耕介 整数の部分集合で,の2つの元の差, およびの元の整数倍が再びに属するような 部分集合をイデアルという,とありました.
南海 これを多項式の場合に正確に言おう. 変数の多項式の集合には, 和の単位元 0と積の単位元 1があり, 和差および積の演算で閉じている, つまりそれらの演算の結果は再びに属する. このような性質をもつ集合を環という. 多項式の集合の場合は多項式環といわれる.
例えば, 1変数多項式環で定数項が0であるような多項式の集合はイデアルである.
さて,イデアル
が
で生成されるとは,
の各元が
の中の
(によって異なってもよい)有限個の
を用いて
と書き表されることをいう.いいかえると,
耕介 はで生成されます.
南海 そう.この場合は1つの元で生成される. さて,次の基本定理が成り立つ. つまり,上の を固定することが出来る.
の変数の個数についての 数学的帰納法でおこなう.
のとき.このとき多項式環は定数項のみからなりそのものである. の任意のイデアルに対し,0でないの元を取ると, がの元なので,との積1がに属する. したがって任意のの元に対して,より, がに属する.つまり,のイデアルはとしかない. このときははそれぞれ0と1で生成される.
変数の個数がのとき, つまり で定理が成立するとする.
の元
をで整理し,
次にに対して
を示す.は明か.
の任意の元をとる. をの次数に関する数学的帰納法で示す.
なら,より成立. 次までは成立するとする.
のとき.
なので,
の元を用いて
のとき.
同様に考え
の元を用いて
よってとなり,が示された.
この結果が有限個の元で生成されることが確定した. □