整数をこれ以上分解できないところまで分解して,
は異なる素数, は正の整数である. どのような整数も,因数分解できしかも順序を除けばただ一通りである.
例えば,48をどんな順で因数分解しても,素因数分解までいけば(順序以外は)同じである.
このことは次のようにまとめられる.この定理は算術の基本定理ともいわれる. 高校数学ではこれは証明なしに認めてよい.
証明 数学的帰納法で示す.
(1) 最小の合成数はで でありこれ以外にないから,成立.
(2) よりも小さい(正の)整数については定理が成立していると仮定する.
の分解の可能性を示す. は合成数であるから
の分解の一意性を示す.
を素因数に分解して二つの分解
(3) (1)(2)より,任意の整数に対して定理が成立することが示された. (証明終わり)
(1)は先の入試問題1の解答では,具体的に書いて済ませたところである. これを一般的に示すときには以下のようにしなければならない. また(2)は,高校数学の教科書に書いてある方法とは異なるものである. それぞれ次のように素因数分解の一意性を根拠に示される.
証明
背理法で示す.素数の個数が有限であると仮定する.その個数を 個とし,
をすべての素数とする.
このとき
一方は のいずれで割っても1余る. つまり, はの約数でない. よって の素因数分解に現れる素数は ではあり得ず, それら以外の素数である. これは がすべての素数という仮定と矛盾する. ゆえに素数の数は無限である. (証明終わり)
人類史上はじめて背理法を用いて素数が無数にあることを示したのもまたエウクレイデスである. これと同じ内容の論証が『原論』に書かれている.