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等面四面体の特徴付け

南海  先の問題は,等積四面体は等面四面体であることを意味している. これは等面四面体の一つの特徴付けだ.

拓生  他にもあるということですか.

南海  三角形で,重心$\mathrm{G}$,外心$\mathrm{O}$,内心$\mathrm{I}$のうち2つが一致すると?

拓生  正三角形です. $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$

  1. 重心と外心が一致するとき.

    重心は頂点$\mathrm{A}$と対辺$\mathrm{BC}$の中点を結ぶ直線上にあり, 外心は辺$\mathrm{BC}$の垂直二等分線上にある. これが一致すれば,頂点と対辺の中点を結ぶ直線とその辺が直交し, $\mathrm{AB}=\mathrm{AC}$の二等辺三角形. これが2つの頂点についても成り立つので正三角形.

  2. 重心と内心が一致するとき.

    3つの三角形 $\bigtriangleup \mathrm{GBC}$, $\bigtriangleup \mathrm{GCA}$, $\bigtriangleup \mathrm{GAB}$は面積が等しい. さらに重心と内心が一致すれば, $\mathrm{G}=\mathrm{I}$と これら3つの三角形の辺 $\mathrm{AB}$, $\mathrm{BC}$, $\mathrm{CA}$に下ろした垂線の足までの長さが等しい.つまり3つの三角形の高さが等しい. よって底辺が等しく $\mathrm{AB}=\mathrm{BC}=\mathrm{CA}$ が示された.

  3. 外心と内心が一致するとき.

    $\mathrm{AB}$の中点を$\mathrm{M}$とし, 外接円,内接円の半径をそれぞれ$R,\ r$とする.

    このとき $\mathrm{AM}^2=R^2-r^2$ となる. 右辺は辺の選び方によらない定数なので,3辺が相等しい.

南海  そうだ.では,四面体で重心と外心が一致すると?

拓生  正四面体ですか.

南海  ところがそうではない.ここが三角形と四面体の違うところだ.

四面体で重心と外心が一致すると,それは等面四面体なのだ.実は次のことが成り立つ.

定理 5
四面体$\mathrm{ABCD}$で次の4つの条件は同値である.
  1. 等面四面体である.
  2. 重心と外心が一致する.
  3. 外心と内心が一致する.
  4. 内心と重心が一致する.

証明

以下の証明で,四面体$\mathrm{ABCD}$の 重心を$\mathrm{G}$, 外心を$\mathrm{O}$, 内心を$\mathrm{I}$とおく.

  1. まず,等面四面体では重心,外心,内心が一致することを示そう. これはいろんな方法がある. ここでは等面四面体が直方体のなかに埋め込まれることを用いよう.

    先に等面四面体は直方体に埋め込まれることを示した.


    $\mathrm{AB}$の中点を$\mathrm{S}$, 辺$\mathrm{CD}$の中点を$\mathrm{T}$とする. 線分$\mathrm{ST}$の中点が重心$\mathrm{G}$である.

    $\mathrm{S},\ \mathrm{T}$がそれぞれ, 長方形$\mathrm{AQBK}$, $\mathrm{CMDN}$の中心であるから, $\mathrm{G}$はこの直方体の中心でもある.

    したがって$\mathrm{G}$から4つの頂点への長さが等しく,外心でもある.


    その結果$\mathrm{G}$を一つの頂点とする4つの四面体 $\mathrm{GABC},\ \mathrm{GABD},\ \mathrm{GACD},\ \mathrm{GBCD}$ は6辺が相等になりすべて合同, よって$\mathrm{G}$から各辺への垂線の長さも等しい. つまり$\mathrm{G}$は内心でもある.

  2. 四面体$\mathrm{ABCD}$で重心と外心が一致するとする.つまり

    \begin{displaymath}
\vert\overrightarrow{\mathrm{GA}}\vert=
\vert\overrighta...
...{\mathrm{GC}}\vert=
\vert\overrightarrow{\mathrm{GD}}\vert
\end{displaymath}

    とする.この値つまり外接球の半径を$R$とし,

    \begin{displaymath}
\vert\overrightarrow{\mathrm{DA}}\vert=a,\
\vert\overri...
...rm{DB}}\vert=b,\
\vert\overrightarrow{\mathrm{DC}}\vert=c
\end{displaymath}

    とおく.

    \begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{DG}}=\dfrac{1}{4}(
\overrightarr...
...overrightarrow{\mathrm{DB}}+
\overrightarrow{\mathrm{DC}})
\end{displaymath}

    なので

    \begin{eqnarray*}
\vert\overrightarrow{\mathrm{GD}}\vert^2
&=&\dfrac{1}{16}\...
...errightarrow{\mathrm{DC}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{DA}})\\
\end{eqnarray*}

    他も同様である.ここで

    \begin{displaymath}
X=\overrightarrow{\mathrm{DA}}\cdot\overrightarrow{\mathrm...
...overrightarrow{\mathrm{DC}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{DA}}
\end{displaymath}

    とする.

    \begin{eqnarray*}
16R^2&=&a^2+b^2+c^2+2X+2Y+2Z\\
16R^2&=&9a^2+b^2+c^2-6X+2Y...
...R^2&=&a^2+9b^2+c^2-6X-6Y+2Z\\
16R^2&=&a^2+b^2+9c^2+2X-6Y-6Z
\end{eqnarray*}

    これを $16R^2,\ X,\ Y,\ Z$の連立1次方程式とみて解くと,

    \begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
16R^2=2(a^2+b^2+c^2)\\
2X=...
... 2Y=-a^2+b^2+c^2\\
2Z=a^2-b^2+c^2
\end{array}
\right.
\end{displaymath}

    となる. $2Y=-a^2+b^2+c^2=2\overrightarrow{\mathrm{DB}}
\cdot\overrightarrow{\mathrm{DC}}$から

    \begin{eqnarray*}
a^2&=&b^2-2\overrightarrow{\mathrm{DB}}\cdot\overrightarrow{...
...mathrm{DB}}\vert^2
=\vert\overrightarrow{\mathrm{BC}}\vert^2
\end{eqnarray*}

    つまり

    \begin{displaymath}
\vert\overrightarrow{\mathrm{DA}}\vert=\vert\overrightarrow{\mathrm{BC}}\vert
\end{displaymath}

    他も同様に示され四面体$\mathrm{ABCD}$では対辺の長さが等しく, 等面四面体であることが示された.

        次の場合と同様に等積四面体であることを示すことも出来る.

  3. 四面体$\mathrm{ABCD}$で重心と内心が一致するとする. 重心$\mathrm{G}$

    \begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{DG}}=\dfrac{1}{4}(
\overrightarr...
...overrightarrow{\mathrm{DB}}+
\overrightarrow{\mathrm{DC}})
\end{displaymath}

    で定まる. したがって点$\mathrm{G}$から $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$平面に下ろした垂線の長さは, 頂点$\mathrm{D}$から $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$平面に下ろした 垂線の長さの$\dfrac{1}{4}$である.

    $\mathrm{D}$を他の頂点にとっても同様である. よって$\mathrm{G}$を一つの頂点とする4つの四面体 $\mathrm{GABC}$, $\mathrm{GABD}$, $\mathrm{GACD}$, $\mathrm{GBCD}$の体積は, いずれも四面体$\mathrm{ABCD}$$\dfrac{1}{4}$であり,相等しい.

    一方重心$\mathrm{G}$が内心$\mathrm{I}$でもあるので, $\mathrm{G}$から各面に下ろした垂線の長さは相等しい.

    したがって4つの四面体 $\mathrm{GABC},\ \mathrm{GABD},\ \mathrm{GACD},\ \mathrm{GBCD}$の, 頂点$\mathrm{G}$に対する底面の面積も相等しい.

    つまり四面体$\mathrm{ABCD}$は等積四面体である. 等積四面体は等面四面体であるので, 四面体$\mathrm{ABCD}$が等面四面体であることが示された.

  4. 四面体$\mathrm{ABCD}$で外心と内心が一致するとする.
    外心$\mathrm{O}$から $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$に垂線$\mathrm{OL}$を引く. $\mathrm{L}$は球を $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$を含む平面で切った円の中心であり, この$\mathrm{L}$ $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$の外心になる.

    $\mathrm{O}$が内心でもあるので$\mathrm{L}$は 内接円が四面体の面 $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$に接する点でもある. 内接円の半径を$r$とする. 外接円の半径$\mathrm{AL}$は三平方の定理から

    \begin{displaymath}
\mathrm{AL}^2=\mathrm{OA}^2-\mathrm{OL}^2=R^2-r^2
\end{displaymath}
    となる.

    これは外接円と内接円で定まる定数である.ゆえに他の3つの面, $\bigtriangleup \mathrm{ABD}$, $\bigtriangleup \mathrm{ACD}$, $\bigtriangleup \mathrm{BCD}$の外接円の半径もすべて $\sqrt{R^2-r^2}$に等しい. すると,弦$\mathrm{AB}$に対する同じ半径の円の円周角は等しいので

    \begin{displaymath}
\angle \mathrm{ACB}=\angle \mathrm{ADB}
\end{displaymath}

    が成り立つ.その他についても同様である.12個の角が2つずつ相等しい.これらを

    \begin{displaymath}
\begin{array}{l}
\angle \mathrm{ACB}=\angle \mathrm{ADB}...
...\
\angle \mathrm{BAD}=\angle \mathrm{BCD}=w
\end{array}
\end{displaymath}

    とおく.このとき

    \begin{displaymath}
x+y+z,\ x+u+w,\ y+v+w,\ z+u+v
\end{displaymath}

    は各々三角形の内角の和なので,$180^{\circ}$である.これから

    \begin{displaymath}
y+z=u+w,\ z+x=v+w,\ x+w=z+v
\end{displaymath}

    が成立する.これから

    \begin{displaymath}
x=v,\ z=w,\ y=u
\end{displaymath}

    が成立する.これはつまり4面の三角形について2角挟辺の相等が成立し4面はすべて合同である.

    つまり四面体$\mathrm{ABCD}$は等面四面体である.


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