拓生 4面合同な四面体はこれまでにも見たことがあります.(ii)から(i)は明らかだから, (i)から(ii)を示すのですね.
南海 4つの面が合同な四面体を等面四面体という. 等積四面体は等面四面体である,これが定理の核心だ.証明はいろいろな方法がある.2通りの方法で示そう.
証明
方針は次の通り.
点から辺におろした垂線の足を, 点から辺におろした垂線の足をとする. と の面積が等しいので, である.
このとき
を示す.これが示せれば三平方の定理から
となる.
,
も同様に示される.よって対辺の長さがそれぞれ等しく,4面の三角形は対応する3辺の長さが
それぞれ等しくなり,合同である.
そのために線分の中点をとる.をとおり直線に
垂直な平面をとする.と直線の交点をとする.
直線はをとおりと平行な平面上にあり,
直線はをとおりと平行な平面上にある.が
線分の中点なので,これら2つの平面はから等距離にある.
したがって点からへの距離と,点からへの距離は等しい.
ゆえに,点は線分の中点である.は上の直線なので
ねじれの位置にある2直線の両方に直交する直線はただ一つしかない.したがって
拓生 よくわかりました.しかし巧みな証明です. ただ,「ねじれの位置にある2直線の両方に直交する直線はただ一つしかない」 ことが,直感的には明らかですが,厳密にはどのようにすればよいのでしょうか.
南海 それは『高校数学の方法』「同値変形で問題を解きほぐす」の演習問題2を見てほしい.
さて考え方は同じなのだがこれを座標でやってみよう. そのために次の事実が必要だ.
空間に2つのベクトル
拓生 やってみます. とします.
別証明
四面体を,図のように辺の中点を原点に,
点を平面上に置いて,座標空間に置く.
ただし,
点からへの垂線の足を,
点からへの垂線の足をとすると,その座標は
南海 じつはこのような位置に置かなくても, 3次行列やベクトルの外積といわれるものを使う証明方法がある. それは『線型幾何入門』の中にある.
等面四面体は四面体のなかで最も美しいものだ. この等面四面体を埋め込む平行六面体は何か.
拓生 六面体の各面は平行四辺形だが等面四面体では,対角線が等しい. 対角線の長さが等しい平行四辺形は長方形なので,それは直方体です.
南海 直接的な証明などは『高校数学の方法』「存在の証明」のなかにある. これも参考にしてほしい.
最後に,最初の京大の問題だが,条件(i)は埋め込み平行六面体が等辺長六面体であるということであり, 条件(ii)は埋め込み平行六面体が直方体であるということになった.したがって(i)かつ(ii)になるのは 埋め込み平行六面体が立方体ということだ.これは正四面体だ.
拓生 別解です.
南海 この問題を解くのにこの方法はまわりくどいから別解とはいえないが,しかしこの 平行六面体を考えることで問題の意義を理解することができる.