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ジョルダンの標準形

南海  固有方程式が重根をもつときどのようなところまで標準形にできるのか, 概略を考えよう. 例として『一次変換を見る』であつかった $A=\matrix{3}{-1}{1}{1}$を考えよう.

耕一  固有方程式は

\begin{displaymath}
t^2-4t+4=0
\end{displaymath}

$t=2$が重解です.

\begin{displaymath}
A-2E=\matrix{1}{-1}{1}{-1}
\end{displaymath}

なので,

\begin{displaymath}
(A-2E)\mathrm{\bf u}=O
\end{displaymath}

となる $\mathrm{\bf u}$として

\begin{displaymath}
\mathrm{\bf u}=\vecarray{1}{1}
\end{displaymath}

がとれます.これが固有方向です.

南海  $\mathrm{\bf u}_1=\vecarray{1}{1}$ とし, さらに $\mathrm{\bf u}_2=\vecarray{a}{b}\ (a\ne b)$ として, これを新たな基底にとると行列はどのように変わるか.

耕一 

\begin{displaymath}
(\mathrm{\bf e}_1,\ \mathrm{\bf e}_2)\matrix{1}{a}{1}{b}
=(\mathrm{\bf u}_1,\ \mathrm{\bf u}_2)
\end{displaymath}

となり,

\begin{displaymath}
P=\matrix{1}{a}{1}{b}
\end{displaymath}

とおいて計算をすると

\begin{displaymath}
P^{-1}AP=\matrix{2}{a-b}{0}{2}
\end{displaymath}

となります.

南海  $a=1,\ b=0$とすると

\begin{displaymath}
P^{-1}AP=\matrix{2}{1}{0}{2}
\end{displaymath}

という形にできた. $3$次正方行列では,$\alpha$が重根で$\beta$が単根の場合,$P$を適切にとると

\begin{displaymath}
P^{-1}AP=\left(
\begin{array}{ccc}
\alpha&1&0\\
0&\alpha&0\\
0&0&\beta
\end{array}\right)
\end{displaymath}

とすることができる,$\alpha$が3重根の場合は

\begin{displaymath}
\left(
\begin{array}{ccc}
\alpha&1&0\\
0&\alpha&1\\
0&...
...
\alpha&1&0\\
0&\alpha&0\\
0&0&\alpha
\end{array}\right)
\end{displaymath}

のいずれかにすることができる. このような形の標準形をジョルダンの標準形という. 一般に

\begin{displaymath}
A=
\left(
\begin{array}{ccccc}
a_{11}&a_{12}&\cdots&\cdots...
... 0&0&\cdots&\cdots\\
0&0&\cdots&0&a_{nn}
\end{array}\right)
\end{displaymath}

のように対角線より下の成分が0である行列を三角行列というが, このような三角行列の固有方程式は

\begin{displaymath}
\vert A-tE\vert=(a_{11}-t)(a_{22}-t)\cdots(a_{nn}-t)
\end{displaymath}

となり,その根は対角成分

\begin{displaymath}
a_{11},\ a_{22},\ \cdots,\ a_{nn}
\end{displaymath}

となる. だからジョルダンの標準形では, 対角線上の固有値はその重複回数だけ並ぶことがわかる.

演習 11       解答11

次の行列のジョルダンの標準形を複素数の範囲で求めよ.

\begin{displaymath}
(1)\quad
A=\left(
\begin{array}{ccc}
1&2&2\\
1&-1&1\...
...{ccc}
-4&9&-4\\
-9&18&-8\\
-15&29&-13
\end{array}\right)
\end{displaymath}



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