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円の束[91東大後期]

問題     

平面上に3つの円 $C_1,\ C_2,\ C_3$ があって, $C_1$$C_2$ は相異なる2点 ${\rm A}$${\rm B}$ で交わり, $C_3$$C_1$ および $C_2$ と互いに直交している.ただし,2つの円がたがいに直交しているとは,2つの円に共通点があって,各共通点におけるそれぞれの円に対する接線が共通点で直交しているときをいう.

  1. $C_3$ の中心は,2点 ${\rm A},\ {\rm B}$ を通る直線上にあることを示せ.
  2. 2点 ${\rm A},\ {\rm B}$ の一方は円 $C_3$ の内側に,他方は円 $C_3$ の外側にあることを示せ.


方針

1.
(1)はとりあえず円の方程式を書いてみよう. 問題の条件を式で表すとたちまち見えてくる.

ところが(2)を式にかいてやろうとすると,なかなか難しい. (1)の結果を使うと,方べきの定理を使うことができる.

2.
(1)も図形的にできないのか. 方べきの定理を駆使し,論証方法を工夫するとできる.


解1
(1)

$C_1,\ C_2,\ C_3$ の中心と半径をそれぞれ ${\rm O}_1(\alpha_1,\ \beta_1),\ {\rm O}_2(\alpha_2,\ \beta_2),\ {\rm O}_3(X,\ Y)$ $r_1,\ r_2,\ r_3$とする. また2つの接点を ${\rm T_1},\ {\rm T_2}$ とする. 三平方の定理より

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
{\rm O_1T_1}^2+{\rm O_3T_1}^2 ={\...
...2T_2}^2+{\rm O_3T_2}^2 ={\rm O_2O_3}^2 \\
\end{array}\right.
\end{displaymath}

が成り立つ.

\begin{displaymath}∴ \quad
\left\{
\begin{array}{l}
(X-\alpha_1)^2+(Y-\beta_...
...(X-\alpha_2)^2+(Y-\beta_2)^2 =r_2^2+r_3^2
\end{array}\right.
\end{displaymath}

つまり

 

\begin{displaymath}
(X-\alpha_1)^2+(Y-\beta_1)^2 -r_1^2+(-1)\{(X-\alpha_2)^2+(Y-\beta_2)^2 -r_2^2\}=0
\end{displaymath}

この式は ${\rm O}_3(X,\ Y)$ が2円 $C_1$$C_2$ の交点を通る直線上にあることを意味している.



(2)

$C_1$と円外の点 ${\rm O_3}$ および ${\rm O_3}$ を通る直線 ${\rm AB}$ に関して方べきの定理を用いる.

\begin{displaymath}
{\rm O_3A}\cdot {\rm O_3B} ={\rm O_3T_1}=r_3^2
\end{displaymath}

よって ${\rm O_3A}\ge r_3$ なら ${\rm O_3B}\le r_3$ ,逆も同様.しかし ${\rm A}$${\rm B}$ は異なる点なので等号は起こらない.
ゆえに2点 ${\rm A},\ {\rm B}$ の一方は円 $C_3$ の内側に,他方は円 $C_3$ の外側にある.□


(1)の解2
$\mathrm{C}_3$の中心を$\mathrm{O}$とする. $\mathrm{O}$から2円 $\mathrm{C}_1,\ \mathrm{C}_2$への接線を $\mathrm{OT}_1,\ \mathrm{OT}_2$とする. $\mathrm{C}_3$$\mathrm{C}_1$ および$\mathrm{C}_2$と互いに直交しているので,接点 $\mathrm{OT}_1,\ \mathrm{OT}_2$はそれぞれ 円$\mathrm{C}_3$上にある.

直線$\mathrm{AO}$が点$\mathrm{B}$を通らず, 円 $\mathrm{C}_1,\ \mathrm{C}_2$とそれぞれ $\mathrm{S}_1,\ \mathrm{S}_2$で交わったとする.

$\mathrm{C}_1,\ \mathrm{C}_2$における方べきの定理から

\begin{eqnarray*}
\mathrm{OT}_1^2&=&\mathrm{OA}\cdot\mathrm{OS}_1\\
\mathrm{OT}_2^2&=&\mathrm{OA}\cdot\mathrm{OS}_2
\end{eqnarray*}

$\mathrm{OT}_1,\ \mathrm{OT}_2$は円$\mathrm{C}_3$の半径なので等しい. この結果 $\mathrm{OS}_1=\mathrm{OS}_2$ となり,異なる2点であることに矛盾した. したがって$\mathrm{C}_3$の中心は,2点 $\mathrm{A}$, $\mathrm{B}$を通る直線上にある.□
吟味

この問題は,一つは2つの円の根軸に関する一般論が背景になっている.これについては『数学対話』−「根軸」を見てほしい.

また2つの解法をつなぐのは,方べきの定理の図形的証明と座標的証明だ.座標で示すのはやや複雑であるが,いちどはやってみておくべきである.


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