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円と円の場合

拓生  結局方法Bでやればいいのですね.

南海  その通り.円と円の場合も次のように考えよう.

例 1.7.5  

$R,\ r,\ a$$0<a<R-r$ を満たす正の定数とする.

$xy$ 平面の二つの円 $C_0\ :\ x^2+y^2=1,\ C_1\ :\ (x-a)^2+y^2=r^2$がある. 定数は条件$a>0,\ a<r-1$を満たしているとする.

$C_1$ 上の一点 $\mathrm{P}$ から $C_0$ にひとつの接線をひき, その延長が再び $C_1$ と交わる点を $\mathrm{Q}$ とする. $\mathrm{Q}$ から $C_0$$\mathrm{PQ}$ とは異なる接線をひき, その延長が再び $C_1$ と交わる点を $\mathrm{R}$ とする. $\mathrm{R}$ から $C_0$$\mathrm{QR}$ とは異なる接線をひき, その延長が再び $C_1$ と交わる点を $\mathrm{S}$ とする.

  1. $C_1$上の点$\mathrm{P}$は, $(-r+a,\ 0)$を除き $\left(\dfrac{r(1-t^2)}{1+t^2}+a,\ \dfrac{2rt}{1+t^2} \right)$と媒介変数表示できることを示せ. また, $\mathrm{P}\left(\dfrac{r(1-t^2)}{1+t^2}+a,\ \dfrac{2rt}{1+t^2} \right)$ $\mathrm{Q}\left(\dfrac{r(1-s^2)}{1+s^2}+a,\ \dfrac{2rs}{1+s^2} \right)$ とするとき,直線 $\mathrm{PQ}$$C_0$ と接するための$t$$s$に関する条件を求めよ.
  2. $\mathrm{S=P}$となるために$t$が満たすべき必要条件を求めよ.
  3. (2)の方程式は少なくとも一つの実数解をもてば恒等式になることを示し. ある点$\mathrm{P}$$\mathrm{S=P}$となれば, 任意の点$\mathrm{P}$$\mathrm{S=P}$となることを示せ.

拓生  やってみます.

解答

(1)

\begin{eqnarray*}
\cos\theta&=&\cos^2 \dfrac{\theta}{2}
-\sin^2 \dfrac{\theta}...
...theta}{2}\cdot2\tan
\dfrac{\theta}{2} \\
&=&\dfrac{2t}{1+t^2}
\end{eqnarray*}

である.

つまり $\tan \dfrac{\theta}{2}=t$によって $\cos \theta=\dfrac{1-t^2}{1+t^2}$ $\sin \theta=\dfrac{2t}{1+t^2}$ と表される. すべての実数に対して, $\dfrac{1-t^2}{1+t^2}\ne -1$なので, 円 $C_1$ 上の点は $(-r+a,\ 0)$ を除いて $\left(\dfrac{r(1-t^2)}{1+t^2},\ \dfrac{2rt}{1+t^2} \right)$ と表される.

$\mathrm{P}\left(\dfrac{r(1-t^2)}{1+t^2}+a,\ \dfrac{2rt}{1+t^2} \right)$ $\mathrm{Q}\left(\dfrac{r(1-s^2)}{1+s^2}+a,\ \dfrac{2rs}{1+s^2} \right)$ のとき直線 $\mathrm{PQ}$ の方程式は


つまり

\begin{displaymath}
(st-1)(x-a)-(s+t)y+r(st+1)=0
\end{displaymath}

したがって直線 $\mathrm{PQ}$ が円 $C_1$ に接するための条件は

\begin{displaymath}
\dfrac{\vert(r-a)st+r+a\vert}{\sqrt{(st-1)^2+(s+t)^2}}=1
\end{displaymath}

ゆえに求める $s,\ t$ の条件は

\begin{displaymath}
\{(r-a)st+r+a\}^2-(st-1)^2-(s+t)^2=0
\end{displaymath}

(2)

\begin{displaymath}
T(s,\,t)=\{(r-a)st+r+a\}^2-(st-1)^2-(s+t)^2
\end{displaymath}

とおく.

\begin{eqnarray*}
T(s,\,t)&=&\{(r-a)st+r+a\}^2-(st-1)^2-(s+t)^2\\
&=&
[\{(r-a)^2-1\}t^2-1]s^2+2(r^2-a^2)ts+(r+a)^2-t^2-1
\end{eqnarray*}

となる.

拓生  $s^2$の係数が0でないことが確認できません.

南海  除外点の考え方で次のようにしてはどうだろうか.

$T(s,\ t)=0$の両辺を$s^2$で割ると

\begin{displaymath}
\left\{(r-a)t+\dfrac{r+a}{s}\right\}^2-\left(t-\dfrac{1}{s}\right)^2-(1+\dfrac{t}{s})^2=0
\end{displaymath}

となる.ここで $\dfrac{1}{s}=0$としたとき

\begin{displaymath}
(r-a)^2t^2-t^2-1=0
\end{displaymath}

となるが,実数$s$に対して $\dfrac{1}{s}\ne 0$なので,

\begin{displaymath}
(r-a)^2t^2-t^2-1\ne 0
\end{displaymath}

つまり $\{(r-a)^2-1\}t^2-1\ne 0$

拓生  わかりました.続けます.

$T(s,\,t)=0$$s$の2次方程式と見たときその2解$s_1,\ s_2$は,

\begin{displaymath}
s_1+s_2=\dfrac{-2(r^2-a^2)t}{\{(r-a)^2-1\}t^2-1},\
s_1s_2=\dfrac{(r+a)^2-t^2-1}{\{(r-a)^2-1\}t^2-1}
\end{displaymath}

である.このとき

\begin{displaymath}
s_1s_2-1=\dfrac{(r+a)^2-t^2-1-\{(r-a)^2-1\}t^2+1}{\{(r-a)^2-1\}t^2-1}
=\dfrac{(r+a)^2-(r-a)^2t^2}{\{(r-a)^2-1\}t^2-1}
\end{displaymath}

なので

\begin{eqnarray*}
(s_1+s_2)^2+(s_1s_2-1)^2
&=&\dfrac{4(r^2-a^2)^2t^2+\{(r+a)^2-(...
...}\\
&=&\dfrac{\{(r+a)^2+(r-a)^2t^2\}^2}{[\{(r-a)^2-1\}t^2-1]^2}
\end{eqnarray*}

したがって

\begin{displaymath}
T(s_1,\,s_2)=0
\end{displaymath}

より

\begin{eqnarray*}
H(t)&=&<(r-a)\{(r+a)^2-t^2-1\}+(r+a)[\{(r-a)^2-1\}t^2-1]>^2\\
&&\quad \quad -\{(r+a)^2+(r-a)^2t^2\}^2
\end{eqnarray*}

である.$H(t)$は因数分解できて,$H(t)=0$

\begin{eqnarray*}
&&(r-a)\{(r+a)^2-t^2-1\}+(r+a)[\{(r-a)^2-1\}t^2-1]\\
&=&\pm\{(r+a)^2+(r-a)^2t^2\}
\end{eqnarray*}

と同値である.

これが$\mathrm{S=P}$となるために$t$が満たすべき必要条件である.

(3)

$H(t)$を整理する.


ところが$0<r-a-1$のもとでは

\begin{displaymath}
r-a+1>0,\ r+a+1>0,\ r-a-1>0,\ r+a-1>0
\end{displaymath}

なので,

\begin{displaymath}
\{(r-a+1)t^2+r+a+1\}\{(r-a-1)t^2+r+a-1\}=0
\end{displaymath}

は実数解をもたない.

ところが少なくとも一つ$\mathrm{S=P}$となる点$\mathrm{P}$が存在した. ゆえに(2)の条件式は恒等式であり, $\{(r+a)(r-a)-(r+a)-(r-a)\}\{(r+a)(r-a)+(r+a)+(r-a)\}=0$である. $(r+a)(r-a)+(r+a)+(r-a)>0$なので

\begin{displaymath}
(r+a)(r-a)-(r+a)-(r-a)=0
\end{displaymath}

である.

この条件は

\begin{displaymath}
\dfrac{1}{r+a}+\dfrac{1}{r-a}=1
\end{displaymath}

あるいは

\begin{displaymath}
2r=r^2-a^2
\end{displaymath}

とも書ける.

このとき$(-r+a,\ 0)$を除く任意の点$\mathrm{P}$に対して(2)の条件式が成立し,$\mathrm{S=P}$となる.

$\mathrm{P}$が連続的に変化すれば$\mathrm{S}$も連続的に変化する. ゆえに$(-r+a,\ 0)$を除く任意の点$\mathrm{P}$に対して$\mathrm{S=P}$となるなら, $\mathrm{P}$$(-r+a,\ 0)$のときも$\mathrm{S=P}$となる.□

南海  $\mathrm{P}$$(-r+a,\ 0)$のときは,上のようにいってもよいし,個別に調べてもよい.

また,「パスカルの定理」で勉強したように$t$を無限遠点を加えた射影直線にとれば, 先の論証が$\mathrm{P}$$(-r+a,\ 0)$のときも含んで成り立つこともわかる.

以下,一つの除外点については特に断る必要はない.


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