南海 いいところに気づいた. 不変式の観点から対称式を考えよう. 対称式とはどんなものであったか.
耕介
2変数の場合は
のように,
と を入れ替えても式が同一になるものです.
この場合をとの
対称式という.とくに
2変数の基本対称式は,2次方程式の解と係数の関係に現れます.
つまり,
2次方程式 の解を
とするとき,
3変数の場合は, の整式で
をどのように入れ替えても式がかわらないものを対称式という.
3変数の基本対称式は,
南海 さて,一般に個の文字変数の対称式を定義しよう.
の 単項式で各文字に関する次数の和をその単項式の次数という. 単項式の次数の最大値を,その整式の次数という.
が の対称式であるとは 文字変数 のどのような置きかえに対しても, 整式が不変であることをいう. 文字の置きかえはいくつあるか.
耕介 の並べ替えだけあります. つまり個です.
南海 これらの置きかえも,の要素で表せる.
のとき,
耕介
変数でも,変数の置換は 各行各列の一カ所ずつのみが1で後は0の次行列で表せる. それが個ある.
南海 つまり,個の文字の置きかえは, 要素の個数が個のの部分群になる. 普通これを等と表し,次対称群という.
耕介 そうか. 対称式とは対称群に関する不変式なのですね.
南海 この証明は,次方程式には個の根が存在するという, 代数学の基本定理を用いた. 基本定理を用いないで,計算だけで示すこともできる. また考えてみておいてほしい.
この定理の系として,次のことが示される. なお, 系というのは, 定理からただちに本質的な証明を経ずに得られる結果をいう.
証明
定理2によって, は の次式で表され, は係数 の次の整式である.
が係数 の整式として と因数分解されたとする. ところが,もも の整式ということは, の対称式ということである. をの整式と見ればにを代入すれば0になるので, このとき,かのいずれかが0である. とすればは を因数にもち, はもたない. とすれば は を因数にもつ.
対称性から第一の場合は,が と因数をすべてもちが定数である. つまりはのべきであるが, これはがを因数にもつことを示している. ところがは の定数倍で, これは の次式であるから, は の整式としてを因数にもつことはあり得ない.
第二の場合はがともに を因数にもつが,これはの対称式ではない. □
を2変数 に関する実数を係数にもつ多項式とする. とおく. このとき, 以下の問いに答えよ.