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和の期待値

確率変数$X$ $x_1,\ x_2,\ \cdots,\ x_n$ の値を取り, その確率が $p_1,\ p_2,\ \cdots ,\ p_n$ であるとする. つまり $P(X=x_i)=p_i\ (i=1,\ 2,\ \cdots,\ n)$であるとする.

確率変数$Y$ $y_1,\ y_2,\ \cdots ,\ y_m$ の値を取り, その確率が $q_1,\ q_2,\ \cdots ,\ q_m$ であるとする. つまり $P(Y=y_i)=q_i\ (i=1,\ 2,\ \cdots,\ m)$であるとする.

$x_i+y_j$を確率 $P(X=x_i,\ Y=y_j)$でとる確率変数を,確率変数$X$$Y$の和といい,$X+Y$と書く.

$x_iy_j$を確率 $P(X=x_i,\ Y=y_j)$でとる確率変数を,確率変数$X$$Y$の積といい,$XY$と書く.

確率変数$X+Y$の期待値 $E(X+Y)$$E(X)+E(Y)$ と一致する.

史織 

\begin{eqnarray*}
\sum_{i=1}^nP(X=x_i,\ Y=y_j)&=&P(Y=y_j)=q_j\\
\sum_{j=1}^mP(X=x_i,\ Y=y_j)&=&P(X=x_i)=p_i
\end{eqnarray*}

なので

\begin{eqnarray*}
E(X+Y)&=&\sum_{i=1}^n \sum_{j=1}^m (x_i+y_j)P(X=x_i,\ Y=y_j)\\...
...y_j)\\
&=&\sum_{i=1}^nx_ip_i+\sum_{j=1}^my_jq_j\\
&=&E(X)+E(Y)
\end{eqnarray*}

南海  これは要するに,英語と数学の合計の平均を求めるのに,先にそれぞれの合計を出しその平均をとろうと,各教科の平均を出してから加えようと,同じ結果になるということである. $E(X+Y)=E(X)+E(Y)$ は何かと便利な公式であるので,使ってみよう.

3個の変量$X,\ Y,\ Z$のときも

\begin{displaymath}
E(X+Y+Z)=E(X)+E(Y)+E(Z)
\end{displaymath}

が成り立つ.

史織  期待値は結局根元事象の全体にわたる和であるという観点から $E(X+Y)=E(X)+E(Y)$を示せませんか.

南海  できる.やってみてほしい.

史織  $X$の値が$x_i$であり,$Y$の値が$y_j$であるような事象を$A_{i,j}$とおく.すると標本空間$U$は 互いに排反な事象$A_{i,j}$の和になる.そして

\begin{displaymath}
P(X=x_i,\ Y=y_j)=p(A_{ij})=\sum_{u \in A_{i,j}}p(u)
\end{displaymath}

である.$u\in A_{ij}$に対して

\begin{displaymath}
x_i+y_j=X(u)+Y(u)
\end{displaymath}

なので

\begin{eqnarray*}
(x_i+y_j)P(X=x_i,\ Y=y_j)&=&(x_i+y_j)\left\{\sum_{u \in A_{i,j...
...) \right\}\\
&=&\sum_{u \in A_{i,j}}\left(X(u)+Y(u) \right)p(u)
\end{eqnarray*}

したがって

\begin{eqnarray*}
E(X+Y)&=&\sum_{i=1}^n \sum_{j=1}^m (x_i+y_j)P(X=x_i,\ Y=y_j)\\...
...u)\\
&=&\sum_{u \in U}X(u)p(u)+\sum_{u \in U}Y(u)p(u)=E(X)+E(Y)
\end{eqnarray*}

です.

ここで期待値の和を問う過去問題を紹介しよう.

演習 18       [04北大前期理系]解答18

ある人がサイコロを振る試行によって,部屋A,Bを移動する. サイコロの目の数が1,3のときに限り部屋を移る. また各試行の結果,部屋Aに居る場合はその人の持ち点に1点を加え,部屋Bに居る場合は1点を減らす. 持ち点は負になることもあるとする. 第$n$試行の結果,部屋A,Bに居る確率をそれぞれ $P_A(n),\ P_B(n)$と表す. 最初にその人は部屋Aに居るものとし(つまり, $P_A(0)=1,\ P_B(0)=0$とする),持ち点は1とする.

  1. $P_A(1),\ P_A(2),\ P_A(3)$および $P_B(1),\ P_B(2),\ P_B(3)$を求めよ. また,第3試行の結果,その人が得る持ち点の期待値$E(3)$を求めよ.
  2. $P_A(n+1),\ P_B(n+1)$ $P_A(n),\ P_B(n)$を用いて表せ.
  3. $P_A(n),\ P_B(n)$$n$を用いて表せ.
  4. $n$試行の結果,その人が得る持ち点の期待値$E(n)$を求めよ.



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