すべての根の絶対値がある範囲を超えないとき,その範囲を根の限界と呼ぶ. 一つの限界の定め方として次のものがある.
耕一 証明は背理法ですね. とする. (いろいろやってみるが)しかし難しいです.
南海
2つの複素数 と に関して
これを使う.さらに なので
しかし,この は係数の絶対値の和なので結構大きい.もう少し小さい限界がとれる. 同様の論証で次の定理が成り立つ.
証明
のとき.(1.2)は
のとき成立するとする.
のとき.
ここで係数
それを とする. なので は で負から正に変わる. つまり は で極小である.
なので はただ一つ正の解 をもつ.
したがって である複素数 に対しては(1)から なのでとなることはあり得ない.
よって(1.2)の他の解 はすべて をみたす.□
この前半(1)は数学的帰納法の演習問題だ.この定理を生かすと根の限界について もう少し小さい値を取ることができる.
証明
一般に,である複素数に関する三角不等式
において,左の等号が成立するのはのとき,右の等号が成立するのはのときである.ただし偏角は0からにとるものとする.
つまり となる が解であり得るのは,上の二つの複素数に関する
不等式で等号が成り立つときである.つまり
今,
とおくと
ゆえに解 に対しては である.□
証明
この係数
は を解にもつので,定理1(2)から の 以外の
解 はすべて をみたす.つまり
となる解があるとする. の偏角を とする.偏角を で考える.
となるのは
定理1の(2)の証明で2つの不等式でともに等号が成立するときなので,
ところが のとき
南海 このような根の限界は他にもいろいろとある.ただそれは今日の主題ではないのでここでおく.