第1は,学校で習ったはずの言葉の正確な意味を押さえる,ということである.
例えば,「が無理数であることを示せ」という問題がある.まず「無理数とは何か」がわからなければ解きようがない.「無理数とは有理数でない実数」のことだ.だから,「が無理数であることを示せ」ということは「が有理数でないことを示せ」ということだとわかる.これなら証明は背理法でするのが自然だ.が有理数であると仮定する.そこで次は有理数とは何か.「有理数とは分数で表される数」だ.分数は必ず既約分数に出来るから「が有理数である」ということは,互いに素な整数 と で となるものが存在することである.定義からはじめて という「式」ができた.これが出発点である.
また,「自然数 に対して と はつねに互いに素であることを示せ.」は 「互いに素」という言葉の意味,つまり定義がわからなければ,どうしようもない. 「1以外に公約数がない」が定義だ.ということは,「最大公約数が1」であることを示せばよい. そこで と の最大公約数を とし, と とおく.
第2は,出題者が定めた記号の意味を, 自分がわかっている言葉で言い換える,ということである.
「負でない整数の10進法で表した下2桁をとする」というのが京大文系問題にあった.
出題者がこの記号を使ってと用いたとしよう.このとき
また「実数に対してを超えない最大の整数を」と表す.これはガウス記号といわれ,よく使われる記号だが,日本語で定義されたの定義に立ちかえれば,は
このように定義に立ちかえることは,数学の問題を解く前提であり,逆にここをはっきりさせることで,問題解決の糸口をつかむことができる.
例題 2.10 [07慶應経済]
を自然数全体の集合とする.集合を
考え方 出題者の定めた新しい記号を定義にしたがってつかみ直し, 既知の記号で表し直せばよい. また,これは次節の「関係の図示」の方法であるのだが, を図示しながらつかむとよい. そこまですると条件を満たす格子点の個数を求める問題だ.
解答
(1)
は
またはの
いずれかを満たすの要素からなる.図の斜線および実線上の格子点である.したがっての要素は