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四面体の外心と内心

南海  外心,内心はどうだろうか.

拓生  外接球は,四面体を包む大きい球の半径をだんだんと小さくしていき, 頂点にぶつかるたびに少し動かしていけば,最後に4頂点が乗った球が出来そうです. 内接球も,四面体の中に含まれる小さい球の半径を大きくしていき, 面に接するたびに少し動かしていけば,最後に4面に接する球が出来そうです. 両方とも存在するようですが.

南海  重心のように明示的に書くのは簡単ではないが,存在そのものを図形的に示すことはできる. 考えてみよう.

定理 1
四面体$\mathrm{ABCD}$には外接球と内接球が存在する.

南海  外心とは,どんなものか.

拓生  各頂点への距離が等しい点です. 空間にある2点から距離の等しい点は,2点を結ぶ線分の 垂直二等分平面です.これをもとにすればできそうですか.

証明

2頂点 $\mathrm{A},\ \mathrm{C}$の中点を$\mathrm{M}$とし, $\mathrm{M}$を通り直線$\mathrm{AC}$に垂直な平面$\alpha$を考える. $\alpha$は2点 $\mathrm{A},\ \mathrm{C}$からの距離が等しい点の集合である.

$\bigtriangleup \mathrm{ABC}$の外心を$\mathrm{E}$とし, $\mathrm{E}$をとおり $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$に垂直な直線を$l$とする. $\bigtriangleup \mathrm{ACD}$の外心を$\mathrm{F}$とし, $\mathrm{F}$をとおり $\bigtriangleup \mathrm{ACD}$に垂直な直線を$m$ とする. $l$上の点は3点 $\mathrm{A},\ \mathrm{B},\ \mathrm{C}$から等距離にあるので,$l$は平面$\alpha$上にある. $m$上の点は3点 $\mathrm{A},\ \mathrm{C},\ \mathrm{D}$から等距離にあるので,$m$は平面$\alpha$上にある.

$\bigtriangleup \mathrm{ABC}$ $\bigtriangleup \mathrm{ACD}$平行でないので$l$$m$も平行でない.

ゆえに$l$$m$は平面$\alpha$上で交わる.交点を$\mathrm{O}$とすれば,$\mathrm{O}$は4頂点から 等距離にあり,四面体の外心である.


内心も同様に考えます.一般に平行でない2つの平面に対して, 2平面への距離が等しい点の集合は2つの平面になります. これは図形的にも明らかですが,座標でも示せます.つまり2つの平面を

\begin{displaymath}
ax+by+cz+d=0,\ \quad a'x+b'y+c'z+d'=0
\end{displaymath}

とする.点と平面の距離の式から,等距離にある点は

\begin{displaymath}
\dfrac{ax+by+cz+d}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}=\pm\dfrac{a'x+b'y+c'z+d}{\sqrt{{a'}^2+{b'}^2}+{c'}^2}
\end{displaymath}

を満たす点で,これが2つの平面になることは明らか. そこで $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$ $\bigtriangleup \mathrm{ACD}$から等距離にある点からなる 平面のうち四面体の内部を通るものを$\alpha$ $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$ $\bigtriangleup \mathrm{ADB}$から等距離にある点からなる 平面のうち四面体の内部を通るものを$\beta$ $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$ $\bigtriangleup \mathrm{BCD}$から等距離にある点からなる 平面のうち四面体の内部を通るものを$\gamma$とする. $\alpha$$\beta$の交直線$l$が平面$\gamma$と交わる点を$\mathrm{I}$とすると,確かに$\mathrm{I}$ は4つの面と等距離にある.これが内心である.□



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