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四面体の重心と平行六面体への埋め込み

南海  三角形には「五心」と呼ばれる五種類の点がある.

拓生  重心,外心,内心,垂心,傍心 の五種です.

南海  そのうち,一般の四面体$\mathrm{ABCD}$にもあるのは.まず重心はどうか.

拓生  4頂点の位置ベクトルを $\overrightarrow{a},\ \overrightarrow{b},\ \overrightarrow{c},\ \overrightarrow{d}$として すぐに表せるのは重心 $\dfrac{1}{4}(\overrightarrow{a}+\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c}+\overrightarrow{d})$ だけです.

南海  重心は,正確には物理学の重心であることを示さなければならないが, そのためにはモーメントの考え方が必要だ.それは数学のなかではできない.数学的にいえば,重心は頂点の位置ベクトルの平均として定まる点だ.

頂点$\mathrm{A}$と対面の三角形の重心を$3:1$に内分する点は

\begin{displaymath}
\dfrac{3}{4}\left\{\dfrac{1}{3}(\overrightarrow{b}+\overrig...
...{a}+\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c}+\overrightarrow{d})
\end{displaymath}

となる. これは4つの頂点に関して対称な形なので,他の頂点と対面の重心を結ぶ線分を同じ比率で内分する点も, この点になる.つまり, 頂点と対面の重心を結ぶ4本の線分はこの1点で交わる.これが重心だ. または,四面体では,相対する辺の中点を結ぶ線分は1点で交わる,その交点が重心である,と定義してもよい.

拓生  $\mathrm{AB}$の中点と$\mathrm{CD}$の中点を結ぶ線分の中点の位置ベクトルは

\begin{displaymath}
\dfrac{\dfrac{\overrightarrow{a}+\overrightarrow{b}}{2}
+\...
...{a}+\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c}+\overrightarrow{d})
\end{displaymath}

となり,これは $\mathrm{A},\ \mathrm{B},\ \mathrm{C},\ \mathrm{D}$で対称なので その他についても同様で,相対する辺の中点を結ぶ線分の中点が重心に一致する.

南海  ここで四面体$\mathrm{ABCD}$で,各頂点 $\mathrm{A},\ \mathrm{B},\ \mathrm{C},\ \mathrm{D}$ と,それらの重心に関する対称点を $\mathrm{A'},\ \mathrm{B'},\ \mathrm{C'},\ \mathrm{D'}$とする. これら8点でできる図形はどのようなものか.

拓生  基準点を重心にとり,4頂点 $\mathrm{A},\ \mathrm{B},\ \mathrm{C},\ \mathrm{D}$の位置ベクトルを $\overrightarrow{a},\ \overrightarrow{b},\ \overrightarrow{c},\ \overrightarrow{d}$とすると,

\begin{displaymath}
\overrightarrow{a}+\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c}+\overrightarrow{d}=0
\end{displaymath}

で, $\mathrm{A'},\ \mathrm{B'},\ \mathrm{C'},\ \mathrm{D'}$の位置ベクトルは $-\overrightarrow{a},\ -\overrightarrow{b},\ -\overrightarrow{c},\ -\overrightarrow{d}$となる.


平行六面体らしいので確認してみます.

\begin{eqnarray*}
\overrightarrow{\mathrm{AC'}}&=&-\overrightarrow{c}-\overrigh...
...ow{d}+\overrightarrow{b}=-\overrightarrow{c}-\overrightarrow{a}
\end{eqnarray*}

つまり

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{AC'}}=\overrightarrow{\mathrm{D'B}}=
\overrightarrow{\mathrm{CA'}}=\overrightarrow{\mathrm{B'D}}
\end{displaymath}

他も同様なので確かに平行六面体に埋め込まれています. 四面体は重心を中心とする平行六面体に埋め込まれるのですね.



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