を実係数をもつ 次多項式
以下, の零点 とは となる実数 のこととする.
と に対してユークリッドの互除法を行う. そのとき余りを次の定理のなかで述べられているように,通常の場合と符号を逆にとる.
の零点でない実数 に対して,数の列
は の零点でないとする.このとき区間 内の
相異なる零点の個数(したがって重根も1つと数える)は
南海 ユークリッドの互除法により, は と の最大公約数である. これが互いに素,つまり が重根をもたなければ, は定数である.
耕一 この種の問題を考えるのに と は必要だとわかります. しかしそのあと,順に と作っていってそれを調べるのかな,と 思っていたのですが,互除法で次々に決めていくのですね.
南海 スツルムの時代,いろんな試行錯誤があったのだろう. 当然,高次微分との関係も調べられたに違いない.
高次微分の列
高次微分は の3項の間の関係を 数式で表わしにくい.が,互除法ならはっきりしている. さらに互除法で余りの符号を逆にとるなどということは,ほんとにいろんな工夫の後に, スツルムにひらめいたのだ.こうして任意の区間内の実根の個数を確定するという問題を スツルムが最初に解決した.
証明
が重根をもたない場合.
この場合, と は互いに素なので, は0でない定数で, 隣りあう2項の零点に同じものはない.
区間 で を固定し を動かすことを考える.
区間内の実数での零点ではないものをとる. このに対し,を零点にもつで, にあるものをとる. を で区間 に 以外のの零点が存在しないようにとる.
このとき である.
このようなが存在しなければ,すべて符号が一定なので明らかである.
存在するときを考える. の前後の は を零点にはしないので で同じ符号をとる.
は の前後で負から正に変わるとする.
正から負に変わるときも同様である. したがって符号変化の回数は変わらない.
を零点にもつ各についていえるので, である.
次に を の零点とし,同様の考察を行う.
の前後で が負から正に変わるとすると なので
を零点にもつ, の範囲のについては,先の考察と同様にの 前後での符号変化の回数は変わらない.
よってこの場合 である.
したがって は が から増加して の零点を一つ超えるごとに1増加する.
つまり は区間 における の零点の個数そのものである.
が実数の重根 をもつ場合.
とおく.
から のすべてを で割る.
それをあらためて
この新たな の での符号は, もとの の での符号と, の正負に よってすべて同符号かすべて異符号かのいずれかであるから,符号変化の回数は変わらない.
新たな は隣りあう2項の間に共通の零点をもたないので に対する の零点 の前後で の値が変わらないことは 同様である.
を の零点とする. なら の前後で の値が1減ることも同様である.
最後に の前後でも の値が1減ることを確認する.
で である.
今 の前後で とし,上と同様の考察をする.
したがってこの場合も である.
よって重根をもつ場合も は が から増加して の零点を一つ超えるごとに1増加する.
つまり は区間 における の零点の個数そのものである. ただし,重根も1つに数えている.
以上で題意が示された.□
南海 ここで大切な注意がある.区間 での符号変化回数の差 を求めようとするとき,ある が区間 で符号が一定になったとする.
すると の間の に対し,各が途中で符号を変えても,
すでに見たようにその前後の と で の値が変わらず,
したがって区間 に属する任意の に対し数列
したがって を求めようとすれば
さて, 次方程式 がいくつ実数解をもつかを知りたければ, まず先に見たように,根の限界を何らかの方法で見つけそれを とする. すべての実根は区間 にあるので が実根の個数である.
このようにスツルムの定理と根の限界の定理を組み合わせれば,すべての実根の 個数がわかる.
そこで最初の阪大の問題だが,スツルムの定理の簡単な応用になっていることは わかるだろうか.
耕一 とすれば .十分大きい をとり 区間 をとる.この区間での符号は一定(つねに正)なので, 先の注意により と の符号変化のみを調べればよい.
なら . なら .
のとき….
南海 のとき,つまり のときは, 任意の正の に対して だから .ゆえにやはり正の解はない.
南海 区間の中に1つあることがわかれば,区間を中点で区切り調べれば,そのいずれにあるか わかる.同様にくり返せばいくらでも根の近似値を求めることができる.