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三線座標

南海  重心座標と並んで三角形の幾何の研究などに用いられてきたのが 三線座標である.重心座標との関係でその定義と五心の表現には触れておこう.

三線座標の定義
平面上に $ \bigtriangleup \mathrm{ABC} $ をとる. 平面上の点 $ \mathrm{P} $ から 各辺 $ \mathrm{BC},\ \mathrm{CA},\ \mathrm{AB} $ , またはその延長上に下ろした垂線の長さの比を $ x:y:z $ とする. ただし,内心と点 $ \mathrm{P} $ がその辺直線に関して同じ側にあるときは正,逆の側にあるときは負にとるものとする. 点 $ \mathrm{P} $ は比 $ x:y $ で上にあるべき直線が決まり, その結果,比 $ x:y:z $ で点 $ \mathrm{P} $ は一意に確定する. $ (x,\ y,\ z) $ を点 $ \mathrm{P} $ の三線座標という. 0でない実数 $ u $ に関して, $ (x,\ y,\ z) $ と $ (ux,\ uy,\ uz) $ は同じ点を定める. $ x,\ y,\ z $が長さそのもののときこれを\textbf{絶対三線座標}という.

ここで $ \bigtriangleup \mathrm{PQR} $ の面積を三点 $ \mathrm{P},\ \mathrm{Q},\ \mathrm{R} $ が反時計回りに配置されているとき正,一直線上にあるとき0,逆方向にあるとき負,と定める. $ (x,\ y,\ z) $ が点 $ \mathrm{P} $ の絶対三線座標であるとき, \[ \bigtriangleup \mathrm{PBC}=\dfrac{ax}{2},\ \bigtriangleup \mathrm{PCA}=\dfrac{by}{2},\ \bigtriangleup \mathrm{PAB}=\dfrac{cz}{2} \] となる.よって \[ ax+by+cz=2\bigtriangleup \mathrm{ABC} \] である.

太郎  絶対三線座標では

\begin{displaymath}
\bigtriangleup \mathrm{PBC}=\dfrac{aX}{2},\
\bigtriangleup ...
...A}=\dfrac{bY}{2},\
\bigtriangleup \mathrm{PAB}=\dfrac{cZ}{2}
\end{displaymath}

となる.よって

\begin{displaymath}
\dfrac{aX}{2}+\dfrac{bY}{2}+\dfrac{cZ}{2}
=\bigtriangleup \mathrm{ABC}
\end{displaymath}

である.

また点$\mathrm{P}$の重心座標を$(x,\ y,\ z)$, 三線座標を$(X,\ Y,\ Z)$とすると,

\begin{displaymath}
(x,\ y,\ z)=(aX,\ bY,\ cZ)
\end{displaymath}

が成り立つ.

三角形の五心を三線座標で表すと次のようになる. 重心座標に現れた成分に対する主な計算では,

\begin{displaymath}
\dfrac{\sin2A}{a}=\dfrac{2\sin A\cos A}{2R \sin A}=\dfrac{\c...
...ac{\tan A}{2R \sin A}=\dfrac{1}{2R \cos A}
=\dfrac{\sec A}{2R}
\end{displaymath}

などより

\begin{displaymath}
\begin{array}{lc}
重心&\left(\dfrac{1}{a},\ \dfrac{1}{b},\...
...b(a^2-b^2+c^2)},\ \dfrac{1}{c(a^2+b^2-c^2)}\right)
\end{array}\end{displaymath}

となる.



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