証明
,を次,次の原始多項式とする.
任意の素数をとる.で割り切れない係数をもつ最低次の項を とする.
積
における次の項の係数は
ここで中央のはで割れないが, 他のすべてのはの倍数になる.つまりこの係数はで割り切れない.
任意の素数について,で割りきれない係数の項が存在するので, 積 の係数の最大公約数は1である.つまり積は原始多項式である.□
次の定理の証明のために一つ補題を示そう.
この補題は,整数
の最大公約数が1なら,
この証明は『初等整数論』「一次不定方程式」「一次不定方程式の解の存在」定理5を見てほしい.
証明
二式
は同次なので
で
は互いに素なので
南海 そこで本題.
証明
の係数の最大公約数をとする.は整数である. とおく.は原始多項式である.
に係数の分母の最小公倍数をかけ,それから係数の最大公約数でくくると原始多項式が得られる.それをとし, とおく.は有理数である.
同様に
(は有理数,は原始多項式)とする.
ガウスの定理(4)より は原始多項式なので,補題1より となりは整数である.ゆえには2つの整数係数の多項式 ,に因数分解された.□
南海 ここまで来ると,例題の(2)を一般化することができる.
証明
この多項式をとする.が因数分解されたとする.それを とし, その次数をとする.
ガウスの定理の証明と同様に素数に対し, の で割り切れない係数をもつ最低次の項を とする.
積
における次の項の係数は
ゆえにの定数項はで割り切れ,条件と矛盾し,対偶が示せた.□
南海 以上の一般論が例題の別解になっていることがわかっただろうか.
耕一 もういちどまとめます. が有理数を用いて と因数分解されるとき, を とすれば と因数分解される.この が直ちに整数係数とはいえないが,さきにいわれましたように,今の場合の係数は互いに素 なので,ここからくくって全体にかける整数はないので,自身が整数係数である. すると同じ記号を用いてよりとなりは整数である.
例題の最後の問題は,対偶を示すことは同じで, 有理数解があれば整数解でが整数の因数をもつが,アイゼンシュタインの既約性定理から は既約なので,それはあり得ない.
南海 ということだ. のところは,次のようにしても良い.の係数の 分母の最小公倍数と,分子の最小公倍数を括りだし, と表したとする. ここでは原始多項式である.も原始多項式で,も原始多項式なので,ガウスの定理と 補題から .これでも良い.