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背理法


元の命題の真偽と対偶命題の真偽は一致する.なぜか.

史織  これも教科書に載っています.

条件 $P,\ Q$ に対して「 $P \Rightarrow Q$が真」は $T_P \subset T_Q$ を意味します. 一方「 $\overline{Q} \Rightarrow \overline{P}$が真」は $\overline{T_Q}\subset \overline{T_P}$ を意味します.ところが一般に集合 $A$ に対して $\overline{A}=U-A$ です.ここで $U-A$は全体集合から集合 $A$ の要素を取り除いたものです.

したがって

\begin{displaymath}
T_P \subset T_Q \quad \iff \quad
U-T_Q \subset U-T_P \quad \iff \quad
\overline{T_Q}\subset \overline{T_P}
\end{displaymath}

となり,真理集合の包含関係の同値性から,元の命題と対偶命題の同値性が示されます.

南海  なかなかよく勉強している. $P$$Q$ が自体が命題のときは$P$$Q$ を命題関数にして,同様に示せばよい.

南海  さて証明における推論の方法なのだが,ここで直接証明と間接証明について触れておこう.

典型的な直接証明 は次のように行われる.

  1. 命題 $P$ は真である.
  2. 命題 $P \Rightarrow Q$ は真である.
  3. ゆえに,命題 $Q$ は真である.

それに対して間接証明とは何か.命題$P$を証明したいときに,自明であったりその証明の前提となっている 適当な命題$Q$を用いて $\overline{P} \Rightarrow \overline{Q}$ を示す.これから $Q \Rightarrow P$が成り立つことが示され,$Q$を前提として$P$が成立することを示すことができる.

これが背理法だ.これについては『高校数学の方法』「背理法」で 具体的に詳しく述べたので見てほしい.

最後にもう一題演習問題を.

演習 23       [02慶応改題]    解答23

次の二つの命題 $[P]$$[Q]$ を考える.ただし $a,\ b$ は実数とする.
$[P]$     未知数を $x,\ y$ とする連立方程式 $\left\{
\begin{array}{l}
ax+y=0\\
x+by=0
\end{array}\right.$ において, $x=y=0$ 以外の解で, $x\ge 0$ かつ $y\ge 0$ を満たすものがある.
$[Q]$     ベクトル $\overrightarrow{k}=(a,\ 1)$ $\overrightarrow{h}=(1,\ b)$ について $\overrightarrow{k}\cdot\overrightarrow{q}>0$かつ $\overrightarrow{h}\cdot\overrightarrow{q}>0$となるベクトル $\overrightarrow{q}=(x,\ y)$がある.

  1. 命題 $[P]$ が真となる点 $(a,\ b)$ の集合を求めよ.ただし,理由も示せ.
  2. 命題 $[\overline{Q}]$ が真となる点 $(a,\ b)$ の集合を求めよ. ただし,理由も示せ.なお, $[\overline{Q}]$は命題$[Q]$の否定である.
  3. 命題 $[P]$$[Q]$ の関係を述べよ.



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