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正規直交基底

ベクトル空間$V$と内積$B$が与えられている. 定理によって,適当な基底をとると,内積が対称行列 $A=\left(
\begin{array}{ccccc}
\alpha_1&0&0&\cdots&0\\
0&\alpha_2&0&\cdots&0\\
&&\cdots&&\\
0&0&\cdots&\alpha_n
\end{array}\right)$で表された.

この基底を $\mathrm{\bf e}_1,\ \mathrm{\bf e}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf e}_n$ とする. ベクトル $\mathrm{\bf u}$をこの基底で表して

\begin{displaymath}
\mathrm{\bf u}=\sum_{j=1}^nx_j\mathrm{\bf e}_j,\ \quad
\mathrm{\bf v}=\sum_{j=1}^ny_j\mathrm{\bf e}_j
\end{displaymath}

とすると,

\begin{displaymath}
B(\mathrm{\bf u},\ \mathrm{\bf v})=\sum_{j=1}^n\alpha_jx_jy_j
\end{displaymath}

となるのであった. したがってとくに

\begin{displaymath}
B(\mathrm{\bf e}_j,\ \mathrm{\bf e}_k)=
\left\{
\begin{arra...
...pha_j&(j=k\ のとき)\\
0&(j\ne k\ のとき)
\end{array}\right.
\end{displaymath}

となる.$\alpha_j$はすべて正なので, $\dfrac{1}{\sqrt{\alpha_j}}\mathrm{\bf e}_j$を 改めて基底 $\mathrm{\bf e}_j$にとると,この基底に関して内積は

\begin{displaymath}
B(\mathrm{\bf e}_j,\ \mathrm{\bf e}_k)=
\left\{
\begin{arra...
...正規性〕\\
0&(j\ne k\ のとき)&〔直交性〕
\end{array}\right.
\end{displaymath}

となる.この基底を内積$B$に関する正規直交基底という. 上の〔 〕内に書いたようにそれぞれの性質を正規性,直交性という.

耕一  正規直交基底で

\begin{displaymath}
\mathrm{\bf u}=\sum_{j=1}^nx_j\mathrm{\bf e}_j,\ \quad
\mathrm{\bf v}=\sum_{j=1}^ny_j\mathrm{\bf e}_j
\end{displaymath}

と表されるベクトルの内積は

\begin{displaymath}
B(\mathrm{\bf u},\ \mathrm{\bf y})=\sum_{j=1}^nx_jy_j
\end{displaymath}

となります.任意の正値をとる内積から出発して,結局普通の内積になりました.

南海  そういうことなのだ. ベクトル空間に内積が与えられると,これから

\begin{displaymath}
\vert\mathrm{\bf u}\vert=\sqrt{B(\mathrm{\bf u},\ \mathrm{\bf u})}
=\sqrt{Q(\mathrm{\bf u})}
\end{displaymath}

でベクトルの大きさが定義される. このように大きさが与えられたベクトル空間をユークリッド空間という.

耕一  ベクトルの大きさということは,2点を結ぶベクトルの大きさ, つまり2点間の距離が定まると言うことですか.

南海  そう. 距離が与えられれば,二次形式から内積を作ったのと同じように内積が定まる.内積を与えることと,距離を与えることとは同値なのだ.



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