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直辺四面体

南海  そこで問題は垂心だ.実は四面体では垂心は存在するとはかぎらない. 四面体に垂心が存在するための必要十分条件が,京大の問題の条件(i),つまり対辺直交なのだ.

四面体$\mathrm{ABCD}$で,各頂点から対面への4本の垂線が1点で交わるとき, その交点を四面体$\mathrm{ABCD}$の垂心という.すぐにわかるが,4本の垂線のうち3本が1点で交われば 他の1垂線も同じ点で交わる.これも含めて,次の問題を考えてほしい.

定理 2

次の各命題

  1. 四面体$\mathrm{ABCD}$に垂心が存在する.

  2. \begin{displaymath}
\mathrm{AB}\bot\mathrm{CD},\
\mathrm{AC}\bot\mathrm{BD},\
\mathrm{AD}\bot\mathrm{BC}
\end{displaymath}


  3. \begin{displaymath}
\overline{\mathrm{AB}}^2+\overline{\mathrm{CD}}^2=
\over...
...{DA}}^2=
\overline{\mathrm{CA}}^2+\overline{\mathrm{BD}}^2
\end{displaymath}

  4. 相対する辺の中点を結ぶ3本の線分の長さが等しい.
は同値である. ■

証明

(1)
(i)なら(ii)を示す. 垂心を$\mathrm{H}$とする.垂心の定義から

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{AH}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{B...
...errightarrow{\mathrm{CH}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AD}}=0
\end{displaymath}

である.これから

\begin{eqnarray*}
&&\overrightarrow{\mathrm{AH}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{A...
... \overrightarrow{\mathrm{AD}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}
\end{eqnarray*}

よって(ii)である.
(2)
(ii),(iii),(iv)の同値性を示す.

\begin{eqnarray*}
(\mathrm{iii})&\iff&
\overline{\mathrm{AB}}^2+\overline{\m...
...w{\mathrm{AD}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}
\ \iff\ (ii)
\end{eqnarray*}

同様に

\begin{eqnarray*}
(\mathrm{iv})
&\iff&
\left\vert\dfrac{1}{2}\overrightarr...
...w{\mathrm{AD}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}
\ \iff\ (ii)
\end{eqnarray*}

(3)
(ii)なら(i)を示す. 四面体ABCDに対して外心Oをとり,点Hを

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OH}}
=\dfrac{1}{2}\left(
\over...
...ghtarrow{\mathrm{OC}}+
\overrightarrow{\mathrm{OD}}\right)
\end{displaymath}

で定める.このとき

\begin{eqnarray*}
\overrightarrow{\mathrm{AH}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{BC}...
...-\left\vert\overrightarrow{\mathrm{OB}}\right\vert^2
\right\}
\end{eqnarray*}

対辺が直交するので $\overrightarrow{\mathrm{AD}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{BC}}=0$. また点Oは外心なので OB=OC . よって

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{AH}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{BC}}=0
\end{displaymath}

同様に $\overrightarrow{\mathrm{AH}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{BD}}=0$も成り立ち, AHは平面BCDと直交している. 対称性から,BHが平面ACDと直交していることなどが示され, 点Hは垂心の条件を満たす.つまり四面体ABCDに垂心が存在する.

南海  この証明の最後の部分から,直辺四面体においては その外心をO,重心をG,垂心をHとすれば

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OG}}=\dfrac{1}{4}\left(
\overrigh...
...ightarrow{\mathrm{OC}}+
\overrightarrow{\mathrm{OD}}\right)
\end{displaymath}

となり,3点O,G,Hは一直線上にありGはOHの中点である. この直線を四面体ABCDのオイラー線という.

さて(i)と(ii)の同値性は次のように,図形の論証としても出来る. これは大切であるからここで紹介しよう.


(i)と(ii)の同値性の図形的証明

(1)
(i)ならば(ii)を示す.

記号は上の証明で定めたものを使う. 四面体$\mathrm{ABCD}$に垂心が存在するので 頂点$\mathrm{A}$から対面への垂線と 頂点$\mathrm{B}$から対面への垂線は交わる. その結果,辺$\mathrm{AB}$と頂点$\mathrm{A}$から対面への垂線および 頂点$\mathrm{B}$から対面への垂線は同一平面$\alpha$上にある.

頂点$\mathrm{A}$から対面への垂線は, $\bigtriangleup \mathrm{BCD}$に垂直なので 特に$\mathrm{CD}$と直交する. 頂点$\mathrm{B}$から対面への垂線は, $\bigtriangleup \mathrm{ACD}$に垂直なので 特に$\mathrm{CD}$と直交する. ゆえに$\alpha$$\mathrm{CD}$は直交する.辺$\mathrm{AB}$は平面$\alpha$上にある.

\begin{displaymath}
∴\quad \mathrm{AB}\bot\mathrm{CD}
\end{displaymath}

他も同様.よって四面体$\mathrm{ABCD}$は直辺四面体である.
(2)
(ii)ならば(i)を示す. AからBCD平面への垂線の足を$\mathrm{H}_1$とする. $\mathrm{AH}_1\bot 平面\mathrm{BCD}$より $\mathrm{AH}_1\bot \mathrm{CD}$である. $\mathrm{AB}\bot\mathrm{CD}$なので, $平面\mathrm{ABH}_1\bot\mathrm{CD}$である. 同様に BからACD平面への垂線の足を$\mathrm{H}_2$とすると, $平面\mathrm{ABH}_2\bot \mathrm{CD}$である.

$平面\mathrm{ABH}_1$ $平面\mathrm{ABH}_2$は直線ABを含み, かつCDと直交するので一致する. よって$\mathrm{AH}_1$$\mathrm{BH}_2$は交わる. 同様に C,Dから対辺への垂線の足を $\mathrm{H}_3,\ \mathrm{H}_4$とすると, $\mathrm{AH}_1$$\mathrm{CH}_3$$\mathrm{DH}_4$も交わり, 交点はすべて$\mathrm{AH}_1$上にある.

AをBに代えることで$\mathrm{BH}_2$$\mathrm{AH}_1$$\mathrm{CH}_3$$\mathrm{DH}_4$も交わり, 交点はすべて$\mathrm{BH}_1$上にある.

よって$\mathrm{CH}_3$$\mathrm{DH}_4$$\mathrm{AH}_1$$\mathrm{BH}_1$の交点を通り4垂線は1点で交わる.

系 1
     直辺四面体ABCDの垂心をHとする.
  1. 直線AHと $\bigtriangleup \mathrm{BCD}$の交点$\mathrm{H}_1$ $\bigtriangleup \mathrm{BCD}$の垂心である.
  2. $\bigtriangleup \mathrm{ACD}$の頂点Aから対辺CDに降ろした垂線の足と, $\bigtriangleup \mathrm{BCD}$の頂点Bから対辺CDに降ろした垂線の足は 一致する.この足を共通垂線の足という.  ■

拓生  AHは $\bigtriangleup \mathrm{BCD}$と直交するので特にCDと直交する. ABもCDと直交するので,AHはABをとおりCDに直交する平面上にある. $\mathrm{BH}_1$もこの平面上にあるので, その結果 $\mathrm{BH}_1\bot CD$となり,同様に $\mathrm{CH}_1\bot BD$ も示され,$\mathrm{H}_1$ $\bigtriangleup \mathrm{BCD}$の垂心である.

$\bigtriangleup \mathrm{ACD}$の頂点Aから対辺CDに降ろした垂線も, $\bigtriangleup \mathrm{BCD}$の頂点Bから対辺CDに降ろした垂線も, ABをとおりCDに直交する平面上にある. よってその足はこの平面とCDの交点であり,同一の点である.

系 2
     直辺四面体ABCDの外心をOとする.

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OA}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OB...
...\overrightarrow{\mathrm{OB}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OC}}
\end{displaymath}

が成りたつ.■

拓生  対辺直交なので

\begin{displaymath}
(\overrightarrow{\mathrm{AB}}\bot
(\overrightarrow{\mathrm...
...(\overrightarrow{\mathrm{OD}}-\overrightarrow{\mathrm{OC}})=O
\end{displaymath}

これから

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OA}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OC...
...\overrightarrow{\mathrm{OB}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OC}}
\end{displaymath}

他も同様である.


南海  直辺四面体を埋め込む平行六面体はどのようなものか.

拓生  平行六面体の対面の対角線が,四面体の対辺となりそれが直交するのだから, 平行六面体の隣り合う辺の長さが等しい. これがいずれについても言えるので, その平行六面体はすべての辺の長さが等しい平行六面体(等辺長六面体)です.

     6面が辺長の等しいひし形から出来ています.

南海  逆に,辺長の等しいひし形を,同じ形のもの2枚ずつ用意し, それで平行六面体を作ると, そこから直辺四面体が得られる.


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