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一般的に考える

南海  その関連を解明するのが次の問題です.その疑問(2)は次の 問題の(1)で解決されます.それから逆に疑問(1)を見直す. やってみてほしい.

定理 8
     二つの二次式

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{ll}
f(x,y)&=x^2+y^2-2ax-2by+c\\
g(x,y)&=x^2+y^2-2px-2qy+r
\end{array}\right.
\end{displaymath}

がある. $f(x,y)=0,\,g(x,y)=0$ で円が定まるとし,その円を $C_f,\ C_g$ とする. このとき $C_f,\ C_g$ は同心円でないとする.
  1. $xy$ 平面の点 $\mathrm{P}$ から $C_f$$C_g$ に接線を引きその接点をそれぞれ $\mathrm{T},\ \mathrm{S}$ とする. $\overline{\mathrm{PT}}=\overline{\mathrm{PS}}$ となる点 $\mathrm{P}$ の軌跡は

    \begin{displaymath}
-2(a-p)x-2(b-q)y+c-r=0
\end{displaymath}

    以下このようにして定まる軌跡を「 $C_f$$C_g$ の根軸」と呼ぶ.

  2. $-1$ でない実数 $k$ に対して, $h_k(x,\ y)=f(x,\ y)+kg(x,\ y)$ とおき, $h_k(x,\ y)=0$ で円が定まるとき,これを $C_k$ とする.二円 $C_f,\ C_k$ の根軸は, 二円 $C_f,\ C_g$ の根軸と一致する.
  3. 逆に,平面上の $C_f,\ C_g$ とは異なる円 $C$$C_f$ との根軸が, 二円 $C_f,\ C_g$ の根軸と一致したとする.このとき円 $C$ の式はある実数 $j,\ k$ によって $h(x,\ y)=jf(x,\ y)+kg(x,\ y)=0$ と表される.

拓生 

証明

  1. 円の中心を $\mathrm{O}_f,\ \mathrm{O}_g$ とし,円の中心と半径を求める.

    \begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
x^2+y^2-2ax-2by+c=(x-a)^2+(y-b)^...
...y^2-2px-2qy+r=(x-p)^2+(y-q)^2-p^2-q^2+r
\end{array} \right.
\end{displaymath}

    よって, $\mathrm{O}_f(a,\ b),\mathrm{O}_g(p,\ q)$ , 半径の二乗は $a^2+b^2-c,\,p^2+q^2-r$ である. $\mathrm{P}(X,\ Y)$ とする.

    \begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{ll}
\overline{\mathrm{PS}}^2&=\over...
...2+(Y-q)^2 \}-(p^2+q^2-r) \\
&=g(X,\ Y)
\end{array} \right.
\end{displaymath}

    よって点 $\mathrm{P}$ $f(X,\ Y)=g(X,\ Y)$ を満たす点である.つまり求める軌跡は,

    \begin{displaymath}
-2(a-p)x-2(b-q)y+c-r=0
\end{displaymath}


  2. \begin{displaymath}
\begin{array}{ll}
h_k(X,\ Y)&=f(X,\ Y)+kg(X,\ Y) \\
&=(x...
...-\dfrac{2(b+kq)}{1+k}y+\dfrac{c+kr}{1+k} \right\}
\end{array} \end{displaymath}

    である.ここで,

    \begin{displaymath}
\begin{array}{ll}
&-2ax+\dfrac{2(a+kp)}{1+k}x-2by+\dfrac{2...
...{1+k}\left\{-2(a-p)x-2(b-q)y+c-r \right\}\\
=&0
\end{array} \end{displaymath}

    である.二円 $C_f,\ C_k$ の根軸は, 二円 $C_f,\ C_g$ の根軸と一致する.
  3. $C$ の式 $h(x,\ y)$

    \begin{displaymath}h(x,\ y)=x^2+y^2-2sx-2ty+u \end{displaymath}

    と置く.題意より二つの根軸:

    \begin{eqnarray*}
-2(s-a)x-2(t-b)y+u-c=0 \\
-2(a-p)x-2(b-q)y+c-r=0
\end{eqnarray*}

    が一致する.よってある実数 $l$ があって,

    \begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
s-a=l(a-p) \\
t-b=l(b-q) \\
u-c=l(c-r)
\end{array} \right.
\end{displaymath}

    つまり

    \begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
s=(l+1)a-lp \\
t=(l+1)b-lq \\
u=(l+1)c-lr
\end{array} \right.
\end{displaymath}

    と表される.よって,

    \begin{displaymath}
h(x,\ y)=(l+1)f(x,\ y)-lg(x,\ y)
\end{displaymath}

    つまり $j=l+1,\ k=-l$ と置けばよい.□

南海  なかなか見事なものだ.これで君の疑問はすべて解決したな.また, 二円が共有点を持つときは,その二点を通る他の円は,従って根軸が共通な円であり,問題の (3)によって,必ずもとの二円によって, $j(一の円)+k(二の円)=0$ と表せる.

拓生  私の疑問(2)が解けました.二円の接点までの距離が等しい点の軌跡 として根軸を定義する.その根軸という考え方に立てば,二円が,二点で交わっているか, 接しているか,離れているかは,無関係なのですね.

南海 なお関連入試問題として,91年東大後期をよく考えておいてほしい.これは,2円の直行する円群は共通の根軸をもつということを意味している.


Aozora Gakuen