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3個の文字の(1, 2, 3)の並び替えは6通り(それ自身を含む)ある.その一つ一つはの置きかえであると考えることができる.例えばに対しては
の置きかえが対応している.一般に個の文字
に対して
個の置きかえができる.
この記号を用いて表される次の定理をムーアヘッドの定理,その不等式をムーアヘッドの不等式という.
定理 2
とする.
条件
と
を満たす二つの実数列
に関する
二つの条件(1)と(2)は,同値である.
(1)
|
|
|
(2) |
|
|
|
(3) |
を満たす.
(2)任意の非負実数に対し,不等式
|
(4) |
が成立する.
ここに和は
の置きかえ
全体にわたる.
同値な条件(1),(2)のもとで,となるが存在すれば,
等号は
のときのみ成立する.
■
これをムーアヘッドの定理という.
全体にわたる和なので
でもあることに注意しよう.
例 0.0.1
,
は条件を満たす.
よりこれは相乗平均と相加平均の関係を示す不等式である.
例 0.0.2
,
は条件を満たす.
これは次式を意味する.
例 0.0.3
,
は条件を満たす.
さらに
とすると,
と
,
と
も条件を満たす.
これからムーアヘッドの不等式は次式を意味する.
とに対してを作りあいだに入れることは,次の定理の証明の中で用いられる.
以上の例はいずれもやが有理数であるが,これが条件を満たす実数列で成りたつというのが,本定理である.
(1)ならば(2)が成り立つことを示す.
非負実数がすべて0なら明らかなので,0でないものがあるとする.
に関する数学的帰納法で示す.
のとき.なら
よりとなって等号で成立.
とする.このとき条件から
である.
より
で等号はのときにかぎり成立する.よってのとき命題は成立する.
について命題が成立するとする.
となるがあるとき.証明すべき等式は
と
のそれぞれについて対称である.
したがってとしてよい.このとき.
ここでは,和の外にくくったのもがのときは,
から,1からでをのぞくの数への置きかえを意味する.その全体の和は,1からでをのぞくの数から,1からでをのぞくの数への置きかえにわたる和と等しい.
の個ずつの数も同じ定理の条件をみたす.
よって数学的帰納法の仮定から
が成り立つ.となるが1からでをのぞくの数の中にあることとあることが同値であり,非負実数のなかに0でないものがあるので等号成立条件も成り立つ.
となるがないとき.,なので,
で
となるがある.ここで
を次のように定義する.
このようにすると
であり,さらに
が成立する.
ところがの列との列,の列との列にはそれぞれ等しい項がある.のときの証明と同様にべきの等しい項をくくることで数学的帰納法の仮定から
となる.となるがないこととの定義から,べきの等しい項をくくった残余の項の添え数のあいだの和の等号は1文字を除いた他のがすべて等しいときにかぎる.この結果,非負実数のなかに0でないものがあるので和全体の等号もがすべて等しいときにかぎる.つまり,等号成立条件を含めて定理の命題が成立する.かくしての場合も成立し,(1)ならば(2)が成立することが証明された.
(2)ならば(1)が成り立つことを示す.
(2)の不等式(4)を
で用いる.この不等式は
となる.これがで成立し,かつでも成立するので,
である.よって等式(2)が成立.
次に,
について,
(2)の不等式(4)を
,
で用いる.この不等式の
両辺の最高次の項はそれぞれ
となる.
両辺の多項式であるから,を十分大きくとると,
不等式(4)が成立するために,
が必要である.等式(2)とあわせて,
不等式(3)が成立する.
これで(1)の成立が示された.
□
系 1
とする.
実数の列
と
は次の二つの条件,
を満たす.このとき任意の非負実数
に対し,
不等式
が成立する.
となる
が存在すれば,等号は
のときのみ成立する.
■
証明
定理2において,
とおく.
和において,個ずつ同じ項が現れるので,
それを約すると,本不等式になる.
□
注意 0.0.1
定理
2の証明を,
として追ってゆくと,
たいへん簡明な不等式であることがわかる.
適当な総和法を用いて,
数学的帰納法によらず直接に証明が出来そうであるが,
それはまだやっていない.
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Aozora
2013-05-10