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凸関数

南海  次の凸関数だ.凸関数の定義そのものは次のようになる.

関数 $f(x)$ が定義域で「凸である」とは,定義域内の任意の2点 $x_1,\ x_2$ に対して

\begin{displaymath}
f\left(\dfrac{x_1+x_2}{2}\right)-\dfrac{f(x_1)+f(x_2)}{2}
\end{displaymath}

の正負の符号が一定であること,である.

$f(x)$ が連続なら内分点で

\begin{displaymath}
f\left(\dfrac{(1-t)x_1+tx_2}{2}\right)-\dfrac{(1-t)f(x_1)+tf(x_2)}{2}
\end{displaymath}

の正負の符号が一定である,として同値である.

さらに2回微分可能なら定義域で二次導関数 $f''(x)$ の正負が一定である, として同値である(ここではこれらの証明は略する).

ここでは,二次導関数の符号が一定である関数を凸関数と定め,なぜこのとき「凸関数」というのかを次の定理で理解したい.

定理 6

     関数 $f(x)$ は定義域で2回微分可能で, $f''(x)$ の正負は一定である.このとき 定義域内の $x$ $n\ \ (n \ge 3) $ 個の値

\begin{displaymath}
x_1<x_2<\cdots<x_n
\end{displaymath}

に対する $xy$ 平面上の $n$ 個の点

\begin{displaymath}
\mathrm{A}_1(x_1,\ f(x_1)),\
\mathrm{A}_2(x_2,\ f(x_2)),\ \cdots,\ \mathrm{A}_n(x_n,\ f(x_n))
\end{displaymath}

で定まる $n$ 角形を考える.次のことが成り立つ.
  1. $xy$ 平面の二つの領域を

    \begin{displaymath}
D_+=\{(x,\ y)\vert y-f(x)\ge 0 \},\ D_-=\{(x,\ y)\vert y-f(x)\le 0 \}
\end{displaymath}

    とする.多角形 $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_n}$$K$とする.$K$$D_+$$D_-$ のいずれか一方に含まれる.
  2. 多角形$K$は凸多角形である.

証明

$f''(x)<0$ として示す.

  1. まず定義域内の $x_1\le x_2$ と実数 $r_1,\ r_2>0,\ r_1+r_2=1$ に対して

    \begin{displaymath}
r_1f(x_1)+r_2f(x_2)\le f(r_1x_1+r_2x_2),\ 等号成立は\ x_1=x_2\ のとき
\end{displaymath}
    を示す.


    \begin{displaymath}
x_1\le r_1x_1+r_2x_2 \le x_2
\end{displaymath}

    である.ここで 二つの区間 $[x_1,\ r_1x_1+r_2x_2],\ [r_1x_1+r_2x_2,\ x_2]$ に 対して平均値の定理を用いると, $x_1<c_1<r_1x_1+r_2x_2,\ r_1x_1+r_2x_2<c_2<x_2$

    \begin{displaymath}
\dfrac{f(r_1x_1+r_2x_2)-f(x_1)}{r_1x_1+r_2x_2-x_1}=f'(c_1),
\ \dfrac{f(x_2)-f(r_1x_1+r_2x_2)}{x_2-(r_1x_1+r_2x_2)}=f'(c_2)
\end{displaymath}

    となるものがある. $f''(x)<0$ より $f'(c_1)>f'(c_2)$

    \begin{displaymath}
∴ \quad \dfrac{f(r_1x_1+r_2x_2)-f(x_1)}{r_1x_1+r_2x_2-x_1}
>\dfrac{f(x_2)-f(r_1x_1+r_2x_2)}{x_2-(r_1x_1+r_2x_2)}
\end{displaymath}

    $x_2-x_1>0$ なのでこれから

    \begin{displaymath}
\dfrac{f(r_1x_1+r_2x_2)-f(x_1)}{r_2}>\dfrac{f(x_2)-f(r_1x_1+r_2x_2)}{r_1}
\end{displaymath}

    これから

    \begin{displaymath}
r_1f(x_1)+r_2f(x_2)\le f(r_1x_1+r_2x_2)
\end{displaymath}

    明らかに等号は $x_1=x_2$ のときのみ.
    したがって $n$ 角形 $K$ のすべての辺が $D_-$ にあるので, $K$ 自身が $D_-$ にある.
  2. $\mathrm{A},\ \mathrm{B}\in K$ をとる. $\mathrm{A}(a,\ c)$ $\mathrm{B}(b,\ d)$ とし $\mathrm{P}(a,\ f(a))$ $\mathrm{Q}(b,\ f(b))$ とおく.
    $\mathrm{A},\ \mathrm{B}\in K \subset D_-$ なので $c\le f(a)$$d\le f(b)$ である. $0<t<1$ に対して

    \begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OL}}
=(1-t) \overrightarrow{\mathrm{OA}}+ \overrightarrow{\mathrm{OB}}
\end{displaymath}

    とする.

    \begin{displaymath}
(1-t)c+td \le (1-t)f(a)+tf(b)
\end{displaymath}

    一方 $n$ 角形の頂点の $x$ 座標が

    \begin{displaymath}
x_{j-1}<(1-t)c+td\le x_j
\end{displaymath}

    と配置されているとする.

    (1)から図のように辺 $\mathrm{A_{j-1}}\mathrm{A_j}$ と点 $\mathrm{L}$ は 直線 $\mathrm{PQ}$に関して反対の側にある.したがって $\mathrm{L}$$n$ 角形 $K$ の外に出ることはない. つまり線分 $\mathrm{AB}\subset K$ となり $K$ が凸多角形であることがわかる.□

南海  すこしはわかっただろうか.論の組み立てはいろいろあるのだが, 数学的帰納法と平均値の定理を使ったところが,基本的なところだ.

 

 

 


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