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$n$次元$n+1$面体

南海  これを$n$次元の場合に拡張してみよう.

$n$次元のユークリッド空間で考えよう. 実数$\mathbb{R}$$n$個の組 $(a_1,\ a_2,\ \cdots,\ a_n)$で点が定まると考えるのだ. ここに$n+1$個の点 $\mathrm{A}_1,\ \mathrm{A}_2,\ \cdots,\ \mathrm{A}_{n+1}$があるとする. この$n+1$個の識別と座標成分の識別を明確にするときは,次のように書く.

\begin{displaymath}
A_i=({a_1}^i,\ {a_2}^i,\ \cdots,\ {a_n}^i)\ (i=1,\ 2,\ \cdots,\ n+1)
\end{displaymath}

拓生  上につけるのですね. これら$n+1$個の点は,同じ平面上にあったりしてはいけないですね.

南海  これら$n+1$個の点のどの3点も同一直線上にはないとする. これを一般の位置にあるという.

拓生  $n+1$面体でも重心Gは,

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OG}}
=\dfrac{1}{n+1}\sum_{i=1}^{n+1}\overrightarrow{\mathrm{OA}_i}
\end{displaymath}

で定義される.重心は物理の概念ですから,数学としてはこれで定義する.

しかし外心の存在は明らかではないです. 2011年の京都大学で外心の存在を示せという問題が出ました. 4通りの解答を学びました.

南海  解の3を使うと数学的帰納法で出来ないか.

拓生  確かに.

外心の存在証明

$n\ge2$とし, $n+1$個の点 $\mathrm{A}_1,\ \mathrm{A}_2,\ \cdots,\ \mathrm{A}_{n+1}$が一般の位置にあるとする. これらの点から等距離にある点が存在することを,$n$に関する数学的帰納法で示す.

$n=2$のときは三角形の外心である.

$n$のとき成立とする.$n+1$のときの成立を示す.$n+1$次元空間で考える. 座標は先と同様とする.

数学的帰納法の仮定から, $n+2$個の点 $\mathrm{A}_1,\ \mathrm{A}_2,\ \cdots,\ \mathrm{A}_{n+1},\ \mathrm{A}_{n+2}$のうち, $n+1$個の点 $\mathrm{A}_1,\ \mathrm{A}_2,\ \cdots,\ \mathrm{A}_{n+1}$ から等距離$r$にある点は存在する.その点を $\mathrm{O}(o_1,\ o_2,\ \cdots,\ o_{n+1})$とする. 任意の実数$l$に対して,点 $\mathrm{A}_1,\ \mathrm{A}_2,\ \cdots,\ \mathrm{A}_{n+1}$は方程式

\begin{displaymath}
\sum_{k=1}^{n+1}(x_k-o_k)^2-r^2=0
\end{displaymath}

を満たす. また$n+1$個の点 $\mathrm{A}_1,\ \mathrm{A}_2,\ \cdots,\ \mathrm{A}_{n+1}$で定まる $n+1$次元空間における$n$次元の平面の方程式を $f(x_1,\ \cdots,\ x_{n+1})=0$とおく. $n+1$個の点 $\mathrm{A}_1,\ \mathrm{A}_2,\ \cdots,\ \mathrm{A}_{n+1}$は方程式

\begin{displaymath}
\sum_{k=1}^{n+1}(x_k-o_k)^2-r^2+lf(x_1,\ \cdots,\ x_{n+1})=0
\quad \cdots\maru{2}
\end{displaymath}

を満たす. $\mathrm{A}_{n+2}$ $f(x_1,\ \cdots,\ x_{n+1})=0$を満たさない. よって $f({a_1}^1,\ \cdots,\ {a_{n+1}}^{n+2})\ne 0$である.そこで$l$

\begin{displaymath}
l=-\dfrac{\displaystyle \sum_{k=1}^{n+1}({a_k}^{n+2}-o_k)^2-r^2}{f({a_1}^1,\ \cdots,\ {a_{n+1}}^{n+2})}
\end{displaymath}

で定める.この$l$に対して方程式$\maru{2}$は, $n+2$個の点 $\mathrm{A}_1,\ \mathrm{A}_2,\ \cdots,\ \mathrm{A}_{n+1},\ \mathrm{A}_{n+2}$ を通る球の方程式となる.これを平方完成しなおすことにより, これらの点から等距離にある点の存在が確定する. □

$n$次直辺四面体


南海  $n+1$面体 $\mathrm{A}_1\mathrm{A}_2\cdots\mathrm{A}_{n+1}$の外心をOとする. 垂心Hとは 直線 $\mathrm{A}_i\mathrm{H}$$\mathrm{A}_i$を除く他の$n$個の点で張られる 部分空間と直交する,つまりそれを構成するすべてのベクトルと直交することとする.

垂心が存在すれば$n=3$のときと同様に,すべて異なる任意の $i,\ j,\ p,\ qは$に対して

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{A}_i\mathrm{A}_j}\cdot
\overrightarrow{\mathrm{A}_p\mathrm{A}_q}=0
\end{displaymath}

となる.

拓生  逆にこのとき,点Hを

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OH}}
=\dfrac{1}{n-1}\sum_{i=1}^{n+1}\overrightarrow{\mathrm{OA}_i}
\end{displaymath}

で定めると,番号$j$と,$j$でなく互いに異なる$p$$q$に対して

\begin{eqnarray*}
&&\overrightarrow{\mathrm{A}_j\mathrm{H}}\cdot
\overrightarr...
..._j}\cdot
\overrightarrow{\mathrm{A}_p\mathrm{A}_q}) \right\}=0
\end{eqnarray*}

となり,このHが垂心であることがわかります.

$3(n+1)$点球


拓生  すると,九点円の一般化も形式的にやれます.

南海  その前に(ii)を一般化して定式化してほしい.

拓生  はい.


$n$次元空間に$n+1$面体 $\mathrm{A}_1\mathrm{A}_2\cdots\mathrm{A}_{n+1}$がある. その外心をO,外接球の半径を$R$とする.その垂心が存在するとし,それをHとする. $n+1$個の頂点から一つを除いた他の点で定まる$n-1$次空間を, この$n+1$面体の面という.

各面の重心$n+1$点,各頂点から対面への垂線の足$n+1$点, 頂点と垂心を$n-1:1$に内分する点$n+1$点の$3(n+1)$点は同一球面上にある. ■


証明      頂点$\mathrm{A}_1$と垂心Hを$n-1:1$に内分する点$\mathrm{L}_1$と 面 $\mathrm{A}_2\cdots\mathrm{A}_{n+1}$の重心$\mathrm{G}_1$との中点をEとする.

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OE}}=
\dfrac{1}{2}\left\{
\dfrac{...
...
=\dfrac{1}{n}\sum_{i=1}^{n+1}\overrightarrow{\mathrm{OA}_i}
\end{displaymath}

である.Eは各頂点にに関して対称なので, 対応する他の2点の組に関しても中点である. そしてEと4面の重心との距離はいずれも $\dfrac{1}{n}R$で相等しいので, これら$2(n+1)$点はEを中心とし,半径$\dfrac{1}{n}R$の球面上にある.

$\mathrm{A}_1$から面 $\mathrm{A}_2\cdots\mathrm{A}_{n+1}$への垂線の足を$\mathrm{H}_1$ とすると,球の直径が $\mathrm{L}_1\mathrm{G}_1$であり, 垂心の定義から $\mathrm{L}_1\mathrm{H}_1\bot\mathrm{G}_1\mathrm{H}_1$ なので,$\mathrm{H}_1$もこの球面上にある. 以上から,各$n+1$点ずつ$3(n+1)$個の点はEを中心とする半径$\dfrac{1}{n}R$の球面上にある. □

拓生  垂心が存在しなくても,一定の定理にすることが出来るのですか.

南海  そこが彦根東高校の高校生が考えたところで, この証明で使ったところだけを引き出すと,次のようにまとめることが出来る.


$n$次元空間に$n+1$面体 $\mathrm{A}_1\mathrm{A}_2\cdots\mathrm{A}_{n+1}$がある. その外心をO,外接球の半径を$R$とする. 点Hを

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OH}}
=\dfrac{1}{n-1}\sum_{i=1}^{n+1}\overrightarrow{\mathrm{OA}_i}
\end{displaymath}

で定める. 各面の重心$n+1$点,点Hから各面への垂線の足$n+1$点, 頂点と点Hを$n-1:1$に内分する点$n+1$点の$3(n+1)$点は同一球面上にある. ■


拓生  そうか.これで証明に使ったことは全てはいっていますね.

南海  こういうことを考えている 高校生がいるということは,たいへん嬉しいことだ.


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