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標本空間と確率

南海  次のように標本空間の各部分集合にその部分集合の確率値が与えられてはじめて確率が定義され,数学の問題になる.

確率の定義

$U$を試行の結果の集合,つまり標本空間とする.$U$の部分集合全体の集合を$\mathcal{B}$とする. $\mathcal{B}$の要素(つまり$U$の部分集合$A$) に対して実数値を対応させる関数$p$が次の性質を持つとき関数$p$を「確率」と呼ぶ. $A,\ B\in \mathcal{B}$とする.

  1. $p(A)\ge 0$
  2. $p(U)=1$
  3. $A\cap B=\emptyset$のとき $p(A\cup B)=p(A)+p(B)$

このとき標本空間$U$に確率$p$が定義されているという. 標本空間と確率$p$の組$(U,\ p)$確率空間という.

正確には$\mathcal{B}$$U$の部分集合全体である必要はなく,

  1. $\emptyset \in \mathcal{B}$
  2. $A \in \mathcal{B}$なら $\overline{A} \in \mathcal{B}$
  3. $A,\ B\in \mathcal{B}$なら $A\cup B \in \mathcal{B}$
をみたすものであればよい,このような性質を持つ$U$の部分集合の集合を有限加法集合族という. 確率空間はこれを指示して $U(\mathcal{B},\ p)$と書く.

しかし離散的な有限個の結果からなる確率を考えるかぎり,先の定義でよい.

南海  例で考えてみてほしい.

史織  サイコロで考えます.サイコロを振った結果は1の目から6の目ですから

\begin{displaymath}
U=\{1,\ 2,\ 3,\ 4,\ 5,\ 6\}
\end{displaymath}

です.これらの部分集合の全体が$\mathcal{B}$なので,

\begin{displaymath}
\mathcal{B}=\left\{\{1,\ 2,\ 3,\ 4,\ 5,\ 6\},\ \{1,\ 2,\ 3,\ 4,\ 5,\},\ \cdots,\ \{6\},\ \emptyset\right\}
\end{displaymath}

となります.

南海  全部でいくつあるか.

史織  6つの結果を選ぶか選ばないかなので$2^6$個です.

確率の定義の(ii)と(iii)より

\begin{displaymath}
1=p(\{1,\ 2,\ 3,\ 4,\ 5,\ 6\})=p(\{1\})+\cdots+p(\{6\})
\end{displaymath}

だから根元事象の確率が全て等しければ

\begin{displaymath}
p(\{1\})=\cdots=p(\{6\})=\dfrac{1}{6}
\end{displaymath}

となります.だから,目が奇数になる確率は

\begin{displaymath}
p(\{1,\ 3,\ 5\})=p(\{1\})+p(\{3\})+p(\{5\})=\dfrac{1}{6}+\dfrac{1}{6}+\dfrac{1}{6}=\dfrac{1}{2}
\end{displaymath}

等です.

$U$の部分集合,つまり$\mathcal{B}$の要素が事象なのですね.

南海  サイコロに細工がしてあって,1の目が出る確率が$\dfrac{1}{2}$で他の目が出る確率が各々$\dfrac{1}{10}$ ということもあり得る.この場合は標本空間は同じだが確率が違う.この場合の確率を$q$とすると

\begin{displaymath}
q(\{1,\ 3,\ 5\})=q(\{1\})+q(\{3\})+q(\{5\})=\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{10}+\dfrac{1}{10}=\dfrac{7}{10}
\end{displaymath}

となる.

史織  $(U,\ p)$となるか$(U,\ q)$となるかは現実の問題. 入試問題などでは問題文の中で与えられることなのですね.

南海  $p(\{1\})$などは$p(1)$と書いてもまちがいは起こらない.このように, 以下では,根元事象の確率$p(\{x\})$等を集合の記号をはずして$p(x)$のように書く. あくまで略号であることを忘れないでほしい.



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