next up previous
次: 解答 上: 内積と直交変換 前: 正規直交基底

直交変換と直交行列

南海  ベクトル空間$V$に内積が定まり,この内積に関する正規直交基底 $\mathrm{\bf e}_1,\ \mathrm{\bf e}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf e}_n$ が与えられているとする.

$V$の1次変換$f$が,任意のベクトルに関してその大きさを変えないとき, $f$正規直交変換と呼ばれる.略して直交変換ということも多い.

耕一  つまり,任意のベクトル $\mathrm{\bf u}$に関して

\begin{displaymath}
B(f(\mathrm{\bf u}),\ f(\mathrm{\bf u}))=
B(\mathrm{\bf u},\ \mathrm{\bf u})
\end{displaymath}

が成り立つということですね.

$f$をこの基底で行列で表して得られる行列を$F$とします. また $\mathrm{\bf u}$の成分を $(x_1,\ x_2,\ \cdots,\ x_n)$とすれば $f$が直交変換であるということは

\begin{displaymath}
(x_1,\ x_2,\ \cdots,\ x_n){}tFF{}t(x_1,\ x_2,\ \cdots,\ x_n)
=(x_1,\ x_2,\ \cdots,\ x_n){}t(x_1,\ x_2,\ \cdots,\ x_n)
\end{displaymath}

がすべての $(x_1,\ x_2,\ \cdots,\ x_n)$で成立するということです.つまり $f$が直交変換であるということは,それを表す行列では

\begin{displaymath}
{}tFF=E
\end{displaymath}

が成り立つことです.

南海  これをみたす行列を直交行列とよぼう. これから直ちに直交行列は次のような性質をもつことがわかる.

  1. $\Delta({}tFF)=\Delta(F)^2=1$より $\Delta(F)=\pm 1$
  2. $F^{-1}={}^tF$
直交行列は逆行列をもつので,

\begin{displaymath}
(\mathrm{\bf w}_1,\ \mathrm{\bf w}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf ...
...thrm{\bf e}_1,\ \mathrm{\bf e}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf e}_n)F
\end{displaymath}

で定まる $(\mathrm{\bf w}_1,\ \mathrm{\bf w}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf w}_n)$も基底になる. のみならず,これは新たな正規直交基底である. つまり直交行列は,正規直交基底を正規直交基底に変換する行列としても特徴づけることができる. そこで,2次の直交行列を具体的に求めてほしい.

耕一  $F=\matrix{a}{b}{c}{d}$とおくと,

\begin{displaymath}
{}tFF=E\quad \iff \quad \matrix{a}{c}{b}{d}\matrix{a}{b}{c}{d}=\matrix{1}{0}{0}{1}
\end{displaymath}

から

\begin{displaymath}
a^2+c^2=1,\ b^2+d^2=1,\ ab+cd=0
\end{displaymath}

を満たすものを求めればよい.

$a=\cos\theta,\ c=\sin\theta$とおくと,$ab+cd=0$から

\begin{displaymath}
b=k\sin\theta,\ d=-k\cos\theta
\end{displaymath}

とおける.$b^2+d^2=1$より$k^2=1$である.したがって2次の直交行列は

\begin{displaymath}
\matrix{\cos\theta}{-\sin\theta}{\sin\theta}{\cos\theta},\
\matrix{\cos\theta}{\sin\theta}{\sin\theta}{-\cos\theta}
\end{displaymath}

となる.

南海 

\begin{displaymath}
\matrix{\cos\theta}{\sin\theta}{\sin\theta}{-\cos\theta}=
\m...
...eta}{-\sin\theta}{\sin\theta}{\cos\theta}
\matrix{1}{0}{0}{-1}
\end{displaymath}

であるから,結局2次の直交行列は

\begin{displaymath}
\matrix{\cos\theta}{-\sin\theta}{\sin\theta}{\cos\theta},\
\matrix{1}{0}{0}{-1}
\end{displaymath}

およびこれらの積でできているといえる.

耕一  回転と$x$軸での対称変換ですね.

南海  以上が線型代数の基本である.概念をつかむことを主にした. 計算問題は多くない.線型代数の参考書はたくさんあるので, それらによって計算練習をつんでほしい.


Aozora Gakuen