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結論からさかのぼる

まず次の例題をやってみよう.


例題 2.8       [01日本女子大]

正の数 $a$ に対して $b=a^a$ とおくとき,次のことを示せ.

  1. $1<a<2$ ならば $a^b<b^a$ である.
  2. $a>2$ ならば $a^b>b^a$ である.


考え方     この問題をどのように考えただろうか. ノートに「 $1<a<2$より…」と書いて, それ以上に進めない人はいなかっただろうか. (1)(2)の前提は「正の数 $a$ に対して $b=a^a$」だ. この前提のもとに,(1)の論証の出発は確かに仮定$1<a<2$」だ. だから「 $1<a<2$より…」と書いて次を考えようとするのは理由のないことではない. しかし,「 $1<a<2$より…」と書きはじめて,まっすぐに 結論$a^b<b^a$」に行き着くことは,簡単ではない.

山の頂上を結論とし,麓を最初の仮定としよう. 麓からいくつか道が分かれているが, 山の途中には雲がかかっていて, どの道を行けば頂上にたどり着けるかわからない, これが問題に直面したときの状況だ. ノートに「 $1<a<2$より…」と書いてそこで次にすすめなかった人は, このときに麓のどの道を行こうかわからず,あるいは道さえわからず,立ち止まってしまったようなものだ.

こんなときはどうすればよいのだろう. 山登りを例にあげたが,実は山登りと問題を解くことには,重大な違いがある. それは何か.山登りは麓から頂上へ向かって進むのだが, 問題を解くことは, 最初の仮定と最後の結論の間の道筋をつけることなのだ. だから道は,頂上から麓へ降りていって発見しても良い. この問題では結論$a^b<b^a$から逆にたどる.

そこでこの問題をもう一度よく見ると, 「正の数 $a$ に対して」と書かれているが, (1)は$1<a<2$ のとき,(2)は$2<a$ のとき, 結論の不等号が逆になっているので 結局, $1<a$ の前提のもとで,$a^b<b^a$$a^b>b^a$かが $a$ が2より大きいか小さいかで決まることを示せ,といっている. これに注意して考えよう

解答     $1<a$のとき

\begin{eqnarray*}
a^b<b^a &\iff& a^{a^a}<(a^a)^a\\
&\iff& a^{a^a}<a^{a^2}\\
&\...
... \quad (\ ∵ \quad 1<a\ )\\
&\iff& a<2 \quad (\ ∵ \quad 1<a\ )
\end{eqnarray*}

となり,(1)と(2)があわせて示された.□


例題 2.9       [出典不明]

$0<x<1,\ 0<y<1,\ 0<z<1$のとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.

\begin{displaymath}
(1)\quad xy+1>x+y\quad (2)\quad xyz+2>x+y+z\quad
(3)\quad xy^2z+3>x+2y+z
\end{displaymath}

考え方     結論を同値変形しよう.

解答    
(1)     $0<x<1,\ 0<y<1$より$x-1<0,\ y-1<0$なので

\begin{displaymath}
xy+1-(x+y)=(x-1)(y-1)>0
\quad ∴\quad xy+1>x+y
\end{displaymath}

(2)    $0<xy<1$なので(1)より

\begin{displaymath}
xyz+2=(xy)z+1+1>xy+z+1
\end{displaymath}

    (1)より $xy+z+1>x+y+z$なので,題意が示された.
(3)     $0<xy<1,\ 0<yz<1$なので(1)より

\begin{displaymath}
xy^2z+3=(xy)(yz)+1+2>xy+1+yz+1=x+y+y+z
\end{displaymath}

        よって題意が示された.



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