 6
     $f(x),g(x)$ が高々$n$次の$x$についての整式であるとき,次の三つの命題は同値である. またこのとき,等式 $f(x)=g(x)$恒等式 であるという.
  1. $f(x)$$g(x)$ は同一の式である.つまり, 次数が等しくかつ同じ次数の項の係数が等しい.
  2. 任意の $x$ の値に対して$f(x)$$g(x)$は同一の値をとる.
  3. 等式 $f(x)=g(x)$が互いに異なる$n+1$個の$x$の値に対して成り立つ.

証明

  1. $(\mathrm{i}) \Rightarrow (\mathrm{ii})$:明白である.
  2. $(\mathrm{ii}) \Rightarrow (\mathrm{iii})$:明白である.
  3. $(\mathrm{iii}) \Rightarrow (\mathrm{i})$ $H(x)=f(x)-g(x)$$n$ 次以下の整式である. $a_i(1 \le i \le n+1)$ のあい異なる $a_i$ に対して, $H(a_i)=0$ であるから,因数定理より, $H(x)=(x-a_1)(x-a_2) \cdots (x-a_{n+1})Q(x)$ と 因数分解される.もし $Q(x) \ne 0$ なら,左辺の次数は $n$ 以下であり, 右辺の次数は $n+1$ 以上となる.よって矛盾が起こる.従って $H(x)=0$ . つまり $f(x)=g(x)$ である.
このとき $(\mathrm{ii}) \Rightarrow (\mathrm{iii})$ $(\mathrm{iii}) \Rightarrow (\mathrm{i})$より $(\mathrm{ii}) \Rightarrow (\mathrm{i})$. ゆえに$(\mathrm{i})$$(\mathrm{ii})$は同値.他も同様. ゆえに三つの条件は互いに他の二つの必要十分条件になっていることが示された.□

$f(x)$ が多項式関数でなければ,成り立つとはかぎらないことにも注意しよう.

史織  関数$f(x)$ $({\rm i}) \Rightarrow ({\rm ii})$が成り立たない例.

\begin{displaymath}
\sin(x+2\pi)=\sin x
\end{displaymath}

式は違うがすべての実数 $x$ で成立.

関数$f(x)$ $({\rm ii}) \Rightarrow ({\rm iii})$が成り立たない例.

\begin{displaymath}
\sin x=2\sin x
\end{displaymath}

$x$$\pi$ の整数倍ならつねに成立するが,もちろんすべての $x$ で成立するわけではない.

南海  その通り.一般に周期関数で反例が作れる.

史織  「 .つまり $f(x)=g(x)$」と言うところはそれぞれ恒等式として成立ということですね.

南海  その通り.整式$f(x)$ を整式 $g(x)$ で割ったとき,商が $Q(x)$ で余りが $R(x)$ なら

\begin{displaymath}
f(x)=g(x)Q(x)+R(x)
\end{displaymath}

と書けるのだが,この除法の式は「恒等式」なのだ.

ところで,上の恒等式の基本性質によると,$n$ 次の整式 $f(x)$ に対し, $x$$n+1$ 個の値

\begin{displaymath}
\alpha_0,\ \alpha_1,\ \cdots,\ \alpha_n
\end{displaymath}

に対する $f(x)$ の値

\begin{displaymath}
f(\alpha_0),\ f(\alpha_1),\ \cdots,\ f(\alpha_n)
\end{displaymath}

が定まれば, $f(x)$ は一つしかないことになる.

史織  $f(x)$$g(x)$ が同じ値になるとすると

\begin{displaymath}
f(\alpha_0)=g(\alpha_0),\ f(\alpha_1)=g(\alpha_1),\ \cdots,\ f(\alpha_n)=g(\alpha_n)
\end{displaymath}

$f(x)=g(x)$ が異なる $n+1$ この値で成立するので,恒等式として $f(x)=g(x)$ というわけですね.

南海  その通り.

さて,となると次の問題が考えられる.

$n+1$ 個の値

\begin{displaymath}
f(\alpha_0),\ f(\alpha_1),\ \cdots,\ f(\alpha_n)
\end{displaymath}

が与えられた $n$ 次式 $f(x)$ を求めよ.

史織  『青空学園』で見ました.「ラグランジュの補間公式」です.

\begin{eqnarray*}
f(x)&=& f(\alpha_0)
\dfrac{(x-\alpha_1)(x-\alpha_2) \cdots (x-...
...a_n-\alpha_0)(\alpha_n-\alpha_1) \cdots (\alpha_n-\alpha_{n-1})}
\end{eqnarray*}

これは確かに

\begin{displaymath}
\alpha_0,\ \alpha_1,\ \cdots,\ \alpha_n
\end{displaymath}

での値が

\begin{displaymath}
f(\alpha_0),\ f(\alpha_1),\ \cdots,\ f(\alpha_n)
\end{displaymath}

になるし,そのようなものは一つしかない.

南海  それではもう一つ.次の今年の京大の問題を,数学的帰納法を用いないで, ラグランジュの補間公式を用いて解け.

演習 7       [02京大後期理系] 解答7

$f(x)$$x^n$ の係数が1である $x$$n$ 次式である.相異なる $n$ 個の有理数 $q_1,\ q_2,\ \cdots,\ q_n$に対して $f(q_1),\ f(q_2),\ \cdots,\ f(q_n)$がすべて有理数で あれば, $f(x)$ の係数はすべて有理数であることを,数学的帰納法を用いて示せ.

南海  この問題は数学的帰納法と方法を指定しない方がよかった.

とりあえず以上としよう.またわからないことがあれば質問してほしい.

史織  ありがとうございました.


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