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平面上の直線(その一)

まず第一の方法だ.平面上の二点 $\mathrm{A}(a_1,a_2),\ \mathrm{B}(b_1,b_2)$ がある. このとき直線 $\mathrm{AB}$の式をベクトルを用いて求めよ.

史織  ベクトルですか.直線 $\mathrm{AB}$上の点を $\mathrm{P}(x,\ y)$ とおく.この $x$$y$ が 満たす式を求めればよいのですね.平行条件をうまく使えないかな.

二つのベクトル

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{AB}}=(b_1-a_1,\ b_2-a_2),\
\overrightarrow{\mathrm{AP}}=(x-a_1,\ y-a_2)
\end{displaymath}

が平行なので,先の平行条件から

\begin{displaymath}
(b_2-a_2)(x-a_1)-(b_1-a_1)(y-a_2)=0 \quad \cdots\maru{1}
\end{displaymath}

ということですか.

これを計算すると

\begin{displaymath}
(b_2-a_2)x-(b_1-a_1)y-(a_1b_2-a_2b_1)=0 \quad \cdots\maru{2}
\end{displaymath}

となります.

南海  そうだ.これは昔どおり傾きを求めてから導く直線の式と同じだろう.

$b_1\ne a_1,\ b_2\ne a_2$のとき $\maru{1}$はまた

\begin{displaymath}
\dfrac{x-a_1}{b_1-a_1}=\dfrac{y-a_2}{b_2-a_2}
\end{displaymath}

ともかける.これはもちろん $\overrightarrow{\mathrm{AP}}=t\overrightarrow{\mathrm{AB}}$から $t$ を消去した式でもある.

これをほんの少し違う形で導こう.

例 1.7.1   点 $\mathrm{P}(x,\ y)$が直線 $\mathrm{AB}$ 上の点であることは,

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OP}}
=s\overrightarrow{\mathrm{OA}}+t\overrightarrow{\mathrm{OB}} \quad \cdots\maru{3}
\end{displaymath}

と表すとき, $s+t=1$ となることと同値である.これから直線 $\mathrm{AB}$ の式を作れ.

史織  $\maru{3}$ 式を成分で書くと

\begin{displaymath}
\vecarray{x}{y}=s\vecarray{a_1}{a_2}+t\vecarray{b_1}{b_2}
=\...
...s+b_1t}{a_2s+b_2t}
=\matrix{a_1}{b_1}{a_2}{b_2}\vecarray{s}{t}
\end{displaymath}

です.

これより

\begin{displaymath}
\matrix{a_1}{b_1}{a_2}{b_2}^{-1}\vecarray{x}{y}=\vecarray{s}{t}
\end{displaymath}

つまり

\begin{displaymath}
\vecarray{s}{t}=\dfrac{1}{a_1b_2-a_2b_1}\matrix{b_2}{-b_1}{-...
...}{y}
=\dfrac{1}{a_1b_2-a_2b_1}\vecarray{b_2x-b_1y}{-a_2x+a_1y}
\end{displaymath}

したがって $s+t=1$ より

\begin{displaymath}
(b_2x-b_1y)+(-a_2x+a_1y)=a_1b_2-a_2b_1
\end{displaymath}

あっ.先ほどの式 $\maru{2}$ と同じだ.

南海  式が同じになるのは当然なのだが,なかなかおもしろい.行列を習っていない人は, $s$$t$ を 未知数として連立一次方程式を解いたと考えればよい.



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