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チェビシェフの多項式の応用

南海  関数$f(x)$の定義域の部分集合$I$がある. 関数$f(x)$の絶対値$\vert f(x)\vert$$I$における最大値が存在するとき, その値を$f(x)$$I$における最大偏位という. 前の問題を前提として次の問題をやってみよう.

定理 8
    
  1. 最高次数の項の係数が$1$である$n$次の多項式

    \begin{displaymath}
f(x)=x^n+a_1x^{n-1}+\cdots +a_n
\end{displaymath}

    $-1\le x\le 1$における最大偏位は $\dfrac{1}{2^{n-1}}$より小さくなることは できず, $f(x)=\dfrac{1}{2^{n-1}}T_n(x)$のときにかぎり, $\dfrac{1}{2^{n-1}}$と なる.
  2. $x$に対し, $X=\dfrac{2}{b-a}(x-a)-1$を対応させると,区間$a\le x\le b$ は区間$-1\le X\le 1$にうつる.これを用いて,最高次数の項の係数が$1$ である$n$次の多項式で区間$a\le x\le b$における最大偏位が最小となるものを, $T_n(x)$を用いて表わせる.

    \begin{displaymath}
2\left({\dfrac{b-a}{4}}\right)^n T_n\left(\dfrac{2}{b-a} (x-a)-1\right)
\end{displaymath}

  3.     ある区間での最大偏位が任意に指定された値よりも小さくなるような, 最高次数の項の係数が$1$である多項式が常に作れるためには,その区間の長さが4 より小さいことが必要十分条件である.

南海  どうかな.

耕一  (1)の後半, 「かぎり」のところが難しいです.普通に交わるときは多項式として一致するのですが, 極で重なる場合が厳密ではありません.

南海 熊本大の(4)の部分だな.少し手助けしよう.

証明

  1. $T_n'(x)=0$である各点での$T_n(x)$の値を調べる.$T_n'(x)=0$をみたす$x$

    \begin{displaymath}
x=\cos{\dfrac{1}{n}\pi} ,\ \cos{\dfrac{2}{n}\pi} ,\
\cdots,\ \cos{\dfrac{n-1}{n}\pi}
\end{displaymath}

    であった. この各値

    \begin{displaymath}
\cos{\dfrac{k}{n}\pi}\quad(k=1,\,2,\,\cdots ,\,n-1)
\end{displaymath}

    に対して,

    \begin{displaymath}
T_n\left(\cos{\dfrac{k}{n}\pi}\right)=\cos{k\pi}=(-1)^k
\end{displaymath}

    したがって, $T_n(x)$$T_n'(x)=0$である$x$において, $+1$$-1$を 交互にとる. また, $1=\cos{0}$であるから,

    \begin{displaymath}
T_n(1)=\cos{0}=1
\end{displaymath}
      $-1=\cos\pi$であるから,

    \begin{displaymath}
T_n(-1)=\cos{n\pi}=(-1)^n
\end{displaymath}
    したがって, $T_n(x)$のグラフは右図のようになっている.

    さて, $-1\leq x\leq 1$において $\vert\,f(x)\,\vert<\dfrac{1}{2^{n-1}}$と仮定する. いま

    \begin{displaymath}
F(x)=f(x)-\dfrac{1}{2^{n-1}} T_n(x)
\end{displaymath}
    とおくと,

    \begin{displaymath}
F(1) < 0,\ F\left(\cos{\dfrac{1}{n}\pi}\right) > 0,\
F\left(\cos{\dfrac{2}{n}\pi}\right) < 0,\ \cdots
\end{displaymath}
    というように, $\dfrac{1}{2^{n-1}} T_n(x)$ $\pm\dfrac{1}{2^{n-1}}$の値 をとる1から$-1$までの$n+1$個の点で符号が入れ替わる. よって, $F(x)$

    \begin{displaymath}
1> x >\cos{\dfrac{1}{n}\pi} ,\ \cos{\dfrac{1}{n}\pi}
>x>\cos{\dfrac{2}{n}\pi},\ \cdots, \cos{\dfrac{n-1}{n}\pi}>x>-1
\end{displaymath}

    $n$個の各区間において値 0 をとるような$x$が少なくとも一つずつ存在する. つまり, $F(x)=0$$n$個以上の解をもつ. ところが, $F(x)$$n-1$次 の多項式であるから, $F(x)$は恒等的に 0 となる. つまり,

    \begin{displaymath}
f(x)=\dfrac{1}{2^{n-1}} T_n(x)
\end{displaymath}

    これは $\vert\,f(x)\,\vert<\dfrac{1}{2^{n-1}}$に矛盾する. したがって, $-1\leq x\leq 1$において

    \begin{displaymath}
\vert\,f(x)\,\vert\geq\dfrac{1}{2^{n-1}}
\end{displaymath}

    となる点が必ずあり, 最大偏位は $\dfrac{1}{2^{n-1}}$以上となる.

    次に, もし$f(x)$ $-1\leq x\leq 1$における最大偏位がちょうど $\dfrac{1}{2^{n-1}}$であれば, $f(x)=\dfrac{1}{2^{n-1}}T_n(x)$とな ることを示す. そのために, 上と同じく

    \begin{displaymath}
F(x)=f(x)-\dfrac{1}{2^{n-1}} T_n(x)
\end{displaymath}

    を考える. ここで, $F(x)$$n-1$次式である. いま, $n$個の各区間


    において, $n-1$次方程式$F(x)=0$は少なくとも一つの解をもつ. その二つの解 が隣り合う二つの区間の境界点 $\cos{\dfrac{k}{n}\pi}$で一致したときを考える.

    \begin{displaymath}
T_n\left(\cos\dfrac{k}{n}\pi\right)=1
\end{displaymath}

    とする.

    \begin{displaymath}
F\left(\cos{\dfrac{k}{n}\pi}\right)=0
\end{displaymath}

    より

    \begin{displaymath}
f\left(\cos{\dfrac{k}{n}\pi}\right)=\dfrac{1}{2^{n-1}}T_n
\left(\cos\dfrac{k}{n}\pi\right)=\dfrac{1}{2^{n-1}}
\end{displaymath}


    \begin{displaymath}
\begin{array}{l}
x<\cos\dfrac{k}{n}\pi に対して\dfrac{f(x)...
...ad\quad ∴f'\left(\cos\dfrac{k}{n}\pi\right)=0\\
\end{array} \end{displaymath}

    一方

    \begin{displaymath}
T'\left(\cos{\dfrac{k}{n}\pi}\right)=0
\end{displaymath}

    なので

    \begin{displaymath}
F'\left(\cos{\dfrac{k}{n}\pi}\right)=f'\left(\cos\dfrac{k}{n}\pi\right)
-T'\left(\cos{\dfrac{k}{n}\pi}\right)=0
\end{displaymath}


    \begin{displaymath}
T_n\left(\cos\dfrac{k}{n}\pi\right)=-1
\end{displaymath}

    のときも同様にして

    \begin{displaymath}
F\left(\cos\dfrac{k}{n}\pi\right)=0\quad かつ
\quad F'\left(\cos\dfrac{k}{n}\pi\right)=0
\end{displaymath}

    となる.

    したがって, $x=\cos{\dfrac{k}{n}\pi}$は方程式$F(x)=0$の2重以上の重解となる. これより, 重解を含めて$F(x)=0$$n$個以上の解を有することになり, こ れは$F(x)$$n-1$次式であることに矛盾する. よって, $F(x)$は恒等的に0であり,

    \begin{displaymath}
f(x)=\dfrac{1}{2^{n-1}} T_n(x)
\end{displaymath}

    となる.
  2. $a\leq x\leq b$の範囲の$x$

    \begin{displaymath}
x=a+\theta (b-a),\quad 0\leq\theta\leq 1
\end{displaymath}

    とおく. このとき,

    \begin{displaymath}
X=\dfrac{2}{b-a} (x-a)-1=2\theta-1
\end{displaymath}

    となるので, $0\leq\theta\leq 1$のとき $-1\leq X\leq 1$である. よって, 求める ものは

    \begin{displaymath}
T_n\left(\dfrac{2}{b-a} (x-a)-1\right)
\end{displaymath}

    をその最高次の項の係数で割って 1 としたものである. ここで, 明らかに $T_n\left(\dfrac{2}{b-a} (x-a)-1\right)$の最高次の項の係数は

    \begin{displaymath}
\left(\dfrac{2}{b-a}\right)^n 2^{n-1}=\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{4}{b-a}\right)^n
\end{displaymath}

    であるから, 求めるものは,

    \begin{displaymath}
2\left({\dfrac{b-a}{4}}\right)^n T_n\left(\dfrac{2}{b-a} (x-a)-1\right)
\end{displaymath}

    である.
  3. 最高次の項の係数が1である多項式で, 区間$a\leq x\leq b$における最大偏位が 最小なものは(2)で求めたものであり, その最大偏位は $2\left(\dfrac{b-a}{4}\right)^n$であった. よって,

    \begin{displaymath}
\dfrac{b-a}{4} < 1
\end{displaymath}

    のときにかぎり, $n$を大きくとればいくらでも小さくできるので, $b-a$が4 より小さいことが必要十分条件である.

注意         $n=3$では $2\left(\dfrac{1}{4}\right)^3>\dfrac{1}{100}$なので 不可能であるが, $n=4$では最大偏位が $2\left(\dfrac{1}{4}\right)^4$ $\dfrac{1}{100}$の間にくる他の四次式をつくることも可能である(たとえば, $y$軸 方向の平行移動で). 解答で考えたのはその中で最大偏位が最小のものである.

例 1.6.4   最高次数の項の係数が$1$である多項式で,かつ$0\le x\le 1$での 最大偏位が $\dfrac{1}{100}$以下となるもののうち最も次数の小さいものを求めよう.

$0\leq x\leq 1$で最大偏位が最小となる最高次の項の係数が 1 である多項式は, (2)において$a=0,\ b=1$を代入して,

\begin{displaymath}
2\left(\dfrac{1}{4}\right)^n T_n (2x-1)
\end{displaymath}

で, その最大偏位は $2\cdot\left(\dfrac{1}{4}\right)^n$である. すると,

\begin{displaymath}
2\cdot\left(\dfrac{1}{4}\right)^n\leq\dfrac{1}{100}\qquad∴\quad 4^n\geq 200
\end{displaymath}

よって, $n=4$が最も次数が低い. ゆえに,

\begin{eqnarray*}
&&2\left(\dfrac{1}{4}\right)^4 T_4 (2x-1)\\
&=&\dfrac{1}{12...
...}\\
&=&x^4-2x^3+\dfrac{5}{4} x^2-\dfrac{1}{4} x+\dfrac{1}{128}
\end{eqnarray*}

これが求める多項式である.


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