上: ムーアヘッドの不等式とその応用
前: ムーアヘッドの不等式
定理1をさらに次のように一般化しよう.
定理 3
を自然数の定数とし,
数列
を次式で定義する.
を
,
を満たす
個の自然数とする.不等式
が成立し,等号は
のとき,そしてそのときにかぎる.
■
注意 0.0.2
数列
を
N-シルベスター数列といおう.
のときが,定理1である.
また本定理の数列では,
なので,命題
1は定理
3で
,
の場合である.
つまり,定理
3は命題
1の一般化でもある.
補題を一つ準備する.
補題 1
定理
3内で定義された数列
は,関係式
を満たす.
■
証明
数学的帰納法で示す.
のときはなので,
より成立.で成立とする.
つまり,のときも成立する.
よって命題はすべてので成立する.
□
定理3の成立を,
についての数学的帰納法で示す.
のときはなので
なら,つまりである.よって
は成立し,等号成立はのときにかぎる.
定理3の命題の以下での成立を仮定する.
と表すとき,
より
である.
よって
である.
補題1より
なので,
なら
となり成立.
以下では
とする.
のとき.
帰納法の仮定により成立するのときの不等式の両辺に,
を加えると
となり,等号成立条件も成立する.
よってとする.
このとき不等式の成立と等号の不成立を示せばよい.
とあわせると,
番号で
となる最大のものがある.
それをとする.である.
であるから
|
(5) |
である.有理数と整数を
で定める.
である.ここで
とする.この実数の列は条件
を満たし,さらにその定義と不等式列(5)より
を満たす.(注:「<」を「≦」に訂正.) ただしk=1,…,n-l の範囲では等号不成立.つまり系1の条件を満たす.
で系1を用いる.この場合,から,等号は成立しない.
\begin{eqnarray*}
&&\sum_{i=1}^{n-l+2}e^{-s_i}=\sum_{i=1}^{n-l+1}e^{-\log(q_{l+i-1})}+e^{-\log r}\\
&>&
\sum_{i=1}^{n-l+2}e^{-t_i}=\sum_{i=1}^{n-l+2}e^{-\log(a_{l+i-1})}
\end{eqnarray*}
を得る.これから
を得る.ここで,より
なので,
である.
帰納法の仮定から
は成立.両辺加えてのときの成立が示され,等号成立条件も示されている.
□
太郎
ムーアヘッドの不等式といっても,
系1の形で,つまり
の場合に使うだけですね.
南海
そうなのだ.
ムーアヘッドの不等式の証明を
の場合に書き出してみると,
案外簡単な証明だ.先にも言ったが直接の証明もできそうだ.
ただ,ムーアヘッドの不等式は,たいへん面白いし,
多くの具体的な不等式を生みだす.
置換群の記号が出てくるので,少しとっつきにくいが,ぜひ自分で後を追ってみてほしい.
上: ムーアヘッドの不等式とその応用
前: ムーアヘッドの不等式
Aozora
2013-05-10