拓生
ド・モアブルの定理とは,すべての整数に対し
南海
ド・モアブルの定理の本質的な部分はオイラーの公式
ド・モアブルの定理の右辺はの形なので 二項定理で展開することができる.
実数部と虚数部をまとめると,
拓生 をチェビシフの多項式と呼び,の次式での係数はになる.
南海 もチェビシフの多項式ということもあるし,もう少し違う形でいうこともある. これについては『チェビシェフの多項式』を見てほしい. これは本当に有用なもので,そこから導かれる結果は高校数学ではもっとも深いものだろう.
さて,今回はこのド・モアブルの定理とチェビシェフの多項式のうち,虚数部分から得られる 三角関数の多項式を用いる.
もう一つ,ここではの逆数が用いられる. とおいて,これを 「コタンジェント」と呼ぶ.そのグラフは次のようになる.
拓生
南海 ド・モアブルの定理の右辺を二項定理で展開し,両辺の虚数部分をとる.
拓生
二項定理により右辺は
南海 が偶数か奇数かで最後の項は変わってくるが, 奇数の項をまとめて左辺の虚数部分と等値すると.
南海 でとする.に各 を代入する.
このとき左辺は0で,は0でない.よってこれらのに関して
いま
とおくとは
拓生 個の が満たす次の方程式ですか. 根と係数の関係が使えますね.
南海 の係数について何が言えるか.
拓生 次の方程式の最高次数の係数は , 次の項の係数は です.
だから, をすべて加えるとこれが個の根の和なので 根と係数の関係によって
確かにこれはの関係式ですが,ここから何が言えるのでしょうか.
南海
これから,ある級数の収束とその和を求める.三角関数の基本的な不等式
拓生
今はを考えているので
は
と同様に
南海 なかなか察しがよい.の左辺の各項にこの不等式を適用すると
これをについてからまで加える.
両辺に をかけると
ここでをとる.
拓生
南海 円周率を明示的に無限級数で表す公式でオイラー(1707〜82)が発見した.
もっともオイラーはもっと違う方法でこの公式に到達したらしい.『ド・モアブルの定理からオイラーの公式へ』
で紹介したが,は
一方となるは
なので
定数項を比較して
右辺の定数項は
.右辺のの係数は,これらの積から
一つずつ落としたものなので
これから
このように考えたらしい.すばらしい直感だ.