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ベクトル空間の基底

南海  ベクトルの一次独立性を定義しよう.

定義 3 (一次独立)
ベクトル空間$V$$p$個のベクトル $\mathrm{\bf u}_1,\ \mathrm{\bf u}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf u}_p$ がある. 任意の実数 $k_1,\ k_2,\ \cdots,\ k_p$に対して

\begin{eqnarray*}
&&
k_1\mathrm{\bf u}_1+k_2\mathrm{\bf u}_2+\cdots+k_p\mathrm{\bf u}_p=0\\
&\iff&k_1=k_2=\cdots=k_p=0
\end{eqnarray*}

が成り立つとき, $\mathrm{\bf u}_1,\ \mathrm{\bf u}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf u}_p$ は実数体上一次独立であるという.

$\mathrm{\bf u}_1,\ \mathrm{\bf u}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf u}_p$一次独立であることは,

\begin{eqnarray*}
&&x_1\mathrm{\bf u}_1+x_2\mathrm{\bf u}_2+\cdots+x_p\mathrm{\b...
...thrm{\bf u}_p=0\\
&\iff&
x_1=y_1,\
x_2=y_2,\ \cdots,\
x_p=y_p
\end{eqnarray*}

でもあることに注意しよう.

さて,ベクトル空間$V$$p$個のベクトル $\mathrm{\bf u}_1,\ \mathrm{\bf u}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf u}_p$ は一次独立で,さらに, $\mathrm{\bf u}_1,\ \mathrm{\bf u}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf u}_p$ に,これらと異なる0ベクトルでない$V$のベクトル $\mathrm{\bf u}$をどのように選んで加えても, それを加えた $\mathrm{\bf u},\ \mathrm{\bf u}_1,\ \mathrm{\bf u}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf u}_p$はもはや一次独立ではないとき, $\mathrm{\bf u}_1,\ \mathrm{\bf u}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf u}_p$$V$最大独立系をなすという.

定義から最大独立系に属するベクトルは零ベクトルではない. $\mathrm{\bf u}_1,\ \mathrm{\bf u}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf u}_p$ が最大独立系のとき,$V$の任意のベクトル $\mathrm{\bf u}$に対し実数 $a,\ a_1,\ a_2,\ \cdots,\ a_p$を選んで,

\begin{displaymath}
a\mathrm{\bf u}+
a_1\mathrm{\bf u}_1+a_2\mathrm{\bf u}_2+\cdots+a_p\mathrm{\bf u}_p=\mathrm{\bf0}
\end{displaymath}

とすることができる. $\mathrm{\bf u}_1,\ \mathrm{\bf u}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf u}_p$は一次独立であるから $a\ne 0$であり,したがって各係数を$a$で割ったものを改めてとりなおせば $V$の任意のベクトル $\mathrm{\bf u}$

\begin{displaymath}
\mathrm{\bf u}=
a_1\mathrm{\bf u}_1+a_2\mathrm{\bf u}_2+\cdots+a_p\mathrm{\bf u}_p
\end{displaymath}

表すことができる. このことに注意して次の定理を証明しよう.

定理 1
$V$の二つの最大独立系


がある.このとき$p=q$が成り立つ.

証明

$p\ne q$とし,$p>q$とする. $\mathrm{\bf u}_1$


と表すことができる. $\mathrm{\bf u}_1\ne \mathrm{\bf0}$なので, 右辺の係数のうちの少なくとも一つは0ではない.必要なら番号をつけ替えて$a_1\ne 0$とする. 等式を$a_1$で割り移項すれば,ベクトル $\mathrm{\bf v}_1$


によって表された. $V$の任意のベクトルを で表した式があるとする.

$\mathrm{\bf v}_1$に, $\mathrm{\bf v}_1$ で表したものを代入することにより,$V$の任意のベクトルが, で表される. よって特に $\mathrm{\bf u}_2$


と表される. $\mathrm{\bf u}_1$ $\mathrm{\bf u}_2$は一次独立なので, $b_2,\ b_3,\ \cdots,\ b_q$がすべて0ということはない. $b_2\ne 0$とする. 同様に考え, $\mathrm{\bf v}_2$


で表すことができた. 同様の手順で



\begin{displaymath}
\mathrm{\bf u}_1,\ \mathrm{\bf u}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf u}_q
\end{displaymath}

で置きかえることができる.つまり

\begin{displaymath}
\mathrm{\bf u}_1,\ \mathrm{\bf u}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf u}_q
\end{displaymath}

$V$の他の任意のベクトルを表すことができる.特に $\mathrm{\bf u}_{q+1},\ \cdots,\ \mathrm{\bf u}_p$も表すことができる. これは $\mathrm{\bf u}_1,\ \mathrm{\bf u}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf u}_p$ が最大独立系であることに矛盾する.

したがって$p>q$ではあり得ない. つまり$p=q$であることが示された.□

耕一  そうか.わかった.ベクトル空間の次元とは, 最大独立系のベクトルの個数なのです. 平面ベクトルでは2個の一次独立なベクトルがとれ, 空間ベクトルでは3個の一次独立なベクトルがとれる.

南海  次元の定義はいろいろある.しかし実数体上のベクトル空間に関して言えば, いま言ったとおり最大独立系をなすベクトルの個数と考えてよい.

耕一  では大きさは?



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