三角形ABCにおいて,各辺の中点の3点, 各頂点から対辺への垂線の足3点, 各頂点と垂心の中点3点のあわせて9点を通る円が存在する. これを九点円という. 外接円の半径をとすると, 九点円の半径はであり,中心は外心と垂心の中点である.これは入試問題にもあります. それは『九点円の不思議』にあります.
この『九点円の不思議』に書かれていることは, 垂心のある四面体,直辺四面体に拡張されるのでしょうか.
南海 フォイエルバッハの定理に相等するものについては知らない.今後の課題としておこう. その前にそもそも九点円に対応するものがあるのか,が問題だ. これについては次のことが知られている. 『幾何学大辞典』第二巻(岩田至康編,182ページ)に載っている.
南海 第1種の十二点球を各面で切ったものは,その面の九点円そのものであるから, それぞれの面の垂心と頂点の中点3点,合計12点も通り,24点球ともいわれることもある. 『幾何学大辞典』には図形の論証とベクトルを用いた証明の概略が載っている.
拓生 直辺四面体の定理ですね.
南海 そうだ. その証明で論証上必要なところだけを取り出せば, 一般の四面体の定理にすることが出来る. 滋賀県彦根東高校の高校生四人がそれを考えた. それが雑誌『初等数学』2012年1月号に載っている. 『幾何学大辞典』にも,「(ii)はそのまま次元の場合に拡張される」と書いてある.
『九点円の不思議』の最初の部分,九点円の存在証明を踏まえ, (i),(ii)を証明しよう. その上で,次元の一般の四面体の場合で定理を記述し, 証明しよう.
拓生 まず(i)をやってみます. この場合,12点を通る球があるとし, 四面体の外心,その球の中心,垂心の3点を に 正射影すれば,その球の中心の射影が の 九点円の中心であるはずで,それは三角形の外心と垂心の中点です.
ですから12点球の中心も四面体の外心と垂心の中点, つまり四面体の重心であろうと推測されます. そこで,重心と辺の中点との距離を調べました.
定理3(i)証明 外接球の半径を,外心をOとし,垂心をHとする. であった.さらにOとHの中点は四面体ABCDの重心Gである. 辺ABの中点とGの距離は
よってこの6点はGを中心とする球面上にある. この球面と で定まる平面との共通部分は の各辺の中点を通る円である. つまり の九点円である. 九点円はその三角形の各頂点から対辺への垂線の足を通る. 系1によって共通垂線の足は三角形の各頂点から対辺への垂線の足 であるから,この球はこれら6個の共通垂線の足も通る. □
南海
この球の半径が
拓生 次に(ii)に進みます. 九点円の場合からの推測で, 頂点Aと垂心Hをに内分する点と の重心との中点が球の中心ではないかと考えました. つまり次のように九点円の証明を真似ました.
定理3(ii)証明
頂点Aと垂心Hをに内分する点と
の重心との中点をEとする.
Aから への垂線の足を とすると,球の直径が であり, 垂心の定義から なので,もこの球面上にある. 以上から,各4点ずつ12個の点はEを中心とする半径の球面上にある. □
南海 平面三角形の場合の九点円からの自然な拡張になっているのは どちらか.
拓生 証明の方法からも(ii)の方です.