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パップスの定理のユークリッド平面上での座標的証明

南海  パップスの定理をいろんな観点から証明しよう.

伍郎  いろんな観点というと, ベクトル,座標,図形の論証,などですか.

南海  これは実は前に考えた「パスカルの定理」からの帰結でもある. これも紹介しよう.

まず,普通にユークリッド平面, つまり高校生が毎日見ている$xy$平面などで,考えていこう.

ベクトルでやるのと,座標でやるのは本質的には同じことだ. ただ,ユークリッド平面で考える以上, $l_1,\ _2$が平行な場合は別に考えなければならない.

$l_1,\ _2$が平行な場合,座標ではどのようになるか.

伍郎  図のように$xy$平面においてよい. 相似な拡大や縮小をしても一般性は失われないので, $l_1,\ _2$の間の距離は1とする.
$l_i$上に点 $\mathrm{A}_i,\ \mathrm{B}_i,\ \mathrm{C}_i$の 座標を,

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
\mathrm{A}_1(0,\ a_1),\ \mathrm{B}_1(0,\ ...
... b_2) ,\
\mathrm{C}_2(1,\ c_2)\\
0<a_2<b_2<c_2
\end{array}\end{displaymath}

とする. 直線 $\mathrm{A}_1\mathrm{B}_2$と直線 $\mathrm{A}_2\mathrm{B}_1$ の交点を$\mathrm{P}_1$, 直線 $\mathrm{A}_2\mathrm{B}_3$と直線 $\mathrm{A}_3\mathrm{B}_2$ の交点を$\mathrm{P}_2$, 直線 $\mathrm{A}_3\mathrm{B}_1$と直線 $\mathrm{A}_1\mathrm{B}_3$ の交点を$\mathrm{P}_3$とする.

このとき3点 $\mathrm{P}_1,\ \mathrm{P}_2,\ \mathrm{P}_3$ は一直線上にある.

そこで, $\mathrm{A}_1\mathrm{B}_2$ $\mathrm{A}_2\mathrm{B}_1$ の交点$\mathrm{P}_1$$(X,\ Y)$とおく. $\mathrm{A}_1,\ \mathrm{P}_1,\ \mathrm{B}_2$ $\mathrm{A}_2,\ \mathrm{P}_1,\ \mathrm{B}_1$が ともに一直線上にあるので, $\overrightarrow{\mathrm{A}_1\mathrm{P}_1}\parallel
\overrightarrow{\mathrm{A}_1\mathrm{B}_2}$ $\overrightarrow{\mathrm{B}_1\mathrm{P}_1}\parallel
\overrightarrow{\mathrm{B}_1\mathrm{A}_2}$である. 平行条件を成分で書いて

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
(b_2-a_1)X=Y-a_1\\
(a_2-b_1)X=Y-b_1
\end{array}\end{displaymath}

を得る.これから

\begin{displaymath}
\mathrm{P}_1
\left(
\dfrac{b_1-a_1}{b_2-a_2+b_1-a_1},\
\dfrac{b_1b_2-a_1a_2}{b_2-a_2+b_1-a_1}
\right)
\end{displaymath}

同様に

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
\mathrm{P}_2
\left(
\dfrac{c_1-b_1}{c_2...
...
\dfrac{a_1a_2-c_1c_2}{a_2-c_2+a_1-c_1}
\right)
\end{array}\end{displaymath}

である.

伍郎  これを計算するのですか.

南海  もうひとがんばり

伍郎  したがって

\begin{eqnarray*}
\overrightarrow{\mathrm{P}_1\mathrm{P}_2}
&=&\dfrac{1}{(b_2-a_...
...-
\{a_1a_2(b_1+b_2)+b_1b_2(c_1+c_2)+c_1c_2(a_1+a_2)\}
\biggr)\\
\end{eqnarray*}

南海  $\overrightarrow{\mathrm{P}_2\mathrm{P}_3}$は, $\overrightarrow{\mathrm{P}_1\mathrm{P}_2}$において

\begin{displaymath}
a\quad \to \quad b\quad \to\quad c\quad \to\quad a
\end{displaymath}

と順に置きかえたものになる.

伍郎  あっ,そうか.

\begin{eqnarray*}
&&(a_1b_2-a_2b_1)+(b_1c_2-b_2c_1)+(c_2a_1-c_1a_2)\\
&&a_1a_2(...
...quad \quad -
\{a_1a_2(b_1+b_2)+b_1b_2(c_1+c_2)+c_1c_2(a_1+a_2)\}
\end{eqnarray*}

はいずれもこの変換で不変である.したがって

\begin{eqnarray*}
\overrightarrow{\mathrm{P}_2\mathrm{P}_3}
&=&\dfrac{1}{(c_2-b_...
...-a_1}{a_2-c_2+a_1-c_1}
\overrightarrow{\mathrm{P}_1\mathrm{P}_2}
\end{eqnarray*}

南海  というわけだ.

$l_1,\ l_2$が平行でない場合,これを参考にベクトルでやってみよう.

$l_1,\ l_2$の交点を$\mathrm{O}$とし,$i=1,\ 2$に対して,

$\overrightarrow{\mathrm{OA}_i}$方向の長さ1のベクトルを $\overrightarrow{e_i}$とする. また

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
\overrightarrow{\mathrm{OA}_i}=a_i\overrig...
...rrightarrow{\mathrm{OC}_i}=c_i\overrightarrow{e_i}
\end{array}\end{displaymath}

とする.


\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OP}_1}
=\alpha\overrightarrow{e_1}+\beta\overrightarrow{e_2}
\end{displaymath}

とおく.

伍郎  ここからは私のはじめのやり方でと 先の座標の場合をあわせると,できそうです.

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OP}_1}=
\dfrac{\alpha}{a_1}\overrigh...
...athrm{OA}_1}+
\dfrac{\beta}{b_2}\overrightarrow{\mathrm{OB}_2}
\end{displaymath}

$\mathrm{P}_1$は直線 $\mathrm{A}_1\mathrm{B}_2$上にあるので

\begin{displaymath}
\dfrac{\alpha}{a_1}+\dfrac{\beta}{b_2}=1
\end{displaymath}

同様に

\begin{displaymath}
\dfrac{\alpha}{b_1}+\dfrac{\beta}{a_2}=1
\end{displaymath}

これを解いて

\begin{displaymath}
\alpha=\dfrac{a_1b_1(b_2-a_2)}{b_1b_2-a_1a_2},\
\beta=\dfrac{a_2b_2(b_1-a_1)}{b_1b_2-a_1a_2}
\end{displaymath}

よって

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OP}_1}=
\dfrac{a_1b_1(b_2-a_2)}{b_1b...
..._1+
\dfrac{a_2b_2(b_1-a_1)}{b_1b_2-a_1a_2}\overrightarrow{e}_2
\end{displaymath}

後は文字を $a\to b \to c\to a$の順に置きかえることで,

\begin{eqnarray*}
\overrightarrow{\mathrm{OP}_1}&=&
\dfrac{a_1b_1(b_2-a_2)}{b_1b...
...e}_1+
\dfrac{c_2a_2(a_1-c_1)}{a_1a_2-c_1c_2}\overrightarrow{e}_2
\end{eqnarray*}

が得られる.

これから

\begin{eqnarray*}
\overrightarrow{\mathrm{P}_1\mathrm{P}_2}
&=&\dfrac{b_1b_2}{(b...
..._2-(b_1b_2c_2+c_1c_2a_2+a_1a_2b_2)\}\overrightarrow{e_2}\biggr\}
\end{eqnarray*}

$\overrightarrow{\mathrm{P}_2\mathrm{P}_3}$はこの式において, 文字を $a\to b \to c\to a$の順に置きかえたものである.

ところが $b_1c_1c_2+c_1a_1a_2+a_1b_1b_2$ $b_1b_2c_1+c_1c_2a_1+a_1a_2b_1$ $c_1c_2b_2+a_1a_2c_2+b_1b_2a_2$ $b_1b_2c_2+c_1c_2a_2+a_1a_2b_2$ は,いずれもこの置きかえで不変である.

よって

\begin{eqnarray*}
\overrightarrow{\mathrm{P}_2\mathrm{P}_3}
&=&\dfrac{c_1c_2}{(c...
...{b_1b_2(a_1a_2-c1c_2)}
\overrightarrow{\mathrm{P}_1\mathrm{P}_2}
\end{eqnarray*}

よって,3点 $\mathrm{P}_1,\ \mathrm{P}_2,\ \mathrm{P}_3$ は同一直線上にある.

南海  そう.それでベクトルによる証明が出来た.

伍郎  $l_1$$l_2$が平行な場合と式はそんなに変わりません. むしろベクトルを使った場合の方が簡単です.

南海  ベクトルで位置を表すのは, 斜交座標と考えれば,座標の複雑さでいえば, 直交座標の$x$軸上と$y$軸上にそれぞれ3点が並んでいるようなものだから, それほど複雑にはならない.

伍郎  そうか.ベクトルのいいところですね.


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